(A1) | 浅野雅子 | (KEK ) | 「Supersymmetric Action of Multiple D0-Branes from Matrix Theory 」 |
この研究は、超弦理論の非摂動的物体であるD0-brane の力学を、 その有効理論である、超対称ゲージ理論(ゲージ群U(N)の Super Yang-Mills理論; N は重なったD-braneの枚数)を用いて 調べたものである。この、有効理論としてのSYM理論は、 実は超弦理論の非摂動的定式化そのものを与えるという 提案(Matrix theory conjecture)がなされており、 いままでにさまざまな証拠が挙げられている。 我々は、N_4個の D4-brane とN個のD0-braneを表すSYM理論 (これは、Berkooz-Douglas[BD]行列理論に相当する)を用いて、 実際に理論に現れるD0-braneとD4-braneをつなぐ弦の自由度に 対応する場を(1-loopレベルで)積分することにより、 D4-brane時空におけるD0-braneの作用を求めた。 得られた作用は、もともと重力を含まない近距離の有効作用の計算 であるにもかかわらず、超重力理論の解であるD4-braneを表す時空の中に おかれたD0-braneの有効作用として期待されるものになっている。 その形は、Myersにより提案されたもの、そして、BFSSと呼ばれる 行列理論から得られる作用と相互作用の形や係数を含め正確に一致するが、 行列の順序などに補正が必要であることもわかった。 さらに、この理論をフェルミオンが存在する背景時空において 扱うことにより、D4-braneが存在する時空における超対称性を持つ D0-braneの作用を求めた。これは、非可換ゲージ群を持つ、 非自明な背景時空の中の超対称ゲージ理論を具体的に与えた初めての 例である。 以上の研究は関野恭弘氏(東工大)との共同研究に基づくものである。 ref.: M. Asano and Y. Sekino; NPB639(02)370 ([hep-th/0201248), NPB644(02)151 (hep-th/0207197). |
(A2) | 東 武大 | (京大理) | 「Curved-Space Classical Solution of a Massive Supermatrix Model」 |
We investigate here a supermatrix model with a mass term and a cubic interaction. It is based on the super Lie algebra osp(1|32,R), which could play a role in the construction of the eleven-dimensional M-theory. This model contains a massive version of the IIB matrix model, where some fields have a tachyonic mass term. Therefore, the trivial vacuum of this theory is unstable. However, this model possesses several classical solutions where these fields build noncommutative curved spaces and these solutions are shown to be energetically more favorable than the trivial vacuum. In particular, we describe in details two cases, the SO(3) \times SO(3) \times SO(3) (three fuzzy 2-spheres) and the SO(9) (fuzzy 8-sphere) classical backgrounds. |
(A3) | 池田憲明 | (立命館大 ) | 「Topological Field Theory の変形とその Batalin-Vilkovisky」 |
ゲージ理論の一般的な枠組みは Batalin-Vilkovisky 形式である。 その場の理論のシグマモデルを考えるとターゲットスペースには世界体積の Batalin-Vilkovisky 構造から誘導される幾何学的な構造がつくられる。 例として n 次元 abelian BF 理論を変形としてつくられる Topological Field Theory を考える。Batalin-Vilkovisky 形式の持つ代数構造には豊富な 内容があり、この理論の場合には今まで知られていなかった新しいゲージ代数 構造を持つことがわかる。この理論の解析と応用について考察する。 |
(A4) | 岩崎愛一 | (二松学舎大 ) | 「クォーク物質のカラー強磁性相」 |
密度の高いクォーク物質では、ハドロン相から カラー超電導相になることが予想されている。 ここでは、カラー超伝導相に移る前に、カラー 強磁性相になることを指摘する。カラー強磁性は グルーオンの効果で起る。クォーク密度が十分高くなると、 クォークガスの効果で、カラー超伝導相の方が安定になり、 それが実現する。カラー強磁性相では、もちろん ゲージ対称性は壊れている。 |
(A5) | 岩崎 正春 | (高知大 ) | 「QCD-like Theoryによる高温高密度のカイラル相転移」 |
QCD-like 理論を用いてカイラル相転移や高温高密度での種々な物理量の 温度・密度依存性を計算す |
(A6) | 内野 貴 | (KEK ) | 「Supersymmetric quantum mechanics with point singularity」 |
