Photon Factory: BL-4C & 3A 実験マニュアル

Staff: H. Nakao (PHS:4868)

注意事項

 BL-3A,4Cともに、シリコンドリフト型X線検出器が新しいものに置き換わりました。
光軸方向の厚みが短く、設置しやすくなってますが、 受光面のBe窓が近く、この窓を手で触って破ってしまう可能性が高い ようです。そこで、使用時以外は写真のように、 ピンクのカバーを必ず装着 してください。

なお、カバーを取った時の見た目はこんな感じです。

また、電源ボックスの使い方も、注意が必要です。

通常は電源入れっぱなしかとは思いますが、 電源を入れるときには、まず「POWER」スイッチを入れます。 少し時間を待つと右側のPOW,TECのボタンのランプが付きます。 続いて、赤い出っ張ったボタンを優しく押すと 写真のようにHIGH-VOLTAGEにランプが点灯します。 (このボタン壊れやすいらしいので)
 電源を切る時は逆の手順、赤い出っ張ったボタンを押して、 HIGH-VOLTAGEを落としたのち、「POWER」スイッチで主電源を落としてください。 なお、信号解析の部分は、以前と同じものですので、 これまで通り使えます。(もちろん、設定ファイルは新しくなってますが) 現在は、快調に動作してますので、優しく扱ってあげてください。

 

 PF全体での遠隔操作(Nomachine)や NextCloudの導入のため、仮想PC(VirtualBox)を利用することになりました。

まず、本体(Surface)を立ち上げるor再起動すると、
が表示されます。
いつものパスワードを入力してください。 (NextCloudサーバーに、自身の実験結果を随時更新するために必要です)

実験に使う仮想PCは、以下のように自動的に立ち上がります。

また、頻繁に以下のウインドウが出てきますが、

必ず、[キャンセル]してください。[適用]して、一部ソフトが動作しなくなったことがあります。

後は、以前と同様に使えます。

○実験の準備

・試料・化学薬品等持ち込み・使用届

 ビームライン使用状況掲示板に掲示する。
 緊急時連絡先情報をこちらより入力する。

・PCにログインします。

 ユーザIDが未登録やパスワードを忘れた場合には担当者までご連絡下さい。

・端末を開きます。

 左下のメニューの中の [システムツール-QTerminal] で開く。

・ 実験用のディレクトリを作成し、そのディレクトリに移動します。

 $ mkdir 171001
 $ cd 171001

・fourcを起動します。

実験開始時のfourcの起動は、特段の理由がない限り
 $ fourc -f
としてください。("-f"オプションは、強制初期化です。また、「fourc」と「-f」の間には「スペース」を入れてください。)
ユーザーが新しい機器を接続したりすると、SPEC側の設定が変わるため、 以前使われていた状況との不一致が出て、不具合が出ます。
ログファイルを作る場合の起動方法は
 $ fourc -f -l 230510.log
   注意:l(エル)は、1(いち)や|(パイプ)ではありません。

なお、実験時に、再度 fourcを立ち上げる場合には、
 $ fourc

として"-f"オプションなしで立ち上げると、 そこまでの設定が保たれた状態に復帰できます。

・データファイルを作成します。

 FOURC> newfile 141001.dat

データファイルに限らず、SPECには様々な初期設定があります。 もし、初めて使う場合には、何を設定できるのかを知る意味で、 以下のコマンドを実行することをお勧めします。

 FOURC> startup

基本的にわからない設定は、デフォルト値で良いので、単にEnterを押してください。

○モノクロ調整

・使いたいエネルギーに変更します。

例) エネルギーを8 keVに移動します。
 FOURC> moveE 8

モノクロメータの動作が止まったらエネルギーを確認します
getEで現在のエネルギーが確認できます
 FOURC> getE

( BL-3Aでは、挿入光源のGapも同時に制御する必要があります。)

モノクロ・架台調整の時にはSDD検出器にダイレクト光が入らないように、 検出器を取り外し、周辺にあるΣステージに、しっかりと固定してください。 精密機器ですので取扱いにはご注意ください。

・スリットを全開にします。

 FOURC> nslit1 10 10; nslit2 10 10; nslit3 10 10
これで上流、下流とも縦横10mmに開きます

アテネータが入っていないかも確認。

 FOURC> atten 0

・th, tthが0, chiが90(もしくは-90)になっていることを確認してください。

 FOURC> wh   (現在の角度の確認)

ずれている場合には、それぞれ所定の値まで持っていってください。 モータを動かす時にはケーブルが巻き込まないように注意して下さい。

例えば、以下の位置で確認ください。
 FOURC> umv th 0
 FOURC> umv tth 0
 FOURC> umv chi 90

* chi=0の時に、phiとtth, thの 回転軸、回転方向が一致している必要があります。
違う場合には、configコマンドで "Sign of user"の符号を反転してください。
注1: 回折計のメモリでもゼロ点を目視で確認すると間違いない。 (つまり、whでゼロと表示されても、実際は0になっていないこともあるので)
注2: 各軸の位置が、思っている角度と違う場合には、setコマンドで変える。
注3: リミットの設定で0°に動かせない。 マニュアル(Moter setting)参照のこと。

・SDD検出器は大変デリケートです。取り扱いには十分注意してください。

特に、シャッターを開けるときには SDDにダイレクトビームが入らないよう注意してください!

