2024.02.07 — Cryogenic electronics 開発 —


岩手大学の学生さんと一緒に液体アルゴンTPC用の低温エレキの開発をしています。この開発は、僕がKEKに着任した2016年から続いているものです。

上の写真はLTARS16Aと呼ばれるチップが搭載されている回路基板をまるごと液体窒素を充填したデュワーの中に浸して信号応答を確認しています。ASICはベアチップをプリント回路基板に直にワイヤーボンディングで実装したものを使用しています。低温試験では、ジュワーという激しい音を立てながら気泡と蒸気が発生するのでなかなか迫力があります。よくマイクロワイヤーが断線しないものだと感心するのですが、流石に何回も低温と室温を繰り返すと断線します。ちなみに液体窒素自体は絶縁体として働きます。なので直に浸しても回路的には影響ありません。

一般的なCMOSチップは、室温環境を想定しているため、液体窒素とか液体アルゴンの温度といった低温で所望の性能を有するチップを設計することは結構大変です。市販のアナログバッファICなどは以前低温で試験した際に、発振してしまったためオンチップのバッファ回路でオシロスコープのプローブで波形を見れるようにしています。今回の試験で実用化に向けて多くの知見が得られました。あと1回くらい修正をかければ、KEKにある30 Lの液体アルゴンTPCと接続して、宇宙線からの信号を高いS/Nで検出できるようになるのではないかと期待しています。