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KEK 一般公開開催されました

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先週の日曜日(9月4日)KEK で一般公開が開催されました。今年は一般公開委員の板倉さんが大活躍で、理論の展示スペースとして小林ホール前を確保したり、キーホルダー作成クイズをやったりしたおかげで、理論の展示にもたくさんの方が来てくれました。

理論の研究紹介のパネルも一新しました。「超弦理論」のパネルも苦労して作りました。ファイルサイズがかなり大きいですので通信環境がいいところで見ていただけたら幸いです。

パネルのpdfファイル
1枚目(1.9MB) 2枚目(449KB) 3枚目(792KB)

1枚10分、30分でわかると書いてありますが、本当のことを言うと、30分で本当に心の底から理解できるわけではありません。それはそうですよね!大学院で半年かけて、分厚い教科書を授業してやっとわかる内容を、何も知らない方が30分でできるわけないです!

でも伝えたかったことは、「超弦理論には何かすごいことがある、奇跡的なことがある」ということです。そして、それで興味をもっていただけたなら、実際に自分で調べていただければいいと思って作りました。

 

理論センタープロジェクト入門連続講義「AGT対応入門」開催されました

5月の連休明けに引き続き、理論センタープロジェクトイベント第2弾として、7月の25、26、27日の3日間にわたりKEK の柴正太郎さんに「AGT対応入門」と題して入門連続講義をやっていただきました。プロジェクトのページ にも書きましたが、今回もたくさんの方々に集まっていただきありがとうございました。

柴さんのレクチャーもとてもわかりやすかったです。知りたいと思っていたことが一気にすべてわかってしまう、こういう集中講義形式は大変いいですね。しかも、柴さんは KEK の方なので、謝金をお支払いすることもできずに大変心苦しかったですが、おかげで研究費をほとんど使わずにすみました(たばこが煙ーい居酒屋には行きましたけど)。

さて、これが超弦現象論にどう役立つのか、ということですが、僕個人的には、この N=2 理論からフレーバを直接だすのではなくて、(カラビヤウなどの)背景幾何学をモジュライ空間に反映する「プローブブレーン」上の理論としての役割に期待しています。その際、鍵となるのはやはり SU(2) SW カーブと有理楕円局面との同等性です。さらに、プローブブレーンが singularity に近づいたとき理論は conformal になるとされていますが、一方、F理論では singularity が enhance するところに matter 、すなわちフレーバが存在します。最近までこの世は別にコンフォーマルじゃないし、とか思っていましたが、こういうわけで最近は強く関心をもつようになってきました。

 

D-ブレーン「だけ」ではフレーバー構造を実現できない3つの理由(その2)

現実の素粒子のフレーバー構造を実現するのにD-ブレーン模型がもつ根本的な問題点は、GUT(大統一理論)が基本的に実現できない、という点です。GUT  なんて実験できるエネルギーにあるわけでもないし、標準模型さえできればいいと言う人もいるかもしれませんが、そうではありません。GUT 、特に SU(5) GUT はクォーク・レプトンの(標準模型を最初に勉強したときに、何だこれは、と思う人もきっといる)半端な分数ハイパーチャージを見事に説明しているからです。(その詳しい説明は、以前 素粒子のジグソーパズル=大統一理論?! という記事に書きましたのでそちらもご覧ください。)

ですから、現実物理の起源を超弦理論にもとめるなら SU(5) GUT  はなくてはならないものですが、D-ブレーン模型はD-ブレーンを3枚、2枚、1枚ともってきて交差させてつくるので、ハイパーチャージは SU(5) の外にあるものだし、大統一する必然性がありません。その点、(E8xE8)ヘテロティック/F、あるいはそれらと「双対な」M理論では E8 ⊃SU(5) がはじめからあってそれをこわして標準模型をつくるので、 SU(5) GUT  は自然にでてきます。これが、フレーバー構造を実現するにあたってD-ブレーン模型がもつ最大の困難の1つです。

しかし、D-ブレーンだって5枚集まれば U(5) ゲージ対称性は自然に出てくるし、それでもいいじゃないか、と言う人もいるかもしれません。ところがそれでもダメなのです。それは、現実の素粒子の1世代が SU(5) の 10 と 5バーと 1 の計16個になっている、という事実に関係していて、D-ブレーン模型ではそれを説明できないのです。これが2つ目の理由なのですが、次回この点について説明したいと思います。