ポスター発表の概要

基研研究会
場の量子論の基礎的諸問題と応用
[ポスター発表一覧]

(A1) 蟻坂仲輝 (玉川大 「A periodic number operator in the Pegg-Banett-Ozawa space」
Pegg-Banett-Ozawa spaceのなかで、無限大超自然数をνとして、個数状態|ν>、|ν-1>、… を|-1>、|−2>、… と読みかえて、固有値がn=0、 ±1、±2、… となる周期的個数演算子Nをつくることができた。位相演算子φと周 期的個数演算子Nの交換関係は、Pegg-Banettの位相演算子と個数演算子の交換関係と同じ形になることが導かれた


(A2) 原田 恒司 (九大 「1/N_c から見た 3核子力 」
1/N_c 展開の観点から、3核子力の主要項を求める。


(A3) 全卓樹 (高知工科大) 「量子点状相互作用とその量子リングへの応用」
量子的な点状相互作用の非自明な数学的諸性質が最近明らかにされてきたが、最近進 歩の著しいナノスケールの量子デバイスは、それらを実際に観測するための格好の場 を提供している。われわれはここで量子的アハロノフ=ボーム・リングの永久電流準位をとりあげ、最近実験的に分離されはじめた系のスペクトルの貫通磁場依存性の解 析を行う。そして点状相互作用のもつU(2)対称性の「准等準位部分群」や「滑部分群」 がそこで実現されている可能性を指摘する。


(A4) 宮崎倫 (KEK 「逆2乗型ポテンシャルを持つ調和振動子系における量子コースティクスの破れとその応用」
量子コースティクスとは、初期状態において任意の運動量を持つ点粒子が、ある特定の時刻において必ず1点に集中する現象のことを言う。非線形の相互作用項をもつ量子力学系で、量子コースティクスを示すものとして、$g\frac{1}{x^2}$ 型のポテンシャルをもつ調和振動子が知られている。この系は結合定数 $g$ によらず量子コースティクスの特性を示すものと思われていたが、弱結合の領域では原点$x=0$でのトンネル効果のため量子コースティクスが破れることがわかった。この系は実際にファインマン核を計算することが可能である。具体的な計算を実行し、コースティクスの破れを示す。また、その破れ方は系の対称性を反映していることが実際に見てとれる。従来のコーティクスの議論では物理的な応用に関する議論は少なかったが、適当な操作により1電子の波動関数の増幅に応用することが可能であることを示す。


(A5) 中山 法子 (京大人環 「Classification of N-fold Supersymmetric Models」
1次元量子力学における対称性「N-fold supersymmetry」を持つモデル は以前から幾つか知られていたものの、それ以外の新たなモデルを 導出することは非常に困難であった。 この対称性を持つモデルは、一般に「quasi-solvability (準可解性)」という重大な 性質を持つことが証明されている。 今回の我々の研究は、この性質に着目することにより、 特に「Type A」と呼ばれるモデルについての完全な構成・分類を可能にした。


(A6) 阿部 光雄 (京大数理研 「Recursive Fermion System in Cuntz Algebra」
場の量子論の無限自由度に起因する基本的性質の一つとして、量子力学における von Neumannの一意性定理が成り立たず、正準(反)交換関係は連続無限個のユニタリ 非同値な表現をもつことがあげられる。良く知られている例としては、自由場理論の 生成消滅演算子のボゴリューボフ変換があり、無限組の生成演算子と消滅演算子を ミックスするような線形変換はユニタリ変換では記述できない。ボゴリューボフ変換 は生成消滅演算子の代数(正準交換関係または正準反交換関係)を不変に保つ線形変換 なのでその具体的な構成は容易である。しかし、一般にどのような(ユニタリ変換で は ない)非線形変換のもとで生成消滅演算子の正準(反)交換関係が不変に保たれるのか という基本的問題に対する答えはこれまで知られていない。   この講演では、フェルミオンの生成消滅演算子をクンツ環と呼ばれる$C^*$環の一 つ に組織的に埋め込む方法を紹介し、その応用例の一つとして上記のような非線形変換 が具体的にいくらでも構成出来ることを示す。この非線形変換は一般に有限多項式で 記述でき、特別な場合としてボゴリューボフ変換を含む。このような無限個の非線形 変換は全体として無限次元群をなしていることもクンツ環の性質からわかる。   クンツ環は有限生成であるので、その構造は比較的わかりやすい。このクンツ環の 構造や性質をそこに埋め込まれたフェルミオンに制限することによって、フェルミオ ンの様々な構造や性質を明らかにすることが可能である。上記の無限次元非線形変換 群の他の応用例としては、クンツ環を不定計量の場の量子論に適用できるように拡張 することによって、ストリング理論のFP(反)ゴーストのゼロモード演算子の表現とし て2次元表現(Kato-Ogawa)や4次元表現(Abe-Nakanishi)なども構成できる。   クンツ環を用いてフェルミオンの性質を探る研究はまだ端緒についたばかりであり、 この講演を通して皆様の色々な意見を伺いたいと思います。   参考文献: math-ph/0110003, math-ph/0110004, hep-th/0110009