特異点を持つ量子系はその量子化の仕方がユニタリー行列によって 指定され、ユニークには決まらないことがある。これを超対称量子 力学に応用し、超対称性が実際に実現する量子化を与えるユニタリ ー行列の取り方とその性質について調べた。 |
(A7) | 衛藤 稔 | (東工大 ) | 「 Exactly Solved BPS Wall and Winding Number in N=1 Supergravity」 |
A BPS exact wall solution is found in N=1 supergravity in four dimensions. The model uses chiral scalar field with a periodic superpotential admitting winding numbers. Maintaining the periodicity in supergravity requires a gravitational correction to superpotential which allows the exact solution. By introducing boundary cosmological constants, we construct non-BPS multi-wall solutions for which a systematic analytic approximation is worked out for small gravitational coupling. (hep-th/0208127, to appear in Phys.Lett., collaborators: N.Maru, N.Sakai, T.Sakata) |
(A8) | 大河内 豊 | (東工大 ) | 「 Comments on effective superpotentials via matrix models」 |
Dijkgraaf-Vafaによって提案された方法により、超対称性がN=1のゲージ理 論におけるeffective superpotentialをmatrix modelの計算から求める。 |
(A9) | 加藤 浩 | (千葉大 ) | 「SD Equation and Dimension 2 Condensate in Yang-Mills Theory」 |
Schwinger-Dyson方程式の数値解を用いてYang-Mills理論における 質量次元2の真空凝縮の解析を行なう |
(A10) | 金森 逸作 | (北大 ) | 「Dirac-Kaehler Fermion with Noncommutative Differential Forms on a Lattice」 |
非可換微分形式を用いて Dirac-Kaehler fermion を格子上で 記述し、その性質を議論する。Dirac-Kaehler fermion は Clifford 積を経由し、得られた格子 fermion は staggered fermion である。その際、Clifford 積を格子上で結合則を 保ったまま定義した。結合則を持った演算で記述したので、 ゲージ相互作用を入れるのが容易である。また非可換微分形式の 立場から Ginsperg-Wilson relation や chiral anomaly に ついても議論する予定である。 |
(A11) | 国広悌二 | (基研 ) | 「くりこみ群法を用いた輸送方程式の縮約」 |
イリノイグループによって開発された、いわゆる「くりこみ群法」を 輸送方程式のダイナミックスの縮約に適用する。輸送方程式としては、 古典的リユビユ、ボルツマン、ランジュバン、フォッカープランク方 程式および場の量子論におけるボルツマン方程式を含む。 くりこみ群方程式が時間スケールの粗視化を自然に導くことを示す。 また、力学系理論の中心多様体理論との関連も議論する。 Ref. Y. Hatta and T. Kunihiro, Ann. Phys. 298, 24 (2002) and the references cited therein. |
(A12) | 国府俊一郎 | (高知大 ) | 「ヘリウム4の量子気体液体転移」 |
ヘリウム4を低圧下で冷却すると、気体から超流動液体に転移する。 この時、超流動転移は気体液体転移に引きずられて1次転移としておきる。 これは我々が日常経験する気体液体転移とは異質な、量子効果が引き起 こす量子気体液体転移である。Mayerの考え方を量子系に当てはめて、ここ に注目すべき現象が潜んでいる事を指摘する。 |
(A13) | 小林 努 | (京大理 ) | 「Gravitational Waves in Braneworld Cosmology」 |
曲がった時空での場の量子論を用いて、宇宙膨張による粒子生成ということがよく 議論される。 特に、インフレーションによって生成されたgravitonを起源とする背景重力波には初 期宇宙の情報が多く含まれていると考えられ、非常に興味深い。 今回は、近年注目を集めているRundall-Sundrum タイプのブレーンワールドシナリオ に基づいた宇宙モデルに注目し、インフレーションによるgraviton生成について考え る。Bogoliubov係数を計算して重力波のスペクトルを調べ、通常の4次元宇宙モデル のものと比較・分析する。 |
(A14) | 斎藤卓也 | (広大 ) | 「格子ゲージ理論によるグルーオン遮蔽質量の計算」 |
有限温度におけるグルーオン遮蔽質量の計算をSU(3)格子ゲージ理論を 用いて行う。電場・磁場遮蔽質量の計算をグルーオン伝播関数を計算 することにより求め、その温度依存性・ゲージ依存性の確認などを議論 する。また、LOPやHTL計算との比較も行った。量子化手法としては、 確率過程量子化法を用いた。 |
