ルビー蛍光法による圧力測定の手順、その他。(文責:大和田@SPring-8/JAERI)(2002.5.29 若林@PFがごく少量の加筆) (2012.03.09 熊井@PFによる修正)
下記の測定方法から、一部装置が変わっています。また、現在、BL-8B ではオンラインの測圧はできません。(BL-8A では可能)
詳細はビームライン担当者までご相談ください。
<初めに>
現在のところ原因は分かっていませんが、
測定中無視できない大きなノイズが検出されることがあります。
経験的にレーザーの電源スイッチ(POWER ENABLE)をONにした状態で
測定を続けていると収まってくるので、
1Bに到着したらまず<測定前に>1.の2番目までの操作を、
即やるのが多少なりとも効果があるかもしれません。
<測定前に>
0.ルビー蛍光測圧システムは1Bハッチ上流にあります。
茶色の架台の下にレーザー、分光器などが並べてありますが、
蹴飛ばしたり触ったりしないように気を付けましょう。
蹴飛ばした場合 ⇒ PFを去りましょう。
ユーザーが触ってよいところは、
レーザー本体に付いている手動シャッターとファイバーの取り付け部
ぐらいです。顕微ユニットに関しても同じです。
光ファイバーで光を導入したり取り出したりしている光ファイバーの取り付け口は
細かく調整されているらしく、みだりに触ると良くありません。
光ファイバーを無理に曲げたり、
ファイバーのエッジをむげに扱うのも良くないので丁寧に扱いましょう。
- 1.レーザー発振!!
・CURRENT、LIGHTのつまみが最小値になっているかどうかを確かめます。
・電源スイッチ(POWER ENABLE)ON。
・キー(LASER ON)をまわします。
この段階でファンが勢い良く回らなかったら怪しいと考えましょう。
・レーザー発振までひたすら待ちます。
・青い光が出てきます。
白かったり赤かったりしたら担当者(PHS4204)まで連絡しましょう。
-
2.発振を確認したらレーザー本体の手動シャッターを開けて光ファイバー(青)に光
を導きます。(元々開いていたらこのプロセスはスキップ。)
-
3.顕微鏡のレンズの先からレーザー光が出ていることを確認します。
弱いと思ったら光ファイバーの取り付け具合を先ず疑いましょう。
<波長校正>
1.Neランプの電源を入れて、赤いなんとも言えない光が
煌々と輝くのを確認します。
2.ランプを顕微ユニットの専用差込口に丁寧に差し込みます。
3.鷲(ワシ)のマークの測定アプリケーション(KestrelSpec SBIG for CVI)を開
きます。
4.Window の下の spectrograph control を選択します("レ"記号が点く)。
5.分光器の設定。
・スリットを10μmにする。
・Setup の下の Aquire Setupを開いて、Exposure Time を0.05程度にする。
・Setup の下の Binning Setupを開いて、CCDの受光面を最小にする。(横長の緑線みたいなやつ)
・スキャンセンター位置を(おおよそ)703.24nmに設定する。
・SCAN RATEは現在500nm/minになっているが、適宜変えても良いと思われる。
・"Set" ボタンを押す。
・以上で波長校正のセットアップはすべて完了です。Aquireを押してみましょう。スペクトルが表示されましたか?横軸の単位はメニューで変えられます。
6.スペクトルが表示された状態で,Auto Cal(ibration) をスタートしてみます。
勝手にやってくれるので、愛情をもってじっと見つめましょう。
7.休むまもなく終わるので、スキャンセンター位置をきっちり703.24nmに設定し、
もう一度6.のプロセスを行ないます。
8.スキャンセンター位置をきっちり703.24nmに設定します。
9.校正終了です。
10.ランプを顕微ユニットから取り出し、冷えたのを確認した後、