(A8) 阪本 滋郎 (島根大 「Comment on the bosonization of the extended Thirring model with SU(2)symmetry」
Thirring ModelにSU(2)対称性を持たせるべく拡張されたフェルミオンモデルのボゾニゼイションについて、一部では非常に簡単に実行可能であるように思われている(例えば、"Quantum Field Theory and Critical Phenomena" byJ. Zinn-Justin)が、この構成法では、フェルミオンと補助場との相互作用を消去する変換において生じるJabobianを正しく計算していないことを示す。


(A9) 原 昌史 (阪大 「 Stars with False vacuum core」
スカラー場で、中心部がfalse vacuum外部がtrue vacuumである系を実現したい。このような系は、中心にフェルミオンを考えると安定に存在することが分かった。スカラーポテンシャルのサイズによって、フェルミオンの質量は変化する。


(A10) 江本 大輝 (阪大 「 Cosmology in the Einstein-Weinberg-Salam Theory and Magnetic fields」
コンパクトなトポロジーを持つ宇宙(ド ジッター宇宙)に広がるワインバーグーサラム理論の宇宙的な解の性質について調べた。宇宙の半径がワインバーグーサラムのスケールの大きさでは 非自明な真空(準安定な)がある事が分かった。 対称性が破れた後には 磁場が 誘起される。この正則な配位は数学的にはHopf mapに対応している。


(A11) 富野 弾 (阪大 「A Comment on Gravity/Non-Commutative Yang Mills correspondence and Doubletons」
type IIB 超重力理論をB場のかかったD3 brane 解を表す時空にコンパクト化することで doubleton が重力と decouple しないことを確認した。これはU(N) NCYM理論の場合にはU(1)部分が対応する重力のなかに含まれ ている事を意味すると思われる。


(A12) 白石 清 (山口大 「2+1 次元非可換重力の厳密解」
Banadosらのアプローチでは,Chern-Simons form から2+1 次元非可換重 力をつくっている。彼らの解は2つのキリング方向の座標が非可換なのでかなり 特殊である。われわれは,可換の場合に通常検討されるような定常解に対応した ものを,2つの空間座標が非可換とした場合に求める。また,これを背景とした 場の運動方程式などの考察を与える。


(A13) 浦 幸佑 (大阪市立大 「高次元重力のカイラル理論と8次元Ashtekar重力理論 」
特殊ホロノミー多様体の存在する次元において,重力のカイラル作用を構成した。高次元において重力のカイラル作用とは,重力場を表すスピン接続の一部分とフィアバインからなるEinstein-Hilbert重力理論と等価な作用のことを呼ぶ。また特に8次元においてそのカイラル重力理論から8次元のAshtekar重力理論を構成する。


(A14) 坂井 徹 (都立科学技術大 「1+1共型場理論を利用した量子スピン系のサイズスケーリング理論を応用して磁化過程の数値計算」
1+1共型場理論は1次元量子スピン系を解析するための有益な有限サイズスケーリング理論を与えることが よく知られている。有限クラスターの数値対角化によって求めたエネルギースペクトルに、このサイズスケーリングを適用して、量子スピン系の磁化過程のさまざまな量子相転移や臨界現象を調べた結果を報告する。


(A15) 野中 千穂 (広大 「格子QCDによる SU(2)-QCD の高密度状態の研究」
我々は Wilson fermion を用いた格子QCDの計算を用いてSU(2)-QCDの高密度状態について議論する。ここではフェルミオン行列式の比を厳密に評価するアルゴリズムを用いる。ポリヤコフループ、バリオン数密度、グルーオンのエネルギー密度の化学ポテンシャルに対する振舞いより閉じ込め/非閉じ込め相転移について議論する。さらに meson、diquark それぞれのプロパゲータの有限密度での振舞いからカイラル対称性の破れの回復、高密度状態でのdiquark condensate について解析する。