(A15) | 澤中英之 | (新潟大 ) | 「Novel Approach to Super Yang-Mills Theory on Lattice」 |
格子上での超対称 Yang-Mills理論の実現に向け,新しい格子理論の構成を試 みる.ゲージ作用として市松パターンで特徴付けられるプラケット変数を用い る.Staggered的なフェルミオニック変数とリンク変数を関係づける厳密なフェ ルミオニックな対称性の存在とその連続極限について議論する. |
(A16) | 田中 敏晶 | (阪大理 ) | 「Type A N-fold Superalgebra and Generalized Bender-Dunne Polynomials」 |
準可解性は比較的近年に認識された量子力学系の新しい性質の一つで、 この性質に関連して様々な新しい概念が発見され続けている。'96年に 発見された Bender-Dunne 多項式もその一つで、Hermite 多項式などの 従来から知られている古典的な直交多項式系とは異なる全く新しい性質 を持ち、数学的には弱直交多項式系の一種に位置付けられる。準可解な 系には必ずこのような弱直交多項式系が存在するという議論も不完全な がらあり、今後盛んに研究が進められる分野になると考えられる。 一方これまでの研究により、準可解性はN重超対称性という新しいタイプ の超対称性と本質的に等価であることを示した。特に「A型」と我々が命 名しているN重超対称性は sl(2)の生成子によって構成される準可解な 量子系と等価である。今回の研究発表では、この sl(2)の準可解な量子 系に一般化された Bender-Dunne 多項式と「A型」の超代数との間の密接 な関係について報告する。それによって、Schrodinger 作用素にN階の 線型微分作用素が組合わさることによって織り成される多様な側面に ついて紹介したい。 |
(A17) | 新野康彦 | (佐賀大 ) | 「Maximum Entropy Method Approach to Lattice Field Theory with Theta Term」 |
$\theta$項を含む理論は豊富な相構造を持っていることが期待され、 その構造について非摂動的に解析することは非常に意義深い。非摂 動的性質を調べる最も有効は方法の1つは、格子場の理論を用いて数値 シミュレーションで解析する方法である。 $\theta$項を含む場の理論はボルツマン因子が複素数になってしまうためにモン テカルロ法によるシミュレーションが行えない、複素重率、或いは広い意 味での符号問題が存在する。この問題は$\theta$項を含む理論以外にも、有限密 度系や物性理論などでも見られる、未だに解かれていない非常に厄介な問題であ る。今の場合は、幸いに も、分配関数をトポロジカル電荷分布関数$P(Q)$をフーリエ変換したものに書き 換えることでこの問題を避けることが出来る。然しながら、この方法で自由エネ ルギーを求めると、$P(Q)$分布の誤差のために$\theta$が$\pi$の近傍でなだら かになってしまうフラットニングと呼ばれる現象が生じる。この現象を回避するた めには$P(Q)$分布の誤差$\delta P(Q)$が$\delta P(Q) \sim e^{-V} $ ($V$は系の体積)程度になることを要求するが、これは体積の大きな系で は絶望的である。今回我々はこの問題に対してフーリエ変換とは異なるアプロー チとして、最大エントロピー法を用いた解析を行う。 |
(A18) | 森岡 達史 | (大阪教育大 ) | 「波と粒子の双対性と対称性」 |
光は自由空間において直進する。これは波が粒子としてふるまう現象であるといえ る。光がもつこの性質を波と粒子の双対性とよぶことにする。擬量子物理は symplectic 多様体上の物理模型であって、波と粒子の双対性を記述するものである。擬量子物理には A 型と B 型があり、それぞれ A 模型及び B 模型とよばれる。 A 模型と B 模型は等価である。 基本となるsymplectic 多様体は、A 模型については余接束、 B 模型については重み 関数をもつ複素多様体である。B 模型では、重み関数は強多重劣調和であることが仮定され ている。symplectic 多様体上の関数を積分作用素に翻訳する手続きを量子化 I , symplectic 同型写像を積分作用素に翻訳する手続きを量子化 II とよぶことにする。A 模型では、量子化 I における位置と運動量の役割は対等ではない。しかし、B 模型では量子化 I における両者の 役割は対等である。A 模型と B 模型の間において、量子化 I と量子化 II は両立する。素朴な いいかたをると、B 模型は A 模型の鏡像になっている。ここで、鏡に相当するのは、複素相関 数の定める複素 symplectic 同型写像あるいは複素 Lagrange 多様体である。 擬量子物理により、狭義凸な障害物の境界の測地線に沿って伝わる光の振幅を理論的に観測 することが可能になる。方法は B 模型における WKB 解の構成である。このとき、光 の粒子像はひもであるという考え方が必要になる。B 模型の symplectic 多様体においては、 Hamilton flowに沿って最大値の原理が働く。これを部分正則性という。粒子をひもとみなす考え方 は、数学的には部分正則性の分解を行っていることになる。物理と数学の関係については、講演のときに説明する。 |
(A19) | 湯浅 一哉 | (早大理工 ) | 「Purification of Quantum State through Zeno-like Measurements」 |
