量子ビームの協奏的利用による強相関物質群における交差相関物性の解明

  

相関電子系では、電子間の強い相互作用により、スピン、軌道占有率、軌道角運動量、電荷、格子などが自由度として作用し、それらの相互相関が物理現象を支配している。これらが同時に秩序化する場合、図1に模式的に示すように非共役外場応答が生じ、単一材料で高度な機能を有するデバイスへの応用展開が可能になる。例えば、電界を印加することで磁化を制御できる電気磁気効果などが挙げられる。

  

本プロジェクトは、複数の量子ビームを協奏的に用いて強相関電子系の巨大な相互相関特性のメカニズムを微視的に解明し、デバイス応用への開発指針を得ることを目的とする。我々は2015年度にCMRCにてプロジェクトを開始し、CIQuSへの発展的改組を経て、継続して研究活動を行っている。これまで、放射光、ミュオン、中性子を相補的に活用し、マルチフェロイクスの巨大電気磁気効果をはじめとした強相関電子系における交差相関物性の研究に取り組んでいる。

図1: マルチプローブによる強相関電子系物質研究の概念図
擬一次元超伝導体LaO0.5F0.5BiS2の長周期構造
室温で磁場により電気が100倍流れ易くなる物質
新機構が生み出す過去最小の磁気渦粒子
スピンのねじれが起こす電子の変位
遷移元素を含む物質の「隠れた秩序」の観測に成功

ピクセルアレイ型二次元検出器を用いた放射光X線回折装置の開発

CIQuSにおけるマルチプローブ環境整備の一環として、2020年度末に大型ピクセルアレイ型検出器PILATUS3S 1Mを導入し、Photon Factoryにおける利用環境の整備を行っている。Photon countingでの測定を広範囲で同時に行うことができるため、ゼロ次元検出器やIPを用いた回折計よりはるかに短時間で高精度の測定が可能になる。無機物質の高精度構造解析を目標として、より広い範囲での測定を可能にするために検出器の位置を自動調整できる機構を独自に開発した(図2)。現在、測定のためのシステムを構築し、基盤技術部門 BL制御開発チームの協力を得てソフトウエアを開発している。

図2:電動検出器位置調整装置と設置されたPILATUS3 1M

DX技術を活用した協奏的量子ビーム利用による材料評価

東京工業大学、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構、日本ファインセラミックス協会は、2022年10月より、文部科学省 「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト」 として「智慧とデータが拓くエレクトロニクス新材料開発拠点 (Data Driven Materials Research Institute for Electronics:D2MatE)」を開始しました。CIQuSにおいて協奏的量子ビーム利用による材料評価を行い、また、プロジェクト内で連携してDX技術の実装を目指します。