(A16) 永尾 敬一 (東大総合文化 「格子ゲージ理論における vortex fermion の構成」
格子ゲージ理論において、現在、精力的に調べられているdomain wall fermion は、4+1 次元から4次元に落として得られたものである。ここでは、格子上でのカイラルフェルミオンの別の定式化を探る意味で、4+2次元から4次元に落とすことで vortex fermion を構成し、その性質を議論する。


(A17) 室谷 心 (徳山女子短大 「Sigma Particle on The Lattice」
Shin Muroya,  Atushi Nakamura, Chiho Nonaka, Motoo Sekiguchi and Hiroaki Wada( SCALAR Collaboration )我々はWilson 型ダイナミカルフェルミオンを用いたSU(3)格子QCDの数値シミュレーションによって、I=0、J^{PC}=0^{++} チャンネルの中間子のプロパゲータを解析した。これはカイラル対称性の議論で重要な役を演じるσ中間子と同じ量子数のチャンネルである。 ここでは、このチャンネルのプロパゲータに特徴的に表れる連結グラフと非連結グラフの寄与の違いや、ρ中間子との質量の比較等を議論する。


(A18) 劉 玉斌 (広大 「Charge Fluctuation and Fermion Number Density Susceptibility in Lattice QCD」
We measured charge fluctuation and fermion number density susceptibility using  lattice  QCD  with  two  light  flavors  of  staggered quarks on   $ 16 \times 8^{2} \times 4 $ lattice. Below the critical temperature, we  simulated them with the sub-volume for $V=(2a)^3\sim(8a)^3$.This suggests the existence of  hadronic  length  scale  through  evaluating the charge fluctuations  and  fermion  number  density  susceptibility, the ratio of  non-singlet  fermion  number density susceptibility to charge fluctuation is independent of temperature and quark mass.  Above critical temperature, charge  fluctuation  and fermion number density susceptibility are almost volume independent for $V \ge (2a)^3$. 


(A19) 松浦 壮 (京大基研 「Holographic RG Interpretation of Higher-derivative Gravity」
Holographic 繰り込み群(RG)は、AdS/CFT対応に端を発した、非摂動的な繰り込み群の解析方法である。AdS/CFT対応は、d+1次元の古典重力理論がある種の d 次元場の量子論と dual であることを主張するが、その対応はstringy な効果を考慮しても成り立つと期待されている。string の励起状態を考慮すると、重力理論に高階微分項が加わることが知られている。我々は、この高階微分項を繰り込み群的な立場から考察し、この項が場の理論における非常に irrelevant な operator に対応すること発見した。以上の結果を紹介する。


(A20) 山本 雅義 (中央大 「Low-Energy Dynamics of Noncommutative CP(1) Lumps in 2+1Dimensions」
場の理論の非摂動的効果においてソリトン解は重要な役割を果たしており,最近では非可換な空間上の場の理論におけるソリトン解が活発に研究されている。非可換な2次元空間上のCP(1)模型ではlumpと呼ばれるBPSソリトン解が知られており,そのモジュライ空間のパラメーターは可換な場合と同じである。本研究ではこのモジュライ空間の幾何学について調べた。この模型のモジュライ空間はケーラー多様体であると考えられ,特に,1-ソリトン解と2-ソリトン解に関して,ケーラー・ポテンシャルの非可換パラメーターによる補正を求めた。また,lumpの低エネルギーにおける運動をモジュライ空間上の測地線を調べることにより考察した。


(A21) 斉藤 頼准 (中央大 「3次元N=4超対称非線型シグマ模型の紫外発散の相殺」
3 次元 N=4 超対称非線型シグマ模型 [ターゲット空間 はT^*(CP^N-1) ]の紫外発散性を 1/N 展開のNext-to-leading order まで調べた。そのベータ関数の leading order 及び Next-to-leading order には量子補正の寄与がないことを示した。


(A22) 永沼 雅史 (東工大 「BPS Lumps and Their Intersections in N=2 SUSY Nonlinear Sigma Models」
4次元でN=2の超対称非線形シグマ模型において、string状のBPS解(lump解)の性質について議論する。特にその解の持つtopological charge と、lump が空間的に伸びる方向の間に特別な関係があるとき、1/4の超対称性が壊れずに残ることを調べた。