量子系に対する観測は,系の状態を乱すことなしに行うことはできず,系 の時間発展は,観測行為の影響を受けることになる.いわゆる量子ゼノン 効果――不安定量子状態にあった量子系が依然としてその状態に留まり続 けていることの確認を頻繁に繰り返すと,その観測行為の影響を受けて不 安定量子状態の崩壊が抑制される効果――はその興味深い例の一つである. 本講演では,この量子ゼノン効果の場合のように量子系に対して観測行為 を繰り返し行うことで,系の状態に非自明で興味深い影響をもたらすこと ができることを報告する.相互作用し合う系Aと系Bとからなる合成系を考 える.このうちの系Aのみに対して,系Aが依然として初期状態に留まり続 けていることの確認を繰り返す.すると,系Bはその観測行為の影響を間 接的に受け,たとえもともと混合状態にあったとしても,ある純粋状態へ と導かれるのである.近年大きな盛り上がりをみせている量子情報・量子 計算において量子状態の純粋化 (purification) は一つのキー・テクノロ ジーであり,そのことを念頭に置きながら,この純粋化の機構を明らかに するとともに,その効率を議論する.(本研究は,早大理工の中里弘道, 高沢智子との共同研究に基づいています.) |
(A20) | 寺嶋容明 | (東工大 ) | 「運動している観測者に対するEPR相関」 |
Einstein-Podolsky-Rosenによるスピン相関の思考実験において、 観測者が運動しながらスピンの測定をする場合を考察した。 その結果、相対論的な速度になるとスピンの同方向成分の反相関が減少し、 Bellの不等式の破れの度合いが見かけ上減少して見えるということを示し た。 そのため量子情報において絡まりあった状態を運動系から利用する場合に は 測定方向を適切に調整する必要がある。 |
(B1) | 小出 知威 | (基研 ) | 「カイラル相転移の臨界ゆらぎに対する非線型Langevin方程式の導出 」 |
近年、カイラル相転移のendpoint回りの動力学やカラー超伝導の前駆現象としての ゆらぎの振る舞いが注目を集めている。 こうした現象を取り扱うのに、主に流体力学や線形応答理論を用いた 議論が行われてきた。 しかしながら、相転移点近傍では相関長が長くなるため一般に流体力学的 による記述よりも運動学的方程式による記述のほうが より適切であると考えられる。 また、臨界点近傍での動力学において、 ゆらぎの非線形性が重要な役割を果たすことも知られており、 線形応答理論を超えた取り扱いが望ましいと期待される。 この研究ではQCDの有効模型であるNambu-Jona-Lacinio模型をもとに、 カイラル相転移における秩序パラメータの従う非線型Langevin方程式の導出 を、そうした運動学的方程式を導出する代表的な方法である 射影演算子法を用いて試みる。 |
(B2) | 杉原 崇憲 | (RIKEN-BNL ) | 「密度行列くりこみ群と自発的対称性の破れ 」 |
密度行列くりこみ群(DMRG)を(1+1)次元$\phi^4$模型に適用し、 $Z_2$対称性の自発的破れを明らかにする。結合定数および臨界指数について モンテカルロ法との比較を行う。DMRGは、様々なスピン系および電子系に 適用され成功をおさめているが、これらの系はフェルミオンの自由度で 記述できるものである。DMRGがゲージ理論に適用できるためには、 ボソンの自由度に対するDMRGの有効性を示さなくてはならない。 本研究ではその可能性を探る。 |
(B3) | 都木 聡 | (名大理 ) | 「 The Effect of the Imaginary Part of the Dirac Mass on the Chiral Phase Transition 」 |
有限密度において Schwinger-Dyson 方程式を扱う場合、 特別な仮定を置かない限り Dirac 質量の虚数部分は無視できないと 考えられる。この虚数部分により QCD のカイラル相転移が どのような影響を受けるのかを議論する。 今回特に QCD の温度、密度に関しての相図で、 tricritical point の位置が虚数部分を無視した場合に 大きく変わることを確認した。 このことは Schwinger-Dyson approach によって 有限密度でのカイラル相転移、及びその関連する物理等を議論する場合、 Dirac 質量の虚数部分を含めた解析を行うことが重要であることを 示唆している。 |
(B4) | 高橋 徹 | (阪大RCNP ) | 「The Gluonic Excitation of the Three-Quark System in SU(3) Lattice QCD」 |
We present the first study of the gluonic excitation in the three-quark (3Q) system in SU(3) lattice QCD with $\beta$=5.8 and $16^3 \times 32 $ at the quenched level. For the spatially-fixed 3Q system, we measure the gluonic excited-state potential, which corresponds to the flux-tube vibrational energy in the flux-tube picture. The lowest gluonic-excitation energy in the 3Q system is found to be about 1GeV in the hadronic scale. This large gluonic-excitation energy is expected to bring about the success of the simple quark model without gluonic modes. ) |
