BL8Aは、 (1)物理学と化学の真の融合を目指して、今まで放射光などの大型施設を利用していなかった 化学系の研究者にも積極的に実験を行ってもらう為の研究支援システムとしての役割 (2)強相関電子系における軌道・電荷・スピンの自由度の秩序化と特異な物性の発現機構の解明 という二つの目的のステーションです。元々BL-1Aにおいて、文部科学省科研費学術創成研究 (東北大金材研、東大物性研、高エネ物構研、分子研、京大化研)と産総研CERCの共同プロジェ クトとして、ビームライン・実験装置の建設が進められ、その後2009年3月にBL-8Aに移設されました。 現在、リガク製イメージングプレート(IP)回折計が設置されています。 主に高圧、低温の極限条件下での強相関電子系物質、有機導体の相転移などの構造的な研究 を行っています。
光学系には、Si(111)を用いたモノクロメーターと、その下流に、Rhコーティングが施され、 ベントされたシリンドリカルミラーが配置されています。2結晶フラットモノクロメーター によって単色化されたX線のミラーへの入射角は、臨界エネルギーが21keVになるように、 3.2mradに設定されており、その結果、実験可能なエネルギー領域は5〜20keV程度に設定されて います。ミラーにおいて縦横同時に集光されたビームは、約20m離れた焦点位置において、 縦(z方向)0.3 mm 横(y方向) 0.7 mm 程度にまで絞られます。モノクロメーターによって エネルギー変化をさせた場合、集光点の位置の動きは、y/z方向ともに0.2mm以下に抑えられて います。エネルギー分解能は正確な評価を行っていませんが、他のビームラインを参考にすると、 dE/E〜5x10-4程度であると期待されます。フォトダイオードによる、サンプル位置に集光された 全フォトン数のエネルギー依存性を図1に示します。マルチバンチのモードでは15keV以下の エネルギー領域でフォトン数が1011個/sec以上の強度がありました。σ−π 偏光度は、CsFeCl3 という六方晶化合物の (002) 反射を Cu (220) 面を用いて偏光解析して決定し、 1 ; 0.034 という 結果を得ています。
主に構造解析的な手法を念頭において、粉末および単結晶を用いた回折図形を扱うために、 広い逆格子空間をカバーする2次元ディテクターイメージングプレート(IP)回折計は、BL-8Bに 設置された同型のIP回折計のノウハウを元に、より扱いやすい装置を目指して、駆動の 安定性や読み取り・消去時間の短縮などに留意して設計されました。分解能を上げるために IPのカメラ半径を150mmから191mmへと大きくしたのにもかかわらず、1枚のIPの読み取り時間が 4分程度と、3倍程度の早さに向上しました。試料環境に関しましては、“様々な極限条件下での 精密構造解析・構造相転移の研究が行えるようにすること”という目標を掲げて、低温用クライオ スタットと高圧低温用クライオスタットがこの回折計専用に備えられています。そしてこれまで 手動で調整されていたDiamond Anvil Cellを自動制御する新システムを用いることで、高圧低温の 多重極限条件下での実験を正確かつ迅速に行うことが可能となりました。