緩衝材にくるんで大事に大事に机の上に置きましょう。
<常圧下のルビー蛍光測定>
1.標準用ルビーを顕微鏡の下に置きます。
2.ハロゲンランプの電源を入れます。
(注)入れる前につまみ(強度)が最小になっていることを確認します。
なっていなかったら前のユーザーを徹底的に呪いましょう。
3.視野が明るくなったことが確認できたら、マイクロメーター等を使ってルビーを
探します。
4.ルビーの蛍光(ピンク色に輝くはず)はどう頑張ってもレーザー強度最小で十分
見えますので、見えなかったら担当者(PHS4204)へ即連絡しましょう。画面上十字
線の中心にレーザー光が来ているとは限らないので注意しましょう。
5.蛍光線を分光器に導きます(橙の光ファイバー)。
6.スキャンセンターをルビー蛍光線の位置(常圧で約694.5nm)に持っていき、ス
リット幅、Aquire Setup、Binning Setup、等を変えて良いプロファイルを得られる
よう努力しましょう。
7.波長が測定できたら、引き続きDAC中の圧力測定に移ります。
<ルビー蛍光測定>
1.獲物(DAC)を顕微鏡の下に置きます。
2.視野が明るくなったことが確認できたら、マイクロメーター等を使ってDACの中
に潜んでいるルビーを一所懸命探しましょう。
3.ルビーの蛍光(ピンク色に輝くはず)はレーザー強度最小で十分見えます。
どうしても見えない時(見つからない時)は次の順に疑い対処してみましょう。
(1) 光がきっちり入っていない可能性があります。
光ファイバーの取り付け具合にガタあるかどうかを調べましょう。
あったら即直しましょう。無かったら(2)へ。
(2) レーザー強度を上げてみましょう。
CURRENTとLIGHTのつまみを右へまわします。
見つかったら5.へ。見つからなかったら(3)へ。
(3) ルビーが試料に埋もれてしまったか、
媒体閉じ込めの際に流れてしまったかも知れません。(4)へ。
(4) 残念ですが詰め直しましょう。
4.蛍光線を分光器に導きます。
5.スリット幅、Aquire Setup、Binning Setup、等を変えて良いプロファイルを得
られるよう努力しましょう。波長を求めたら次へ。
(補)得られたプロファイルから、最も確からしいピーク位置を見い出す方法。
(その1)心眼で、えいや!!と求める。
⇒PFを去りましょう。
(その2)測定プログラムに標準添付されているもの
(Peak Finder)を使う。
(その3)データをテキストに落として自分でフィッティングする
(推奨)。
やり方は、付録1を参照して下さい。
6.波長が測定できたら
産総研山脇さんのホームページを開きます。
便利な圧力計算プログラムがあるので利用させていただきましょう。
7.圧力を求めてみましょう。
HP利用後は心の中で、”山脇さん、謝謝”とつぶやきます。
8.おめでとうございます。測圧終了です。
<測定後に>
1.レーザー本体の手動シャッターを閉じましょう。
2.レーザーはこまめに落とすようにしましょう。
レーザーには寿命があります。
・CURRENT,LIGHTのつまみが最小値になっているかどうかを確かめます。
・キー(LASER OFF)をまわします。
・レーザー発振が止まります。
この段階ではファンが勢い良く回っています。
・電源スイッチ(POWER ENABLE)OFFは絶対しないで下さい。
・ファンが自動的に止まるまでひたすら愛情を持って待ちましょう。
3.測定をまだまだ続ける場合は、このままほっといてよいでしょう。
蛍光測定を行なう際は、"<測定前に>の1.キーをまわす。"
のところから繰り返します。
波長の校正は毎回やってもいいんじゃない、ということです(某H先生のお言葉)。
4.測定を止める場合はファンが止まっているのを確認したうえで電源を
OFFにします。
5.後片付けをしましょう。
お疲れ様でした。
You did a good job!!