(B5) | 高柳博充 | (東大理) | 「Notes on Giant Gravitons on PP Waves」 |
AdS_5xS^5空間上には、大きさを持っているにも関わらず 質量0で光速で運動するD3-braneが存在できることが知られて いる。これは``giant graviton''と呼ばれているが、空間は複雑 なため弦理論で扱えないため、それの性質はよくわかっていなかった。 しかし、最近この空間はPP-wave極限を取ることで簡単になり光円錐ゲージ の弦理論で扱える事が発見され、一部のD-braneは弦理論で扱える様になった。 そこで、我々はPP-wave上でgiant gravitonを調べた。まず、弦理論で扱える giant gravitonは正しいopen stringの境界条件であることが分かった。 次に弦理論で扱えないものは超重力理論で調べ、その結果giant graviton が大きさを持っていても安定であることが分かった。最後にAdS/CFT対応 (giant gravitonのCFT上の対応物)についても調べた。 |
(B6) | 竹田晃人 | (東大宇宙線研 ) | 「ランダムスピン鎖と長距離相関ランダムネス」 |
本研究は、ランダムXXスピン鎖の特に基底状態に対して長距離相 関ランダムネスが与える影響を調べることを目的とする。ランダム XXスピン鎖はスピン交換相互作用にランダムネスを導入したスピン 系だが、white-noiseランダムネスの下では基底状態のスピン相関関 数は特定の巾の相関を持つことが知られている。その状態に対して 長距離相関ランダムネスが与える影響を、ランダムXXスピン鎖モデル の有効理論であるランダム質量フェルミオンモデルを用いて数値的 に議論する。同時に、本研究と相関ランダムネス系のアンダーソン 局在との関連を説明する。 |
(B7) | 長澤智明 | (神戸大 ) | 「点状相互作用をもつ1次元量子力学系と超対称性 」 |
1次元量子力学系における点状相互作用(特異点)は波動関数およびその一回微分の 間の接続条件として群U(2)のパラメタで特徴づけられ、非常に単純な 系にもかかわらず、数々の物理的に重要な概念(双対性、Berry 位相、anomaly,...)が現れることが知られている。 今回の講演/ポスターでは、円周S^1上に点状相互作用を置いた系 における超対称性について詳しく議論したい。具体的には、 ・まず、点状相互作用のみが入った系における超対称性について、 点状相互作用のクラス、超電荷の形、自発的超対称性の破れの 有無、等について一般的な議論を与える。 ・通常の相互作用も入った一般のN=2 Witten型の超対称性模型へ の拡張。 ・N>2のextended supersymmetryを持つための一般論と具体的な 模型の構築。 等を議論するつもりである。もし、余裕があれば、場の理論への 応用も議論したい。 尚、この研究は、竹永和典氏(ダブリン高等研究所)と坂本眞人氏 (神戸大理)との共同研究に基づくものである。 |
(B8) | 西川美幸 | (東大理 ) | 「ヒッグス機構を用いない電弱統一および量子重力理論の導出 」 |
ゲージボソンの2体問題を考える。「一方が作るポテンシャルを他方が感じ る、という関係が遠距離極限で矛盾なく成り立つ」という条件のみから、ありえるポ テンシャルのべきを分類した。時間によらない球対称ポテンシャルを持つ Klein-Gordon方程式について、空間次元Nで結果は約10通りある。これから標準理 論でU(1)×SU(2)_Lが統一されなければならないことなどが、ヒッグス機構や実験結 果を仮定しなくても示せる。さらに各素粒子を対応する漸近展開形と同定できるかも しれない。このようにリプシッツ連続でない場合、解の一意性も保証されないから、 ゲージ場の起源とも関係がある。 特に、ワインバーグによれば時空の曲がりを仮定 しないでも重力が扱えるが、本論文では重力ポテンシャルも平坦時空における量子力 学の枠内で自然に導かれる。http://nisimiyu.net もご参照下さい。 |
(B9) | 野村清英 | (九大 ) | 「量子スピン系の整合ー非整合遷移」 |
1+1 次元量子スピン系で、Haldane 予想と関連して、厳密に解ける valence-bond-solid (VBS) モデルが重要な役目を果たしてきた。さら に数値計算から、VBS モデルの近くで整合ー非整合遷移が起こることが わかってきた。 しかし、この問題を場の理論的に取り扱おうとすると、格子系のハミル トニアンを連続的な場の理論で記述するには相関距離が長いことが前提 だが、VBS 点での相関距離は格子間隔程度なのでうまくいかない。 そこで、静的構造因子(相関関数のフーリエ変換)を解析性を要請して 複素平面にまで拡張して考察し、整合ー非整合遷移が分岐点と極の移り 代わりにより説明できることを指摘した(cond-mat/0210143)。 このようなアプローチは、かつての S 行列の理論とにている。 |
(B10) | 橋本道雄 | (KEK ) | 「Calculating the pion decay constant from $\alpha_s(M_Z)$」 |
improved ladder Schwinger-Dyson 方程式を用いてパイオンの崩壊定数を 計算する。これまでの MS-bar coupling を使う解析には、くりこみ点を どこにとるかという不定性があった。またくりこみ点をグルーオンの 運動量にとるという通常の処方では、$M_Z$ スケールの QCD coupling を使ってパイオンの崩壊定数を計算すると実験値の 1/3 以下になって しまうという問題があった。我々は next-to-leading order の 有効結合定数を用いることでくりこみ点の不定性をなくした。そして この有効結合定数を使ってパイオンの崩壊定数を計算すると $M_Z$ スケールの QCD coupling の不定性に応じて $f_\pi=85-106$ MeV が 得られた。この結果は improved ladder Schwinger-Dyson 方程式の 妥当性を示すものである。 |