(A23) 山口 哲 (京大人環 「G_2 多様体上のヘテロ弦」
ヘテロ弦理論の G_2 ホロノミーを持つ多様体上によるコンパクト化について世界面上の共形場理論の立場から考察する。このとき時空のゲージ対称性として F_4 という non-simply laced な Lie 代数が現れることを示す。さらに、このゲージ場の電荷を持つ物質場の数は多様体の Betti 数を用いてあらわす。一方、様々なホロノミーの多様体によるコンパクト化を考えたとき、世界面上の臨界 Ising 模型、3重臨界 Ising 模型、3状態 Potts 模型などの統計系にあらわれる共形場理論が時空の超対称性、ゲージ対称性の拡大に関して重要な役割をしていることを見る。


(B1) 杉原 崇憲 (名大 「基底最適化くりこみ群 」
Wilsonが近藤模型に適用した数値くりこみ群の方法を拡張する。 Wilsonはハミルトニアンの固有状態をrelevantな基底としたが、この処方箋を近藤模型以外の1次元スピン模型に適用してもよい結果が得られないことが知られている。最適化された基底を見つけるための方法を提案し、S=1/2 Heisenberg鎖に適用する。


(B3) 高石 哲弥 (広島経済大 「Chiral Condensate at Finite Chemical Potential 」
有限密度の影響がChiral condensate にとのように現れるかを格子QCD計算 により求めた。この結果より有限密度おける相転移の状況を議論する。


(B4) 佐々木 千尋 (名大 「Vector Manifestation in Hot Matter 」
Based on the hidden local symmetry (HLS) Lagrangian as an effective field theory of QCD, we find that the chiral symmetry restoration for hot QCD can be realized through the Vector Manifestation where the rho meson becomes massless degenerate with pi as the chiral partner. This is done by including, in addition to the hadronic thermal effects due to the pi- and rho-loops, the intrinsic temperature dependences of the parameters of the HLS Lagrangian through the matching of the HLS with the underlying QCD.


(B5) 駒 佳明 (金沢大 「Dual superconducting scenario of confinement in SU(N) gauge theory」
格子QCDモンテカルロシミュレーションにより示唆されている、非摂動的な力に対する Casimir スケーリング則の問題を、双対超伝導体的な QCD 真空の描像の観点から議論する。特にSU(N) ゲージ 理論の低エネルギー有効理論として[U(1)]^{N-1} dual Abelian Higgs (Ginzburg-Landau) 理論を構築し、Bogomol'nyi limit における解析解と Large N limit の関係について考察する。(Y. Koma et al,  hep-ph/0109033, PRD64(2001)011501)


(B6) 岩崎 正春 (高知大) 「カラー超伝導における揺らぎ効果」
クォーク物質のカラー超伝導のギャップの揺らぎ(集団運動)について議論する.


(B7) 北沢 正清 (京大 「カラー超伝導およびカイラル相転移へのベクトル型相互作用の効果」
低密度QCDにおけるカイラル相転移やカラー超伝導相の振る舞いを調べるには相互作用が局所化された有効理論がしばしば用いられるが、ベクトル型相互作用を含んだ理論によるカラー超伝導の研究は従来ほとんど行われていない。しかしながら、ベクトル型相互作用の効果はカイラル対称性の回復を高密度側に遅らせることが知られており、この効果とカラー超伝導相の競合、またカラー超伝導相自体の振る舞いの変化を調べることは非常に興味深い。<br>そこで我々は、3-flavor 南部-Jona-Lasinio模型にベクトル型相互作用を導入し、QCDの相図の計算を行った。この結果、2-flavorでも広い領域におけるカイラル対称性の破れとカラー超伝導の共存相が出現するなど、これまでのカラー超伝導相の描像を根本的に変える興味深い結果が得られた。実際、われわれの結果は、いわゆるカラーフレーバーロッキング(CFL)の状態への相転移の次数等その基本的性質に重大な影響を与えることが予想できる。これらの結果について、その物理的理由を明確にしつつ報告する。


