粒子加速器に関する科学実験

以下の多くの内容は、SPring-8 の電子蓄積リングでの一般公開において、SPring-8のスタッフとともに製作し、実施したものです。

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ローレンツ力による加速


ローレンツ力による銀紙飛行機の発射台


アルミホイルで折られた銀紙飛行機を磁石がつくる磁場中に置いて、 翼の両端の間に電流を流すことにより電流に電磁力が働き、銀紙飛行機を発射します。

磁場は動いている荷電粒子を曲げることができます。 電流は電子の流れであり電子は速度をもつので、磁場は電子の方向を曲げようとします。しかし、電子は導体(ここでは飛行機)から外には出てこれないので力は飛行機に働き、飛行機は飛び出します。

この動く荷電粒子に働く力をローレンツ力と呼びます。
加速器では、磁石が作る荷電粒子を曲げる力で粒子を軌道を描かせており、たとえばJ-PARCや SuperKEKB、SPring-8 では、円形の軌道を作り荷電粒子を周回させます。
ローレンツ力は荷電粒子の動く向きを変えることはできますが、その力の向きは進行方向に常に直角となるので 荷電粒子を押したり引いたりすることはできないので、荷電粒子にエネルギーを与えたり、奪ったりすることはできません。


下の図は、有名なフレミングの左手の法則です。 電流と磁場と、電流に働く力の方向を表しています。


SPring-8 の電子蓄積リングでの一般公開において展示した発射台です。

電源が抵抗(緑色の棒)を通して2本のレールに繋げられています。
レールは磁石の磁極の間に置かれて、磁場に浸されています。


では、試験飛行を行います。でも飛び出したらすぐに右ターンして落っこちてしまいました。 一般公開に来場してくれた子どもたちが折った飛行機は左に見える壁まで飛んだのもありました。




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J-PARC ( 高エネルギー加速器研究機構) の 2023年の一般公開で試験飛行を実施。

飛んだ!

2024 年の一般公開 (秋頃) にも展示予定。

アルミホイル飛行機を飛ばしに来てください。

飛行機はその場で折れます。


この展示は KEK J-PARC のスタッフが製作しました



次は、ローレンツ力を用いて列車の車輪を転がします。

2つの車輪の間に電圧をかけていて、車輪をつなぐ軸に電流を流しています。
これも SPring-8 電子蓄積リングの一般公開で展示したものです


レールに電圧をかけて車軸に電流を流し、永久磁石と電磁石により磁場を作っています


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空洞に電磁場を蓄積して協力な加速電場を作り出す

水の波で電波を模擬して、電波が加速空洞に蓄積される様子を表しています。加速器の多くは、高周波の電波を空洞内部に溜め込む事により波を大きくさせ、 それに伴う電場により加速しています。これも SPring-8 の電子蓄積リングの一般公開で展示したものです

波を空洞に蓄積していく


電波の周波数が、空洞内部の波の周波数 (振動の速さ)に一致すると、空洞に電波が蓄積され波が大きくなる。すなわち強く加速できる。

波を蓄積し、そしてその波に電子を乗っけながら電子とともに進ませる

空洞に電波を蓄積し波を強くしています。先程と異なるのは空洞が連結しており、そこを波のエネルギーは 蓄積されるとともに進んでいきます。このときに発生する波の速度と電子の速度をうまく一致させると、 電子は波乗りように加速されます。 (でもここでは少し上手く波ができていないかな。この模型、各空洞の周波数の調整(寸法の調整)が微妙なもので)


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シンクロトロン放射光などの高速の電子が発生する電磁波を水の波で模擬

以下もSPring-8 電子蓄積リングの一般公開での展示したものです
電磁波は、波なので、水の波と同様に波の特性をもつので、水の波で模擬することができる場合があります。 以下ではシンクロトロン放射光、チェレンコフ放射光、そして制動放射が高速の電子により生成される メカニズムについて水の波で模擬しています。
この模型での電子は、おもちゃの電車から水面に垂らされている棒です。