架台調整などでtth=0の状態でX線を入れるときには、検出器を取り外し、 周辺にあるΣステージに、しっかりと固定してください。(落ちたら、大変です)

・Shutterを開けてイオンチェンバーIC0(pa0)に X線が来ていることを確認してください。

 FOURC> ct
   (pa0で10-7~10-8台の信号が来ます。(値はビームライン、エネルギーに依存します。)
   また、イオンチャンバーの値が変な時は、以下のautorangeコマンドで復帰します。

・モノクロの微調整を行います。

 FOURC> autorange0 1 (IC0のゲインを自動に設定)

 FOURC> plotselect pa0
 FOURC> DET=pa0
 (描画するデータをpa0に、測定データをpa0に設定という意味。)

 FOURC> chk_thresh = -1
 FOURC> dscan DTH -0.02 0.02 30 0.1
        :
 FOURC> umv DTH CEN

 [BL-4Cの場合、調整の最後に、umvr DTH -0.001 を入れること。  (分光器が古いので、駆動後に位置が長時間かけてズレていくため、最適値とするための『おまじない』。)]

* 標準でSDD検出器を使用する方はデチューンの必要はほとんどありません。 シンチレーションカウンターなどSDD以外の検出器を使用される方は デチューンをしてください。

○架台調整

下流のイオンチェンバーIC1(pa1 [i1])にX線が入っていることを確認し、 plotselectでpa1をプロットするように変更します。
 FOURC> autorange1 1

 FOURC> plotselect pa1
 FOURC> DET=pa1

架台調整用板、ピンホールを回折計に取り付けます。 (BL-4C:下流、戸棚の中に保管。BL-3A:ハッチ内上流の棚の中に保管。)
まずは、ピンホールを1つだけ入れて、z, y軸方向を調整します。 (ビームがIC1に入るちょうど良いピンホールサイズを選択する。 特に、何もなければ 0.5mmφでも通るが...)
それぞれスキャンをして半値幅の中心に移動させます。
( BL-3Aでは、架台調整コマンドが違います。)

 FOURC> scan_st z -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st z CEN

 FOURC> scan_st y -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st y CEN
*0.5mmφのピンホールで、y,zスキャンした後、必ず FWHMの値をログノートに記帳してください。
( BL-3Aでは、調整に利用するピンホールのサイズが違います。)

その後 ダブルピンホールで、z, y, rz, ryを調整します。 zとry、yとrzは、リンクしてます。大きくビーム位置を外している場合には リンクした軸を交互に収束するまでスキャンする方が、 最適値への収束が早いです。

 FOURC> scan_st ry -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st ry CEN
 FOURC> scan_st z -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st z CEN

 FOURC> scan_st rz -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st rz CEN
 FOURC> scan_st y -2 2 30 0.1
        :
 FOURC> mvr_st y CEN

( BL-3Aでは、架台調整コマンドが違います。)

最終的には、0.5mmφのダブルピンホールで調整を行ってください。 ( BL-3Aでは、調整に利用するピンホールのサイズが違います。)

○スリット調整

・スリット調整は自動化されています。

架台調整後なので、通常は、pa1に信号が入っている状態。
 FOURC> plotselect pa1; DET=pa1
こちらも、設定変更していないはず。 この状態で下記のコマンドを入力すると、現在のpa1の強度の半分となるべき スリットの歯の位置を自動的に決めてくれます。 ただし、ビームが切れている状態から調整を開始すると、当然ですが 正しい位置は決められません。 調整には30分ほどかかります。

 FOURC> slit1; slit2
   注意: イオンチェンバーIC1(pa1)より下流にスリットがあっても調整は出来ません。 逆に、スリット3をIC1より上流側に設置すればスリット調整が可能です。(slit3)

スリット調整が終わったら架台調整用板をはずします。

ビームを出して、slit1を実験に使うサイズに設定する。(例えば、[nslit1 1 1])
実験ノートに、モニター(mon(I0)/pa0)の値を記帳する。
最後に、
 FOURC> autorange0 0 (イオンチェンバのゲインを自動を外す)
実験時は、monのカウントを規格化に用いるので、このゲイン設定は忘れずに。