(B11) | 浜田賢二 | (KEK ) | 「Asymptotically DeSitterness and Physical States in Strong Coupling Phase of 4D Quantum Gravity」 |
量子重力が有効になるのは初期宇宙とかブラックホール等の物理を考え ると きである。したがって、重要な事はこれら強結合の領域を如何に記述するかであ る。 初期宇宙では時空は激しく揺らいでいると考えられるので弱場近似は使えない。 これは従来の重力の摂動論がうまくいかなかった理由でもある。すなわち、弱場 近似 を使っている限り、それは量子重力の紫外領域を記述する理論では在りえない。 私は共形モードを厳密に取り扱うことでこの問題を解決した。この点が従来の量 子重力モデルとの本質的な違いであり、繰り込み可能性、物理的状態等の量子重 力の基本的な問題を議論することが出来るようになった理由である。 講演では、このモデルがもつ量子論的共形不変性を使って物理的状態を書き下し てみせる。具体的にはR*S^3背景時空上で正準量子化を行い、通常のFock空間に 対して 共形不変性の条件を満たす状態だけを取り出す。重要な点は、この条件が共形 モード を積分することで生じる、トレースレスモードのゲージ固定をした後でも残る余 分な 条件だということである。すなわち、通常のゲージ理論とは異なる量子重力固有 の条 件である。 |
(B12) | 藤山和彦 | (名大 ) | 「Non-Local Gauge Fixing Method in Ladder Exact Renormalization Group」 |
梯子近似をしたSchwinger-Dyson方程式を用いた研究では、 通常Landauゲージをとる。ところが、軸性ベクトル Ward-Takahashi恒等式との整合性を保つように running gauge couplingを導入すると、Landauゲージと ベクトルWard恒等式との間に不整合を生じてしまう。 この不整合を解消し、ベクトルWard恒等式とも整合性のあるように ゲージをとり直すことをnon-local gauge fixing methodという。 この方法が、梯子近似と同等の結果を再現する非摂動くりこみ 群でも使えることを示す。 |
(B13) | 星野裕一 | (釧路高専 ) | 「Low-Energy Theorem Approach to Determination of the Matter Spectral Function in QED_3」 |
一般的なスペクトル関数の定義より 軟光子放出の 効果を全て取り入れた3次 元QEDの スカラーのスペクトル関数を求めた。結果は 体積無限大の極限で発散。一部の項か ら4次元のような解が得られた。ゲージ依存性はLandau-Kharatonikov 変換のよう。 4次元では繰り込み定数、ゲージ依存性を含めて通常知られている物と一 致する Jackiw の結果があります。ゲージテクニックではスペクトル関数は赤外発散の処理 を行わなければもとまない。 |
(B14) | 本間 真 | (日大 ) | 「Exact Solutions of Domain Wall and Spiral Ground States in Hubbard Models」 |
We construct a set of exact ground states with a localized ferromagnetic domain wall and an extended spiral structure in a deformed flat-band Hubbard model. In the case of quarter filling, we show the uniqueness of the ground state with a fixed magnetization. We discuss more realistic situation given by a band-bending perturbation, which can stabilize these curious structures. We study the scattering of a conduction electron by the domain wall and the spiral spins. |
(B15) | 松居哲生 | (近畿大 ) | 「ゲージ理論と脳の量子物理学:量子U(1)ゲージニューラルネットワーク」 |
ニューラルネットの研究において,Hopfieldモデルは想起の機構をうまく説明 した.以来,学習の機構説明を目指して多くのモデルが提案されている.シナプ ス結合変数をゲージコネクションとみなしたZ(2)ゲージモデルもその一つであ る.一方,今までに提案されている脳の場の量子論の多く(梅沢,高橋,冶部, 保江,Hameroff, Penrose等)ではゲージ対称性が考慮されている.この発表では これらのミクロな理論の有効理論としての U(1)ゲージニューラルネットモデル を紹介する.これは U(1) Higgs 格子ゲージ理論と同型である.相構造等の結果 を上記のZ(2)ゲージモデルの結果と比較して,脳に対する量子効果は想起,学習 の能力を弱める方向に働くことが結論される. Z(2) ゲージモデル: M.Kemuriyama and T.Matsui cond-mat/0203136U(1) ゲー ジモデル: Y.Fujita and T.Matsui cond-mat/0207023 |
