超低速ミュオンとは

超低速ミュオンへの歩み

STEP1 真空中における熱ミュオニウム(Mu;μ+e-)の発生
超低速ミュオンは1985年「真空中における熱ミュオニウムの発生(Mills、今里、松下、村田、永嶺等)」からスタートしました。この実験はKEK中間子第1実験室で得られる4 MeVの低速(表面)ミュオンを高温に熱したタングステンに打ち込み、世界で初めて熱Muを真空中に生成することに成功した記念すべき実験でした。タングステンは水素のsolution entalpyが高く、高融点なので高温に熱する事が可能である為、選択されました。
真空中における熱ミュオニウム
この実験装置を用いると、熱エネルギーのMu原子が標的から蒸発し、超高真空中に漂い出てくる様子が空間位置分解能に優れた検出器により実験的に観測できます。
STEP2 熱ミュオニウム(Mu;μ+e-)の1s-2s励起解離実験(QED検証の為の精密実験)
1987年にChu、 Mills、 久我、 Yodh、 三宅、 永嶺等によって熱Muのレーザー3光子解離の実験が行われました。この実験はQEDの精密な検証実験であったと同時に、熱Muを波長244 nmのレーザー光で3光子解離させて、低速(表面)ミュオンビームから世界で初めて超低速ミュオンを作り出す事に成功した実験でした。真空中のMuに244 nmのレーザー光を双方向から照射することでドップラーフリー条件を維持しながらMuを2s状態に励起します。更にもう1つの光子を吸収させてミュオンと電子に解離させ、5 kVに加速してMCPで観測しました。
熱ミュオニウム
244 nmの3光子によってイオン化された超低速ミュオンは静電オプティクスにより輸送されて、MCPによって検出されます。入射した低速(表面)ミュオンをスタート信号、MCPによる信号をストップ信号にとったTOF時間スペクトルから粒子質量の弁別が可能となります。
STEP3 超低速ミュオンプロジェクト@KEK
1991年、超低速ミュオンプロジェクトの為に、高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構)ブースター中間子第一実験室に隣接して、中間子第二実験棟を建設しました。このプロジェクトでは陽子ビームラインに直接標的を設置しました。BN標的でパイオン(π)を発生・減速、πμ崩壊、高温のミュオニウム生成標的(W)でのミュオンの表面への拡散、標的表面からのMuの真空中への蒸発、パルスレーザーによるMuのイオン化までの過程が全て陽子ビームライン上で行われました。2次ビームを作ることによって生じる立体角の損失、輸送に伴う損失を考慮すること無く、効率良く超低速ミュオンを引き出すことが出来ました。また、2000℃に昇温したWを用いることで500 MeV陽子ビームによる照射損傷を免れることが出来ました。
超低速ミュオンプロジェクト@KEK
Mu解離用のレーザーシステムはブースターの運転スケジュールに同期して20 Hz、10日間の連続運転を行えることが条件でした。そのためメンテナンスに手間が掛かる色素レーザー、Eximerレーザーに替わるOPOレーザー、TiSレーザーからなるパルスVUVレーザー源を開発しました。
STEP4 超低速ミュオンプロジェクト@理研RAL
現在作成中です。
STEP5 J-PARCに於ける大強度超低速ミュオン源
現在作成中です。