○検出器の調整

BL-4C,3Aではシリコンドリフト型X線検出器(以下、SDD)を使用します。 他のX線検出器を使用したい方は、担当者までご連絡ください。
SDDは、NaIのシンチレーションカウンターに比べエネルギー分解能が高く、 高調波や蛍光を除去し、回折光のみを高精度で検出することが可能になっています。

・調整の準備

たとえば"umv tth 30"として検出器に 空気散乱のX線強度が入るようにしてください。
plotselectでX線検出器(det)をプロットするように変更します。
 FOURC> plotselect det
 FOURC> DET=det

・X線検出器:SDDの使い方

SDDの使い方の詳細はこちら
検出器の設定はwindows PC内の"dsp_mca"というソフトウェアを使用します。
ツールバーの"start"を押すと計測が開始します。
信号が入っていれば、ペクトルが測定されると思います。
"stop"を押すと計測が停止します。

空気散乱の場合には利用しているエネルギーのX線が観測されます。 (なお、横軸のエネルギーは、前に設定した方の精度に依存します。 分からないときは、X線のエネルギーを変えてみてください。 本物のλは、入射X線のエネルギーに対応して変化しますが、 偽物の蛍光X線は変わりません。)
次に、縦の点線をマウスで動かし測定するエネルギー領域のX線を設定します。 最初に、ROI設定のために"histgram"タブを選択します。 続いて、スペクトルの右下にある十字のボタンを選択すると、 切り取るエネルギーを指定する縦点線が動かせるようになります。 選択したらツールバーの"config"を押して設定を保存します。 これで線で挟まれた領域の信号がtsujiカウンターに入力され計数されます。

* スペクトルが表示されないときには、グラフ上で右クリックをして 自動スケールXにチェック入れてみて下さい。

(参考)

・SDD検出器の接続方法 

SDDに電力ユニットからの電力ケーブルが、信号出力端子には信号用の BNCケーブルが接続してください。 信号ケーブルはBNC-LEMO変換コネクタを使ってDSPのCH1に、 DSPのMONIからの信号はオシロスコープに、 AUX1の出力はTsujiカウンターのDETに接続して下さい。 SDDの電力ユニットとDSPの電源を入れます。

・制御ソフトの設定

制御用PCの右にあるWindows PC上で、DSPの制御ソフト"dsp-mca"を起動します。 ツールバーの"File"から"open config"を選択し、 DSPの設定ファイル("0.5us_SDD.ini")を開きます。 ツールバー上の"config"ボタンを押します。

○ 回転中心出し・サンプルマウント

・ピンを立てて回折計の回転中心を見つけます。

 

 

○ さあ、楽しい回折・散乱実験をしましょう

 各種コマンドは、こちら

 

○ 実験が終わったら

fourcから抜けてください。
 FOURC> quit

その後、仮想PCのLinuxからも、必ずログアウトしてください。

 

 

○ 困ったときは

・仮想PCの画面が真っ暗で触れない

仮想PCの左上のボタン(左から2番目のボタン)のメニューより、 仮想PCを再起動してください。

・fourcを立ち上げたが、回折計が制御できない

Hardware is locked by another user. Using simulation mode.
と言われる。
仮想PCの再起動をしてください。
(are you already running on this terminalの場合も同様)

・キーボードの入力を受け付けなくなった

specのみの場合: cntrl-q を入力してみてください

・スペックがパルスがずれたと言ってきた

specがsuggestする方に従ってください。

・温度コントローラーと通信が出来ない

_LTC_is_on_=1 としてください

それでも、ダメな場合には
 FOURC> cryo_srv_stop
 FOURC> cryo_srv_start
としてみてください。
(年々、CRYOCONの調子が悪くなってます、上記の対応でダメなら、 CRYOCONの電源OFF/ONした後、上述の対応をしてみてください。 なお、1つ1つの手順はゆっくりで、お願いします。)

・温度値が、正しく表示されない。

SPECと温度コントローラーの通信は、Ctrl-Cなどで測定を中断すると、 通信の整合性が保たれないことがあります。 例えば、ChAの温度を聞いても、1つ前の質問の答えを返すような症状です。
そこで、たまっている質問の答えを吐き出すためのコマンドが以下です。

 FOURC> reset_cryocon

複数の答えがたまっている場合には、上記のコマンドを複数回、入力ください。 答えがなくなると、返事が表示されなくなります。

・ctやgetEをすると変な値が返ってくる(1つ前の値のことも)

