「物理学会期間中の保育室設置を考える会」
第一回シンポジウム報告集
(11/09/2000)
目次
[I] はじめに
[II] 講演報告
[III] 討論会サマリー
[IV] 自由討論議事録
[V] 討論会参加者リスト
日本物理学会において2000年秋の年次大会(新潟)で初めて託児室の設置が試みられました。今回の託児室の実施が「安心して利用できる保育室の常設」につながるよう、物理学会保育室を支援していく目的ため、有志グループで秋の年次大会(新潟)のインフォーマルミーティングでシンポジウム「物理学会期間中の保育室設置を考える会」を開催しました。当日は、老若男女を問わず20数名の参加者が集まり、活発な議論が行なわれました。特に、学会事務局、理事の方を囲んで、常設に向けた保育室運用に関する議論が飛び交い、設置までの具体的な話に踏み込むことができました。
一方、保育室を利用する会員としての意見交換という点では議論の時間が十分に取れなかった面が反省点として残りますが、事前のニーズアンケートや新潟託児室の利用者/見学者からのアンケートで集められた要望/意見なども含めて今後の託児室設置に生かしていきたいと思います。
ご参加頂いた方、アンケートにご返答下さった方、ご協力ありがとうございました。なお、頂いたアンケートの結果等をまとめ、物理学会誌に投稿する準備が現在進行中です。有志グループの活動についての詳細はホームページ http://www-nh.scphys.kyoto-u.ac.jp/JPSchildcare をご覧下さい。
今後ともご支援をよろしくお願い申し上げます。
2000年11月9日
「物理学会期間中の保育室設置を考える会」世話人一同
「物理学会期間中の保育室設置を考える会」シンポジウム開催場所:新潟大学五十嵐キャンパス
年次大会(2000年秋)インフォーマルミーティング
日 時 :9月22日(金) 17:30〜プログラム:
(1)保育所ってどんなとこ(利用者からみた保育室) 発表者:望月優子
(2)保育室の運用は(設置までの仕事の流れ) 発表者:延與佳子
(3)物理学会初めての保育室(今回の保育室のようす) 発表者:延與秀人
(4)物理学会にニーズはあるか。(アンケート調査報告)発表者:松尾由賀利
(5)自由討論
・シッター会社選択の基準について 発表者:野村和泉世話人:
筑本知子(超電導工学研究所、低温)
野尻美保子(基研、素粒子論)
松尾由賀利(理研、量子エレクトロニクス)
延與佳子(KEK、理論核物理)
肥山詠美子(KEK、理論核物理)
延與秀人(京大、実験核物理)
河内明子(東大宇宙線研、宇宙線)
望月優子(理研、理論核物理)
野村和泉(文部省核融合科学研究所、プラズマ核融合)
(a) 保育室ってどんなとこ(利用者からみた保育室) (講演 望月優子)学会保育室では、イベント託児の経験の豊富なシッター会社から保母や看護婦などの資格を持った<プロの保育者>を雇い、学会会場内に託児室を設ける。これにより、今まで子供がいることによって学会参加を制限されていた学会員が学会に参加しやすくなり、研究活動にプラスになることが第一の目的である。二次的には、コミュニティ全体の活動度もあがり、若い学生やポスドクへの励ましにもなろう。また、心配されている方の多いシッター中の事故に関しては、シッター会社が加入している保険で補償される。他、簡単に報告した事項としては、(b) 保育室の運用は (講演 延与佳子)物理学会でも保育室の必要性の時期は熟している。これを機に、保育室継続の元気な流れにしていこう。
- 今回の「保育室設置を考える会」(通称 honeys)ができた経緯と活動。
- 他学会の保育室設置状況 :生物物理学会、天文学会など、確認できただけで全国15の学会で学会保育室の取り組みがある。
- 朝日新聞2000年9月15日夕刊に、今回の新潟大における物理学会での初めての託児室設置の記事が載った。
WWWで紹介されている他学会の例を参照し、設置までの仕事の流れをつかむことができる。大まかな流れは、シッター会社選定、申込受付、シッター予約、会場設営、である。会社選定も含めマニュアルさえあれば研究会開催程度の労力と予想される。すでに天文学会などのマニュアルが公開されているので参考にできる。万一の事故の責任問題については、他学会での運用と同様、主催者(学会)で責任を負うことはできないので「シッター会社の加入する賠償保険の範囲での補償のみ」という点を利用者に了承していただく。(c) 物理学会初めての保育室 (講演 延与秀人)今回の新潟学会で学会託児所が初めて実現した。ご尽力をいただいた担当大学および学会関係者に深く感謝したい。 最初でもあり、利用者は 4家族7児童、うち構成は、 0歳児 1名、1歳児 2名、3歳児 1名、5歳児 2名、8歳児 1名 であった。(d) 物理学会にニーズはあるか (講演 松尾由賀利)
開設は30時間であり、時間でならした平均子供数 2.7名であった。料金は300円/時間/子供 という低料金で、保護者から歓迎された。これは初めての試みだということで、学会からの手厚い援助があったことによる。申し込み〆切日が8月10日とかなり早かったことは申し込み上の問題であり、今後の検討事項である。会場は72平米の講義室の椅子机を撤去し、ござ、カーペットなどをひいたものであるが、広さも採光も申し分ないとの評価が保護者、見学者両方から得られている。電気、ガス口など危険物がきちんと目張りされ担当者の心づかいがしのばれた。部屋に流しがあり、冷蔵庫なども配備されていた上、シッター会社持参のおもちゃも充実していた。設備がとてもよいとの評価が保護者・見学者から得られている。 常時2人の保育者が配備され、ゆとりある保育が実現していた。これは、「お散歩」に行けた高年齢の児童が喜んでいたという事実もさることながら、保護者にとっても安全面で安心できる環境だったといえる。現場でとられたアンケートでは、今後の継続が強く望まれていた。
