D-ブレーン「だけ」ではフレーバー構造を実現できない3つの理由(その3)

去年も年末になってバタバタと更新したような気がしますが、今年もやっと更新します。前回は、D-ブレーン模型ではGUTにならないことを説明しました。(Pati-Salamならできる、という人がたまにいますが(例えば北大の小林さん)あれは「ゲージ統一」ではありません。これについては後で言いたいと思います。)

さて、D-ブレーンだけでは自然なスタンダードモデル セクターを作れない2つめの理由は、「スピナー表現」が実現できないからです。D-ブレーン上のマターは一方の端点だけが端をもつオープンストリングによって実現され、そこにはU(N)のNまたはNバー表現のチャン・ペイトン因子がアサインされるので、バイファンダメンタル表現しかできないからです。素粒子模型にスピナー表現が必要な理由はもちろん、各1世代ごとにSU(5)の5バーと10表現と右巻きニュートリノの1表現をあわせてSO(10)のスピナー表現になるからです。

この事実は超重要であって、これで標準模型になぜアノマリーがないかを自動的に説明することはよく知られています。また、U(1)B-Lになぜアノマリーがないかも一緒に説明できてしまいます。SO型のゲージ群はオリエンティフォルド(ストリングジャンクションの文献にでてくるB-とC-ブレーンが1枚ずつ)があればできますが、スピナー表現はそれだけではできず、もう一つC-ブレーンが必要になります。ここが、D-ブレーン模型に別れを告げる「岐路」です。

さて、D-ブレーンだけではダメな3つ目の理由は、U(1)対称性のためにアップタイプの湯川を生成できないことなのですが、これについては長くなるので次回にします。