ポルチンスキーの教科書が書かれた後になってわかった、超弦理論の重要事実 その1(の予定)

今年2021年の 数理科学1月号 に「超弦と時空  ~ ポルチンスキーの教科書が書かれた後になってわかった,素粒子の謎を解明する超弦の幾何学 ~」という記事を書きました。ポルチンスキーさんは D-ブレインの「発見者」であり、教科書が書かれたのはその数年後で、超弦の基本的なワールドシートCFTによる構成から、その枠組みでは非摂動論的なオブジェクトとして存在する「D-ブレイン」が果たす超弦理論での(その頃までにわかっていた)重要な役割について、懇切丁寧に書かれています。20年以上前までの超弦に関する知見なら、これを読めば非常に深く理解することができます。

しかし、これは間違いなくすばらしい教科書なのですが、いかんせん古いです。特に我が国だと、へテロティックのアノマリー相殺が証明されたころが 1st revolution (の時代)、D-ブレインが発見されたのが 2nd revolution (の時代)などと言って、それ以降バージョンアップがないかのように考えられることもありますが、実はそうではありません。その後も、超弦理論には重要な発展があったのです。

ポルチンスキー、あるいはグリーン・シュワルツ・ウィッテンそれぞれ2巻ずつに書いてあることだけでも膨大なので、これを読破するともう現代の超弦のすべてをわかったような気になってしまい(?)ます。しかし、それでは20年前の研究しか始められません。ポルチンスキーが書かれた後のさらに20年間に何がわかったのかーそれをまとめてある(特に日本語の)文献はなかなかありません。

数理科学の記事に書いたこともその一つなのですが、これからここでは、この20年間にわかった、今では常識となっている超弦の重要事実を、こちらも当時はなかった LHC や PLANCK による実験観測事実とも関連させながら、少しずつお話ししていきたいと思います。

と書いただけでこんなに長くなってしまいました。時間ができたときに続きを書きたいと思います。