粉末サンプルの準備について
放射光の透過型回折装置の場合には,実験室系で良く使われている反射型光学系で用いる板型試料ホルダーではなく,キャピラリに封じ込めた試料で測定を行います。以下に,試料の準備方法を示します。
試料の準備:
瑪瑙(メノウ)乳鉢でゆっくりサンプルを粉砕し磨り潰します。
この時、あまり強くこすりすぎると結晶性を悪くするので丁寧に磨り潰します。サンプルの平均結晶子サイズは10μm(理想は3μm)以下であると言われています。サンプルサイズをあわせるために篩いを用いる事もありますが、この方法は完璧ではなく、大きい粒を通すことがよくあります。一つでも大きな粒があれば実験を行ったとき、回折スポットを生じてしまい解析の結果に影響を与えてしまいます。丁寧に磨り潰したつもりでも、写真を撮ってみたらスポットが現れるということがよくあります。
結晶が溶けない有機溶媒を瑪瑙乳鉢に注ぎます。
水に弱い結晶の場合、揮発性の高いアセトンなどは使わないほうが無難です。アセトンが蒸発する時の気化熱により、空気中の水蒸気が結露してしまうことがあります。どの溶媒が良いかは、色々と試してみてください。有機系の結晶で有機溶媒に溶けてしまう場合などは、水やほかの溶けない溶媒で試してみてもいいでしょう。
溶媒をかき混ぜ2〜3分ほど時間を置きます。
待つ時間が長いほど粒度の細かい結晶を選び出すことができます。
粒度が荒く重たい粒が底にたまりますので、その上澄み液をスポイトでゆっくりと吸い出し、きれいなシャーレなどに取ります。
溶媒を乾燥させたら、ほんのわずかですが粒度の細かい粉末結晶が残ります。
この方法で重要な点は,細かい結晶を取り出すということと,粒度がある程度そろっているという2点です.
なお,有機結晶など,物理的に磨り潰せない場合には,スパチュラなどで丁寧につぶした試料を用います.このときには,大きな単結晶が紛れ込むことを完全には避けられませんが,測定時に試料を回転させながら平均化することである程度改善できます.このような試料の場合にはいくつかの条件で粉末試料を用意しておいて,粉末パターンをチェックする必要があります。
キャピラリへの詰め方:
粉末結晶を、小さい薬さじ,スバチュラなどですくい取りキャピラリに詰めます。
非常に微量で0.1mmの内径のキャピラリに充分詰めることが出来ます。欲張って多くの量を一度に詰めようとしたらキャピラリの途中で詰まります。
途中で詰まった場合
使い切った(太めの)ボールペン,スポイトの管など,筒の中にキャピラリを入れてトントンと机に打ち付けて落とすか、超音波洗浄器の中につけておくことで詰まったサンプルが下まで落ちます。また、この二つの方法を交互に繰り返すことで、キャピラリの中にサンプルを密に詰めることができます。
何度も繰り返して、0.5〜1cmほどの高さまで充填します。
試料がほんの微量にしかない場合には,1〜2mm程度でも測定可能です。
拡大率の高い実体顕微鏡などで、隙間なく充填されているか、荒い粒がないかチェックします。
キャピラリを封じきります
詰めたサンプルの数ミリ上を切り、切り口をアロンアルファなどで閉じます。吸湿性のある結晶などの場合、キャピラリを真空引きした後焼き切る方法もあります(この時、結晶を焼かないように注意)。一本のキャピラリから複数の試料を作るとコンタミするので,ケチってはいけません。
実体顕微鏡などで、再度チェックして測定に適した場所を確認しておきます。
問題がなければサンプルホルダーにマウントします。
これを装置にセットして測定を行います。
高エネルギー加速器研究機構
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