(B8) 横田 浩 (奈良大 「 Chiral Phase Transition in QCD at Finite Temperature --Hard-Thermal-Loop-Resummed Dyson-Schwinger Equation in the Real Time Formalism --」
熱ゲージ場のカイラル相転移機構を理解するために、フェルミオン質量項に対するDS-gap方程式を用いた多くの分析がなされてきた。しかし、従前の研究は、零温度場理論の結果を安易に熱場理論の分析に拡張適用するなど、問題が多く、得られた結果がそのまま熱場理論の指し示す結論であるか否かについて信用しがたいところがある。本研究では、従前の分析の問題点を十分に考慮した上で、熱場に依存する相転移を支配する本質的な熱場効果は何であるか、また、その効果をいかにすればDS-gap方程式の「核(カーネル)」にとりこみうるのか、という点に力点をおいた分析を実行する。そのために、まず、今回、硬熱ループ再加算ゲージボゾン伝播関数を正しく用いた場合の結果について調べた。得られた結果(予備的)は、従前の結果とのかなり大きい差異を示しており、totalな再分析が必要であることを示唆している。頂点関数を含めtotalに考慮した場合の分析については、次のステップで実行し、従前の結果、また、今回の結果との間での比較分析を行うことで研究の目的である熱場相転移機構を支配する本質的な熱場効果の理解に到達することを目指す。


(B9) 国府 俊一郎 (高知大 「ボース凝縮と気体液体凝縮の比較論」
ボース凝縮体が引力に対して不安定である事は昔から良く知られている。しかしながら、気体液体凝縮は古典ガスでも起きる普遍的な現象であるから、ボース凝縮体の存在という特殊な条件が気体液体凝縮にとって必要条件であるとは考えられない。むしろボース統計性が気体液体凝縮にどのように作用するかが、興味ある点である。直観的には、低温でボース粒子が持つ小さな運動エネルギーと、同じ状態に入ろうとする性質は気体液体凝縮を促進するように働くと想像される。 ボースガスを低温高密度にすると、ボース統計が貫徹している波動関数が次第に巨視的な大きさにまで成長していく。(これはボース凝縮体が出来る以前の段階で、すでにそうである。)ボースガスに働く引力を統計力学の上で扱うに際しては、この巨視的な波動関数を考慮にいれた大分配関数の展開が必要になる。(これは従来からある最初から凝縮体の存在を仮定した扱いとは本質的に異なる。)1960年代にGoudinとLangerにより提案された方法を引力の働くボースガスに適用し、大分配関数を計算した。大分配関数の引力による部分は、寄与する波動関数の大きさで展開した形をしている(Coherence Expansion)。低温高密度になると、上記の展開の中で大きな波動関数による項が発散を起こす。(この結果は昔のファインマンによるボース凝縮の模型に相似している。)その結果、負の化学ポテンシャルがゼロに接近する途中のまだ有限の値を持つ温度、圧力で大分配関数がゼロになり(Yang-Leeの零)、気体が液体に凝縮する不安定を起こした。この事は、引力の働くボースガスでの気体液体凝縮では、ボース統計が貫徹している事が本質的であってボース凝縮体の存在は必要ない事を示している。(S.Koh,  Phys.Rev. B 64,134529(2001), (E) B 64 (2001))


(B10) 伊藤 仁之 (近畿大 「2(1)次元空間における複合系の統計と量子ホール効果階層構造論」
まず、1+1次元の Nambu-Goldstone ボソンについて簡単に触れ、主に1+2次元を論じる。複合エニオン系の統計の特徴を明らかにし、エニオン準粒子像に基づき分数量子ホール効果理論の見直しを行う。Chern-Simons ゲージ場の物理的解釈を議論し、複合フェルミオン理論を批判的に検討する。hep-th/0110197 に基づく。


(B11) 御領 潤 (東大物性研 「Chiral correction to the spin fluctuation feedback in two-dimensional p-wave superconductors.」
We consider the stability of the superconducting phase for spin-triplet $p$-wave pairing in a quasi-two-dimensional system.  We show that in the absence of spin-orbit coupling there is a chiral contribution to spin fluctuation feedback which is related to spin quantum Hall effect in a chiral superconducting phase.  We show that this mechanism supports the stability of a chiral $p$-wave state.