(B16) | 松本重貴 | (東大宇宙線研 ) | 「Higher Order Effects to the Neutralino Annihilation into Two Photons」 |
We studied higher order effects to the annihilation cross section of the neutralino to two gamma in cases of wino-like or Higgsino-like neutralino dark matter. This cross section is of importance for a indirect search of the dark matter in our galactic halo, since it would give a quasi-monotonic gamma-ray. The process is a radiative one, and full one-loop calculation has been done. In the calculation, it is found that, if the neutralino is a wino- or Higgsino-like and has a heavy mass, the cross section is independent of the mass. However, the cross section should be limited by the unitarity band, thus the one-loop calculation result fails and higher order correction becomes important. For investigating these corrections, we used a non-relativistic(NR) field theory. We estimate all order correction by photon exchange which works between intermediate chargino pair, and two loop correction by the Z and W exchange. From the two loop calculation of Z,W exchange, we found the critical mass, above that the two-loop contribution is larger than one-loop one, is about 8TeV at the wino limit and is about 1 TeV at the Higgsino limit. Above the critical mass, the cross section from one-loop diagram is not valid at all, and all order calculation is required. The QED correction depends of the mass degeneracy between the neutralino and chargino, and becomes important for the wino-like neutralino because of the highly mass degeneracy. We found QED correction enhance the cross section by 1.5-2 when the wino-like neutralino mass is a few TeV. |
(B17) | 向田寿光 | (埼玉医科大 ) | 「Renormalization Group for a Probability Distribution of Magnetic Impurities of the Random-field $\phi^4$ Model 」 |
ランダム磁場中のd次元$\phi^4$模型を調べる。ランダム磁場の確率分布に対し くりこみ群を適用し、d=3ではなぜdimensional reductionが成り立たないか 説明する。d=5でdimensional reduction が成り立つ可能性について 考察する。 |
(B18) | 村上武晴 | (千葉大 ) | 「Yang-Mills 理論におけるSD方程式のUV漸近解と次元2の凝縮 」 |
最も一般的なLorentz対称ゲージのYang-Mills 理論における 次元2の凝縮の役割を調べるため, SD方程式の紫外漸近解から得られた補正を, OPE補正やrenormalonと比較し, 非摂動補正の与える影響や, その妥当性を調べる. |
(B19) | 藪 博之 | (都立大 ) | 「Bose-Fermi Mixed Condensates of Ultra-cold Quantum Atomic Gas with Boson-Fermion Quasi-Bound States 」 |
原子気体のBose-Einstein凝縮は、場の量子論の多体量子論として側面に対し て 重要かつ興味深い応用の場を与えている。最近は同じ技術により、 Fermion原子気体やBoson-Fermion混合気体の冷却が成功しており、新しい研究対象と なっている。 この発表では、Boson-Fermion混合凝縮体において、引力相互作用のため にBoson-Fermionが準束縛状態 をつくる場合に、凝縮体がいかなる相(束縛状態のFermi縮退相になるか、分離し てBosonがBose凝縮を おこすか)になるかを、量子統計性を考慮した熱平衡条件を解くことにより議論する。 また、混合凝縮体が引力により崩壊(Super Bose Nova)するときに期待される効果 (原子Hawking輻射など) を紹介する。 |
