本領域は、超低速正ミュオンとマイクロビームの2つの画期的なパルス量子ビームからなる「超低速ミュオン顕微鏡」によるイメージング法を確立し、表面・界面が関わる多様な物理・化学・生命現象の発現機構を理解し、革新的な発展を目指します。
超低速ミュオンは深さ方向にnm分解能の局所性と走査性を持ち、表面から内部に至る電子状態とそのダイナミクスの実空間イメージングを可能にするものです。 物質の表面・界面は、バルクと対称性が異なり、特有の性質を持つ擬低次元の新物質相を形成します。表面・界面の電子状態は、化学反応、触媒、スピントロニクス材料のスピン発生・伝達、異方的超伝導体の境界効果、ソフトマター表面のガラス転移など、広い研究領域で基礎と応用の両面から重要です。一方、表面は物質の電子状態、特にその秩序状態を実空間で観測する窓でもあり、表面からバルクに至る電子状態の統一的な理解は物性理解にとって極めて重要です。 超低速ミュオンは埋もれた界面の構造と機能、界面が作る新奇物性や触媒・化学反応の研究に道を拓きます。
マイクロビームは超低速ミュオンを加速収束した高密度ビームで、深部に構造のある実用材料や生体物質の3次元イメージングや極微試料の研究を展開するとともに、素粒子精密測定のためのさらなる高度化を進めます。
このため、以下の研究項目について、「計画研究」により重点的に研究を推進するとともに、関連する2年間の研究を公募します。1年間の研究は公募の対象としません。研究分担者を置くことはできません。 公募研究の採択目安件数は、単年度当たり(1年間)の応募額400万円を上限とする実験系研究を9件程度と、応募額100万円を上限とする理論系研究を9件程度予定しています。特に、(1)この新手法により研究可能となる創造的な実験、(2)超低速ミュオンの挙動等、実験の指導原理と解釈に関する理論、(3)本顕微鏡の基幹技術に関する実験及び理論の提案に期待しております。ミュオン実験の経験は問いません。 超低速ミュオンは平成25年度からの運用を予定していたところ、平成25年5月に発生したハドロン施設における事故の影響で加速器が停止しています。超低速ミュオン顕微鏡本体はほぼ完成し、再開後速やかに実験を開始します。マイクロビームは平成27年度からの運用を予定しています。既存のミュオン施設や相補的な研究手段による予備実験の提案も公募対象とします。
研究項目
A01 超低速ミュオン顕微鏡創成と極微μSR
A02 界面のスピン伝導と反応
A03 表面 バルク境界領域のヘテロ電子相関
A04 物質創成の原理を極める超冷却と尖鋭化
研究計画班を選ぶ上でのご参考までに、各班の想定される研究テーマの例を示します。ここにないテーマも歓迎します。
A01項目 超低速ミュオンビーム系のビームモニタ、同ビーム系を分岐するためのビームキッカー、超低速μSR分光器の最適化、超低速ミュオンビームの再加速など。
A02項目 半導体・光触媒・スピントロニクス材料・電池材料・高分子材料・生体試料などの試料製作とその特性評価、これらに関わるμSR法の理論。
A03項目 超低速μSR実験用薄膜試料の製作と表面のその場観察、遷移金属酸化物の表面近傍・界面に特有の磁性・超伝導、表面・界面からバルクへ連なる電子状態に関する理論、など。
A04項目 超冷ミュオニウム生成の新手法。レーザー開発、ビーム尖鋭化の実験と理論。
(平成24年度公募研究 平均配分額 3,256千円 最高配分額 4,000千円)
平成26年度科研費新学術領域研究の公募(文部科学省)
公募要領・計画調書のダウンロードページ
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2. 公募の内容:
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別表2: P15
3. 応募される方へ
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別表4(重複制限):P25-26
別表6 研究概要:P53
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計画研究調書 様式S-1-21
作成・記入要領
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