物理学会における保育室のニーズ(潜在的なものも含めて)を調査するために、「考える会」のWeb page上で8月からアンケートを実施したところ、9/21現在で回答数51を数えた(内訳:子ども有・男性会員8名、女性会員16名 子どもなし・男12名、女15名)。アンケートの結果、現在、物理学会に保育室の需要があり、しかも若い世代の関心が高いため、今後とも増えるであろうことが明らかになった。保育室の運営については、常設をほとんどの回答者が希望しており、利用希望延べ日数で多いのは2日〜3日、個人負担し得る保育料の上限値は1000円/時間/子ども前後であった。
(e) シッター会社選択の基準について (講演 野村和泉)
シッター会社の選択の基準としては以下のことが考えられる。
こういう観点から便利なのが、社団法人全国ベビーシッター協会(厚生省平成3年認可)加盟会社の利用である。上記法人には、自主基準があり、定期的に全国調査などが行われており、補償に関しても安心できる。又、ここに加盟している大手会社には、支社や提携先を多く持つものもあり、ほぼ全国の大学所在地をカバーしている。
- イベント託児の経験とノウハウがあること。
- 万一の事故に備えて保険や補償制度がしっかりしていること。
- .シッターの質がある程度保証されていること。
--事務局側より--
物理学会の会場設置に直接関与しているのが事務局。事務局では物理学会会場を引き受けてもらう大学と開催2年前から連絡をとる。会場設置においては、引き受け候補大学のO.K.サインをもらえれば、保育室の会場設置についても自動的に引き受けてもらえるであろう。すでに決定している今後2年分の開催校については、改めて協力を依頼していくことにする。
(事務局長 清田氏より)
事務局側としては、基本的には会員のニーズによって動くものである。今回の保育室設置に関しては、学術会議での決定をきちんと受け止めている。また、シッター会社の業務のプロぶりや、業務分担の可能性を、今回有志グループから詳しく報告したことで、安心感を得ることが出来た。
--理事会、事務局、有志グループの話し合いで決めたこと--
(1)物理学会の援助額は当面は数万〜10万円程度で様子をみる。
妥当な利用料金を設定した上で、残りを学会負担とし、数回運用した実績を均して考えて、利用料金を見直していく。 分科会の場合に物性、素核宇双方での補助についてなど詳細は未定。(2)ベビーシッター会社と誰が契約を行なうのか?
契約名義の問題:名義は物理学会とする。(3)責任問題---子どもが事故を起こした場合
シッター中の事故に関しては、どのシッター派遣会社でも補償される。シッター会社選定時に、賠償保険に加入していること確かめ、その補償の範囲とし、学会としては責任を負わないことを利用規定に明記する。(4)ベビーシッター会社の受付け代行業務を依頼するかどうか?
有志グループ側としては、シッター会社に業務を色々なレベルで分担させることを示唆した。今後、何回か経験を積んでいく中で、費用がある程度高くついても、それらを利用していく可能性もある。今後の託児室運営にかかわる三者(現地校担当者、学会事務局、有志グループ)の負担の状況を鑑みながら、有志世話人が適宜提案を行っていく。(5)子どもが水疱瘡などにかかった場合はどうするか?
集団感染の恐れのある病気に関しては、受け入れられないことを利用規定に明記する必要がある。その他の病気については、基本的には親の常識ある判断でシッターへの依頼を決定する。また、様々な理由で「物理学会公式の託児室」を利用できない場合に、外部シッターとの個人契約に助成をだすかどうかは、今後の検討事項。--保育室が常設されるために必要なことについての議論--
(2)保育室設置に関して、当面は有志グループで 「分科の世話人にあたる保育室世話人」を出して運営のバックアップに当たると同時に、具体的な仕事内容のマニュアルを整備していくことで、合意を見た。世話人の任期など実状に合わせていく。当面は有志による現地サポーターなどの実働部隊の協力も必要。
理由: 事務局側としては、保育室設置に関して前向きだが、実際にどのように 運用すればよいかのノウハウは白紙。新潟大学での託児室設置は、託児サービス・保育に精通したスタッフがいたという誠に運のよいケースで、今後、開催大学に同様なスタッフがいることを常に期待するのは難しい。
(3)物理学会における保育室の設置にあたって、開催要綱に乗っ取って、理事会から開催大学側に保育室を設置するように要請することができる。開催大学側はそれにより、保育室の会場を提供することは行なう。しかし、現地校担当者がどこまで仕事を分担するのか現段階で不明。
例1)ベビーシッター会社の選定は誰が行なうのか?
2)利用申込を誰が募集するのか?
3)実際の保育室の設備として必要なものをどうするのか?等々。
(4)上記(2)(3)の理由により、会期中の保育室設置に関しての具体的運用のマニュアルを、有志グループが作成する。完全なマニュアルを作成するのは多少の時間がかかるだろうが、これは現地校担当者・有志グループの今後何年かの経験の積み重ねで良いものが出来ていくだろう。有志グループとしては、ゆくゆくはシッター会社にうまく業務代行をしてもらうように目指したい。リモートに分けられる部分を工夫していく。
(順不同、敬称略)
八木江里、長谷正司、板倉明子、坂東昌子、登谷美穂子、初田真知子、滝沢誠、岩崎愛一、野尻伸一、勝木渥、高千穂商大、宍戸(井口)てる子、山本文子、田口義弘学会事務局:清田 勇毅、森 光國、冨樫 衞
担当理事:川村 清
有志グループメンバー:肥山詠美子、河内明子、延與佳子、望月優子、筑本知子、野村和泉、松尾由賀利、延與秀人