(B20) | 山口 哲 | (東大理 ) | 「PP-wave 背景中の D-brane と 境界のある2次元面上の場の理論」 |
我々は、Maldacena-Maoz によって提案された pp-wave 背景において、超対称性 を保つ D-brane についての研究を行った。この背景中の弦理論の世界面の理論 は Green-Schwarz 形式で光円錐ゲージをとると、超対称性をもつ Landau-Ginzburg 理論になるといわれている。我々はこの背景中で、D-brane を 置いたときに生き残る Killing spinor を考えるという時空の理論からの解析を 行い、D-brane が超対称性を保つ条件を求めた。そしてこの結果を世界面の Landau-Ginzburg 理論で世界面の超対称性を保つ境界条件の解析と比較し、この 両者がほぼ一致することを確かめた。 |
(B21) | 山中雅則子 | (日大 ) | 「Index Theorem for Chromatic Fermion 」 |
A multi-component fermion model on a lattice is constructed whose ground state exhibits a spontaneous ordering which follows the rule of map-coloring used in the solution of the four color problem. The number of components is determined by the Euler characteristics of a certain surface into which the lattice is embedded. Combining the concept of chromatic polynomials with the Heawood-Ringel-Youngs theorem, we derive an index theorem relating the degeneracy of the ground state with a hidden topology of the lattice. We also discuss a novel phase transition characterized by the hidden topological change of lattice structure. |
(B22) | 吉田健太郎 | (京大人環研 ) | 「Classical Solutions and Quantum Stability of Fuzzy Sphere in BMN Matrix Model」 |
Berenstein-Maldacene-Nastase(BMN)行列模型における古典解 について議論する。この模型の作用には 平坦空間上における作用(0+1次元超対称Yang-Mills量子力学系) に加えて、ボソンとフェルミオンの質量項、 Myers項が含まれる。このため静的な非可換球面解、 回転する楕円球面解など多様な古典解が存在する。 一方、この模型の超電荷は通常と大きく異なり陽的な時間依存性を持ち、 保存量ではあるがHamiltonianと交換しない。つまり、 ボソンとフェルミオンのエネルギーは縮退しない。 このため、超対称な古典解であってもその量子論的安定性は明白ではない。 具体的な例として、背景場の方法を用いて静的な1/2BPS非可換球面解の周り の1-loop有効ポテンシャルを計算し、量子論的に安定な配位であることを示す。 更に、超対称でない非可換球面解の不安定性についても述べる。 本研究は京大総合人間学部の杉山勝之氏との共同研究に基づく ものである。 |
(B23) | 青山尚広 | (北大 ) | 「Intra-Landau Level Polarization Effects for Striped Hall State」 |
高いランダウレベルにおける半整数充填率の量子ホール系は 縦と横の抵抗が大きくことなる異方的状態にある。 この異方的状態は、磁気並進および回転対称性を自発的に破った ストライプ状態で説明される、と考えられている。 ストライプ状態はHartree-Fock近似(平均場近似)もと実現する安定な状態 である。 この状態に対する量子補正として、 1ランダウレベル内のみの真空偏極の効果をみる。 RPA近似によるエネルギーやプラズモンの性質等を紹介する。 |
(B24) | 小出 知威 | (基研 ) | 「量子崩壊過程のトンネリングによる加速」 |
量子崩壊はしばしば指数崩壊則にしたがって崩壊すると近似される。 しかし実際の量子崩壊系では、崩壊の初期過程と終期過程において、 崩壊は一般に指数崩壊則からずれ、初期においてはガウス則、終期に おいてはべき則に従い、指数則はその間の中間過程において成り立っ ているにすぎないことが良く知られている。 我々は初期ガウス過程から指数崩壊過程に移り変わる転移領域での、 特にトンネリングによる量子系の崩壊の振る舞いを、時間に依存 するシュレディンガー方程式を数値的に解くことで調べた。 通常、崩壊というものはポテンシャル障壁により崩壊の速さが 減速されると期待される。ところが我々の解析によると、ポテンシャル 障壁によるトンネル効果により、むしろ崩壊が加速されるような 場合があることがわかった。この点について報告したい。 |