天体核反応実験

8Li(α,n)11B天体核反応断面積の測定

超新星爆発のような高温高密度状態では、元素生成過程の経路に中性子過剰核が関与すると考えられます。特に、質量数8には安定核がなく、短寿命核8Liとヘリウム原子核との反応8Li(α,n)は、質量数8のギャップを越えて重い原子核領域へ進むために重要な反応と考えられます。

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TRIACから供給された高品質の低エネルギー8Liビームを、4Heガスを主体とした飛行軌跡検出器MSTPC(Multi-Sampling Tracking Projection Chamber)に入射し、8Liと4Heの反応で出来た11Bを直接測定すると同時に、反応によって生成される中性子のエネルギーを飛行時間測定によって直接測定する実験を行いました。

同様な装置を用いて、他の天体核反応断面積を測定して行く予定です。

12C(α,γ)16O天体核反応断面積の測定

TRIACから供給されるパルス化された0.707 MeV/uのヘリウムビームを炭素薄膜に照射し、12C(α,γ)16O反応により放出されるγ線の角度分布測定を行い反応断面積のE1/E2比を決定しました。
得られたEcm=2.1MeVでの結果は、比が0.1近傍であるとする理論予測を支持しており、同手法による東工大の結果と合わせて、Ecm=300keVでの理論外挿値の幅に制限を与えました。

実験の詳細

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ビーム強度2~5μA, 2MHz周期で時間幅13nsのビームを99.9%純度の12Cに照射しました。ヘリウムビームが炭素と反応して酸素に成る時に同時に放出されるγ線を、40,90,130度の位置に配置した大体積(1t)NaI(Tl)で測定しました。この反応の反応率は非常に小さく、標的中には0.1%以下の割合でしか存在しない13C由来の13C(α, n)等で放出された中性子誘起反応によるγ線が主なバックグラウンド源となります。新開発のビームパルス装置を用いて、ビームが標的に当たってからγ線を計測するまでに時間を測定することで、16Oの励起状態からのγ線を、中性子由来のγ線と分離することに成功しました。

今後の展開

さらに高強度なヘリウムビームとそれに耐える標的を準備できれば、最も重要なEcm=300keV近傍までこの方法が適用可能で、現在実験を検討中です。