(B12) 西川哲夫 (KEK 「A 2-loop calculation of the self energy and the spectral function for the sigma meson at finite temperature」
有限温度の場の理論では、2ループダイアグラムの計算方法は整備されている とは言い難い。 また有限温度では熱浴中の粒子によって誘起される崩壊過程があるが、例えば自己エ ネルギーを1ループまでしか含めなかった場合、 中間状態にたいするこの崩壊は考慮されない。そこで我々は、線形シグマ模型の枠内 で有限温度でのシグマ中間子の 2ループの自己エネルギーを計算し、特にその虚数部分の構造を調べた。またこれを 用いてシグマ中間子のスペクトル関数の解析を行ったので その結果についても報告する。


(B13) 小久保 陽介 (日大 「Abelian Projection of Massive Yang-Mills Theory toward Color Confinement」
QCDのゲージ場であるグルーオン場は、カラー電荷を持つもの(荷電グルーオン場)と持たないもの(中性グルーオン場)に分けられる。低エネルギー領域において、荷電グルーオン場は質量を持つことが格子シュミレーションにより示されており、そのため長距離の現象であるクォークの閉じ込めには、中性グルーオン場が本質的である(アーベリアン・ドミナンス)。我々は、簡単のためカラーゲージ群をSU(2)とし、質量を持つ荷電グルーオンを記述する模型として、ゲージ場の運動項を含むゲージ化された非線形シグマ模型(Stueckelberg形式)を議論の出発点としてきた。そしてアーベリアン・ドミナンスを踏まえ、荷電グルーオン場と非線形シグマ模型に含まれるスカラー場を量子効果として取り入れた可換有効ゲージ理論を導いた。本講演ではその性質について議論することが目的となる。


(B14) 石黒 克也 (金沢大 「有限温度SU(2)Yang-Mills理論の赤外有効理論 〜 monopoleの観点から〜 」
QCDの有限温度相転移を、QCD真空が双対超伝導体であるとの立場から理解するために、有限温度系におけるmonopole有効作用の構築を試みる。また高温相において、Dimensional Reductionされたmodel(3D Georgi-Glashow model)と関連付けることで、monopoleの閉じ込めに対する役割を考えてみる


(B15) 今井 崇人 (千葉大 「最も一般的な繰り込み可能最大可換ゲージ」
我々はSU(2) Yang-Mills理論に対するゲージ固定項で、大局的なU(1)対称性を有する最も一般的なものを作った。繰り込み可能性の観点から、通常の大局的なSU(2)対称性を持つゲージ固定項には含まれない項の重要性を指摘する。


(B16) 煙山元洋 (近畿大 「ニューラルネットワークのゲージ模型における記憶と学習」
ニューラルネットワークのホップフィールド模型をもとにしてゲージ対称性を持つ拡張模型を提案する。エネルギー$E$として直接伝達項$SJS$と、回り道をして伝達するバイパス項の中で最も簡単な$SJJJS$を採用する。ここで$S_i$は$i$番目の神経細胞の状態を表すイジングスピン変数、$J_{ij}$は$i$番目と$j$番目の神経細胞間の接続状態を表す交換相互作用($Z(2)$格子ゲージ変数)である。$S_i,\ J_{ij}$ の時間変化は、エネルギーが低くなるような緩和現象として扱う。この模型における相構造、学習・連想記憶の結果を紹介する。


(B17) 篠原 徹 (千葉大 「Vacuum condensate of mass dimension 2 and quark confinement」
この1,2年,QCDにおいて,従来のカイラル凝縮,グルーオン凝縮とは異なる 新しいタイプの真空凝縮の可能性(質量次元2の真空凝縮)が幾つかのグループに よって指摘され,シュミレーションを含む活発な研究が行われている。 本発表ではこれに関する最近の発展を批判的にレヴューし,それが従来の摂動的QCD からの ずれとして如何なる非摂動的効果を生じるか,また,それがクォーク閉じ込め等の理 解にいかに 寄与するかを議論する。もし,余裕があれば,閉じ込め弦の理論との関連や現象論的側面 にも触れてみたい。


(B18) 坂口 智彦 (九大 「Nambu-Jona-Lasinio(NJL)模型における補助場量子効果のGap方程式への反映 」
経路積分法における有効な近似法の一つである補助場の方法は、0次元、1次元系における解析によって、その近似の次数を上げれば上げるほど、精度のよい答えが得られることがわかっている。[1] 我々はこの立場から、Nambu-Jona-Lasinio(NJL)模型への補助場のループ効果を考える。我々の興味は補助場の量子効果が対称性の破れを強める方向に働くのか、そうでないのかを明らかにすることである。 対象は、N個のフレーバーを持つNJL模型である。そのカイラル$U(1)$対称性に着目して、そのGap方程式の解を探すことで、対称性が自発的に破れているかどうかを調べる。通常のように補助場を導入してフェルミオンの積分を遂行したのち、補助場に対するWKB近似を行うことによって、有効作用を補助場の1ループ(フェルミオンの2ループ)まで計算する。WKB近似を正確に遂行するために、我々は、$\bar{\psi} \psi$に対して初めに外場$J(x)$を結合させる形式をとる。計算はD次元で行い、最終的に3次元と4次元のGap方程式を導くというシナリオである。計算の見通しをよくするために、1/N展開を用いるが、我々の興味は、Nが小さい場合(N$=$1)も含まれる。 [1]T.Kashiwa, Phys. Rev. D \textbf{59}, 085002(1999) 


