TOPICS
研究テーマと成果
-
生体親和性高分子に水和する水のダイナミクス
人工血管などにコーティングされている高分子は、その表面で血液が凝固し難い性質を持っている必要があります。そのような性質を「生体親和性」と呼び、表面における水の状態が関連していることが示唆されていましたが、その原因については分かっていませんでした。我々は生体親和性高分子として知られるポリエチレンオキサイド(PEO)とその表面に水和する水の運動状態を中性子準弾性散乱を用いて調べ、高分子との相互作用によりバルク水よりも遅くなった水が存在することを明らかにしました。
-
混合溶媒による発光分子の集合状態制御
疎水性の発光分子を水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒に加えた時、水の比率を変えることにより発光分子の集合状態がどのように変化するかを調べました。それによると溶媒中の水の体積分率が50%の時には分子が「緩い集合体」を形成し、水の割合が増加するに従って「密な集合体」に変化することが分かりました。またこのような集合状態の変化により、発光強度が変化することが明らかになりました。
-
界面活性剤膜のずり流動によるオニオン形成
非イオン性界面活性剤にずり流動をかけるとずり粘稠化が起きることがあります。これはラメラ構造がオニオン状の凝集体に変化することによるのですが、それがなぜ起きるのか、膜間相互作用を制御することによって明らかにしようと試みました。
-
液晶性コロイドのずり流動誘起秩序化
ヒドロキシアパタイトは、生体内で自発的に高次構造を形成することによって歯や骨のような硬度の高い組織となることが知られています。我々は流動場下中性子小角散乱によりヒドロキシアパタイトの結晶が凝集したナノロッドの構造を調べ、ずり流動場はナノロッド間相互作用に影響を与え粒子配向に寄与するとともに、ナノロッド凝集体の形成と破壊の効果を及ぼすことが分かりました。
-
リン脂質膜に水和する水のダイナミクス
生体膜の基本構成物質であるリン脂質膜の親水基の近くに存在している水(水和水)の運動状態を中性子準弾性散乱で測定しました。これにより、水和水には「強結合水」「弱結合水」が存在し、その和は温度とともに変化しない一方で比は変化することが分かりました。また加える塩の種類によって、「強結合水」の割合が変化することも分かりました。
-
拮抗的塩が作る秩序構造
陽イオンと陰イオンがそれぞれ親水性、疎水性になっている塩を「拮抗的塩」と呼びます。これを水と油(有機溶媒)の混合溶液に入れることによって拮抗的塩が界面活性剤のような振る舞いをして、ラメラ構造のような秩序構造を作ります。我々はその様子を中性子散乱を用いて明らかにしました。