この棒は、表面張力で水面を盛り上がらせます。 この水の盛り上がりを電場や磁場と思ってください。

棒が停止しているときには外に向かう水の波はできません。いわゆるクーロン場(電場)が作られている状況です。

棒を動かして、水面の波の速度と棒の速度をほぼ一致させると、 棒の周りの水の盛り上がりが薄っぺらくなりますが、しかし、そこから剥がれて外へ伝わっていく波は作られません (水を盛り上がらせる表面聴力の伝わり方に棒が追いついて平べったくなっています )。 このとき、剥がれていく波がない、というのは、 電子が作り出そうという波、すなわち電磁波(光や電波、X線など)が放出されないことを表しています。

ところで、棒と水面の波の速度が一致しているということは、電子と光の波の速度がほぼ同じ ということに相当するのですが、電子は光の速度を越えることはありません(アインシュタインの 相対性理論)ので、 電子は直線運動をしているときには決して電磁場を放出しません。

(でも、光の速さを超えて飛べる宇宙船、だれか作ってくれないかなぁ)

そこで、棒が曲がっていくところを作ります。 棒が曲がっていく時、棒から少し離れたところの水の盛り上がりは、 棒が曲がってしまったことに気がつかずにまっすぐに進もうとして棒から離れていき波として現れます。 また、棒は電磁場を作りながら進むので、これが連続的に繰り返され、円弧のような波を作ります。 これがシンクロトロン放射光とよばれる電磁波に相当します。

すなわち、電子が曲げられると電子の周辺にいた電磁場が、電子が曲がったことに気が付かずにまっすぐに進んで剥がれて放出され 電磁場となって伝わっていく、という状況でつくられるのがシンクロトロン放射光です。

さて、棒の速度が水の波の速度に近づくと、棒の周りの盛り上がりが進行方向に薄っぺらくなっていきますが、 この薄っぺらさは、電子でも生じていて電子を光の速度に近づければ近づけるほど、どんどん薄っぺらくなります (ローレンツ短縮とよばれる相対性理論的な効果)。

一方、利用者が必要としている電磁波であるX線の波長は 100億分の1メートル程度なので、 そこまで薄っぺらくしようとすると、電子をとてつもなく光の速度に近づけなくてはなりません。 そのためには大変なエネルギーまで電子を加速する必要があります。
シンクロトロン放射光の発生施設はそのために大変に大きな加速器となります。 特に短い波長のX線を生成している SPring-8 は放射光発生用のリング加速器としては世界最大となっています。

ところで、以降の図や動画で、波が棒より先にできているように見えていますが、 これは、上からの照明がすこし斜めからになっているため、 水面の波が水底に作る陰影が棒より少し前になってしまっているからです。

シンクロトロン放射




チェレンコフ光、制動放射


ここでは、水の波を利用して電子がシンクロトロン放射以外の電磁場を放出する機構を模擬します。


チェレンコフ光


下の動画の 0:47 - 1:04 で模擬しているのが、チェレンコフ光です。
このとき、棒 = 電子は波より早く進んでおり、いわゆる"衝撃波"を発生しています。
自由な空間、すなわち周りに物質が無いところでは電子は決して光より早くなることはできないのですが、 物質の中では光の速度が遅くなるため、電子が光より早く進むことができます。 このようなときに発生するのがチェレンコフ光です。
このような"衝撃波"と呼ばれる波は、音波としては超音速飛行機が空気の波 = 音波より早く飛ぶときに発生する ソニックブームとよばれるドカーンとした音(聞いたことはないけど)などがあります。 水の波は遅いので船などはしょっちゅう発生させています。

制動放射


下の動画の 1:45 - 1:49 および 2:07 - 2:09 の間で模擬しているのが制動放射です。棒 = 電子は、突然に停止してしまっているので、 シンクロトロン放射のときと同様に周辺の盛り上がりが電子が止まっているのに気が付かずに直進を続け、電子から離れて波となってしまっています。 写真ではかなり ほのか な波と見えており、大変見にくいのですが、動画ではある程度、見つけることができます。