こちらも、上述のSPECと温度コントローラーの件と同じ問題です。
下記のコマンドでstarsseverとの接続をリセットしてください。
(Can't change element "8" of built-in array to a string. と言われた場合 も同じです)

 FOURC> reset_stars

ただし、これでも復帰しない場合があります。その時は以下のコマンドを試みてください。
 FOURC> stars_init
(1回目は上手くいかなかったが、2回目で動いた報告もあります。  少し時間を待って、複数回試みてください。)

・ctをするとすべての値が変に

 FOURC> reconfig

ハブなど、ネットワークが不調だと発生するようです。
(ちなみに、辻コンも同じことが生じます。)

・pa0, pa1の値が更新されない

こちらも、Can't change elementのエラーが出ます。
 FOURC> pa_svc_stop
 FOURC> pa_svc_start
として、ピコアンメーターの値を読み出すサーバーの再立ち上げを試みて下さい。

・スキャンをしようとしても測定がスタートしない

"Been waiting ** seconds for beam … " と出る場合は、 Ctrl+Cでスキャンをキャンセルして、chk_thresh=-1と入力してください。

・whしてもth, tth, chi, phiではなく、他のモータ値が表示される。

fourc を終了し、fourcの初期化オプションで再起動してください。

FOURC> quit  <- fourc を終了します
> fourc -f   <- -fをつけるとfourcが初期化されて再起動します

この場合、dataファイルなどの情報もすべて初期化されてしまうので、再設定する必要があります。

・setmode=3, 4などで caで計算した位置にピークが存在しない

phiの回転方向が逆転している場合がある。 この時、phi fix であれば、計算通りだが phiの値が変わるような 計算が入ると caの計算がおかしくなる。
chi=0の時に、tth, th, phiの回転軸、回転方向が一致するよう定義する。 phiの回転方向は、config コマンドで変更する。

・configコマンドが使えない

FOURC> config
LINES = 38 COLUMNS = 78
The configuration editor requires at least 24 lines and 80 columns.
と言われ、config コマンドが使えない。

上述のように、端末ウインドウのサイズが小さく 「24 lines and 80 columns」が満たされていないのが原因です。
マウスで、端末のウインドウサイズを大きくしてから、 configコマンドを利用ください。

・シャッターを開いたのに、ビームが来ない(BL-3A)

アンジュレータのgap値を確認してくだしてください。
「PFリングの運転状況」のwebページor ホール内のディスプレイで、右側の「ID Status」、 ID03の値がgap値です。gap値が43mmの場合、アンジュレータのgapが開いた状態ですので、  ビームを出すためにはgapを閉じる必要があります。

測定するエネルギーにmoveEすると、自動的にgapが適正値までしまります。

FOURC> moveE 8   <- 8 keVで測定する場合

注:現在のエネルギー値と、目標値が同じ場合にはmoveEでは、gapは変更しません。
現在値とは、少し異なるエネルギーにmoveEしたのち、もう一度、目標値にmoveEしてください。

・ログアウトの仕方がわからない

左下のメニューを押すと、 一番下に「終了」とあります。これを押せばログアウトのメニューが出ます。
「ユーザーの切り替え」は、使わないでください。

・スクリーンショットがしたい

ひとまず、
scrot -s
で、スクリーンショットしたいウインドウを触ると、 カレントディレクトリにpngファイルができたようである。

・仮想PCの立ち上げ方

デスクトップ上のSPECと書いてあるアイコンをダブルクリックする。

・リモート制御について

これまでは、フリーのVNCを利用してきましたが、「nomachine」を導入しました (2022.1-)。

クライアントソフトは こちらより、 ダウンロードください。

接続先は、pfexp-remoto.kek.jp:4000。 遠隔操作用に、ユーザーごとに連絡をしている(ID+passwd)で認証されます。
すると、ユーザーごとに遠隔操作の許可が与えられているPCのリストが見えるようになります。 ここで、遠隔操作するPCを選択し、ご自身のLinuxのアカウント(ID+passwd)で認証されます。

BL-3A, 4Cのwindows PCのユーザー名は、「USER」です。

・NextCloudで、SPECのデータが更新されない

NextCloudは、ファイルが更新されたと検知しない限り、 ファイル転送しません。
従って、温度依存性等の実験用マクロの1つのルーチンが終わったところで cp ***.dat **** のように、 明示的にファイルを更新させると良いようです。

・Nomachieが繋がらない

ディスプレイ右下のバーに、 の赤矢印の先のマークが表示されていない。 再立ち上げが必要。
nomachineを立ち上げ、settingsを選択。 Statusを選択
Restart the server
パスワードはいつものです。


SPEC reference manual