(B19) 都木 聡 (名大 「Phase structure of the hot and dense QCD from the Schwinger-Dyson equation 」
有限温度、有限密度におけるQCDの相構造を、特にchiral凝縮とdiquark凝縮の競合に注目し、Schwinger-Dyson方程式を解くことにより調べた


(B20) 田中 和廣 (順天堂大 「QCDにおける"bilocal"及び"trilocal"演算子間の非摂動的関係式と中間子の光円錐波動関数 」
多体問題における非摂動的取り扱いの1つとして、P.C. Martin と J.Schwingerの方法が知られている。これは、場の演算子の運動方程式を用いて、1粒子グリーン関数と2粒子グリーン関数間の非摂動的関係式を導きこれを基礎とする方法である。この講演では、QCDのようなゲージ理論において、Martin と Schwingerの方法の拡張に相当する非摂動的方法が展開できることを示す。QCDの運動方程式を用いて、ゲージ不変な"bilocal"及び"trilocal"演算子間の非摂動的関係式を導く。また応用例として、この関係式が、\pi, \rhoなどの軽い中間子及びB中間子の光円錐波動関数の、非摂動的な取り扱いに強力な役割を果たすことを議論する。


(B21) 幡中 久樹 (東工大 「単連結でない空間上のSU(N)Higgs模型の相構造  」
単連結でない時空上のゲージ場-Higgs場の系では,ゲージ対称性の破れを引き起こすものとしてHiggs場の真空期待値と非自明なWilsonラインがありえて、コンパクト化のスケールに依存するダイナミクスを考えると多様な相構造が生まれる。ここでは円筒状の時空上でのSU(N) ゲージ場ににスカラー、フェルミオン場が結合した模型の相構造について議論する。またその応用の可能性についても話す予定である。


(B22) 大竹 由記 (東大理 「String Junction Transitions and Marginal Stability in N=2 E_N Theories  」
 一般に4次元N=2超対称理論では、Higgs場の真空期待値を変えるとBPS状態のスペクトルが非摂動的に変化することが知られている。この現象はBPS状態のmarginal stabilityと呼ばれ、超弦理論の string junctionを用いて詳しく解析することができる。本研究では、string junctionの手法で5次元超対称SU(2)QCDを$S^1$コンパクト化して得られる理論のmarginal stabilityを調べ、そのBPSスペクトルを厳密に求めた。結果として、quarkのKalza--Kleinモードが質量の軽い方から順に BPSスペクトルから消えていく現象を確認した。


(B23) 西川 美幸 (東大理 「繰り込みと真性特異点  」
真性特異点などではn回微分した結果がn下がらないことがある。従って微分演算子の次元というのは,作用する対象が明示されなければ意味を持たない。このような,理論に必然的に含まれる曖昧さについて明確にしたい。プレプリントhep-th/0110095をご参照下さい。


(B24) 星野 裕一 (釧路高専 「Gauge Covariant Approximation in QED」
ワードー高橋アイデンテイーを満たすようにバーテックスを決め分散公式に基づきDyson-Schwinger 方程式をたてます。普通の方法でヴエクトルの部分とスカラーの部分スペクトル関数に対する積分方程式をたてます。4次元は解析的に解ける。非摂動効果、ゲージ依存性が見える。ランダウゲージでは2つともとけるが任意のゲージでは1つの方程式しか今のところ解けていない。赤外の振る舞いはよく知られたものに一致?次元は解析的には解けていない。赤外の振る舞いは去年のゲージテクニックと違い別のゲージ依存性を持つことを示せる。この方法で繰り込み群によく似た非摂動効果が見える。ミンコフスキーでのプロパゲーターを考察する上で参考になると思います。ゲージテクニックは赤外領域の近似で中間領域がよくないがこの方法でゲージ変換するとランダウーハラト二コフの関係式が点検可能。  


Last updated: 14 December 2001