<付録1:蛍光線のフィッティング>
1.先ず”これは”と思うプロファイルが得られたら、テキストデータに落としま
す。
(1) File-Export-Curve(s) as Textを開けて下さい。
(2) X Values in First Column を選択します。
(3) Separate Columns with : "Tab" を選択します。
(4) マイドキュメントの下に自分のフォルダー(ディレクトリ)を作って、
そこにデータを格納します。適当に名前を付けましょう。
(例)ruby002.txt
(5) データが格納された筈です。
2.さあ、フィッティングです。
(1) 最小自乗フィッティングのできるプログラム(Origin, Igor等)を持ってい
る方は、ご自分のパソコンまでデータを引っ張っていってフィットをやって下さい。
特に持ち合わせていない方は以下の手順に従ってみて下さい。
(2) まず、マイドキュメントの下にあるruby_fitというフォルダー内にある、
fit.pltファイルを自分のフォルダーまでコピーしてきます。
中身は次のようになっていると思います。
#
#
#
l1(x)=a1*c1**2/(c1**2+(x-b1)**2)
l2(x)=a2*c2**2/(c2**2+(x-b2)**2)
f(x)=l1(x)+l2(x)+d
!rm -f fit.log
set title 'Ruby Luminescence'
set xlabel 'Wave length (nm)'
set ylabel 'Intensity'
#set nokey
set xrange[690:700]
#set autoscale
a1=4000.0;a2=8000.0;b1=693.6;b2=694.9;c1=0.41;c2=0.5;d=3800;
fit f(x) './ruby002.txt' using 1:2 via a1,a2,b1,b2,c1,c2,d
plot f(x),l1(x),l2(x),'./ruby002.txt' u 1:2 w p
<<中身の簡単な説明>>
まずLorentzian関数を定義しています。
次にグラフウィンドウの設定をしています。
次にパラメーターの初期値を定義しています。
次にフィットに関する定義をしています。
最後に描画させています。
(3) 確認できましたら、デスクトップ上のアイコン"wgnuplot"からgnuplotを立ち上
げます。また、"メモ帳"かなんかのエディタを立ち上げて、fit.pltを開きます。
(4) ./ruby002.txtを自分のファイル名に書き換えます(2箇所、./###.txt)。
fit...の前に#を入れてセーブします。
これはフィットを行なわないで、取り敢えず現在のパラメーターでどの程度
あっているかをチェクするのが目的です。
(5) gnuplotのウィンドウに行って File-Open-./###/fit.plt(自分のfit.plt
ファイル)を開きます。何やら文字がいっぱい流れて、もう一つ画面が現れたはずで
す。
(6) どの程度合っていますか?目で見てまあまあ合っていると思われる程度ま
で、パラメータa1...dを変化させて手動で合わせて下さい。
(7) 大体合ったと思われたら、fit...の前の#を取っ払ってfit.pltを走らせてく
ださい。フィッティングを開始します。
(8) 適宜、初期値を書き換えて行って収束させて行って下さい。
また、テキストデータの余分な波長域をカットするのは、
計算を早く収束させるコツです。是非試してみてください。
(9) 以上でフィッティング終了です。お疲れ様でした。
ここから先はオンライン(回折計上)で測圧する方法について簡単に言及します。
<オンラインで測圧をする方法について>
0.先ず、このことを良く知っている人を捕まえてきて教えてもらいながらやりま
しょう。
1.光ファイバー、ハロゲンランプなどを顕微ユニットから取り外し、顕微ユニット
本体も顕微鏡台から取り外します。4つのねじを取り外すときは注意しながら丁寧に
!!
2.ハロゲンランプ、顕微ユニット及び専用架台をハッチの中に持ち込みます。
3.レーザーから光を導く光ファイバー(青)をON LINE用に付け替えます。
同様に、分光器に光を導いている光ファイバー(橙)をON LINE用に付け替えます。
作業は丁寧にやりましょう。
取り外した光ファイバーの先端には必ず保護キャップを付けましょう。
付けなかった人はPFから去るのみです。
4.専用架台を取り付けて顕微ユニットを載せます。
ハロゲンランプ、CCDカメラアウトプットライン、
光ファイバー(青、橙)をそれぞれ取りつけます。
5.準備は完了です。
6.上記測圧シーケンスに従って測圧を開始してください。