藤川 和男 | (東大理 ) | 「Spin-Statistics Theorem in Path Integral Formulation」 |
スピンと統計の定理を経路積分の定式化で、簡単に定式化できることを議論する。 |
杉田 歩 | (阪大RCNP ) | 「マスロフ指数、シンプレクティック幾何、アノマリー」 |
マスロフ指数は、半古典論に現れる位相因子である。この指数は幾何学的な起源を持つと言われてきたが、量子カオスの理論において重要なGutzwillerトレース公式に現れるマスロフ指数については、明確な幾何学的解釈をすることが難しかった。この講演では、古典軌道のまわりの相空間の構造を、正準変換の群(シンプレクティック群)をゲージ群とする一種のゲージ理論として捉える新しい定式化を紹介する。マスロフ指数はこの理論のアノマリーと関連している。また、現在進行中の、1+1次元のカイラルアノマリーとの関連についての 研究にも触れたい。 |
田中 敏晶 | (京大総合人間 ) | 「sl(M+1) construction of symmetric M-body N-fold supersymmetry」 |
多体の量子力学系において,可解な部分空間の基底が対称多項式で表わされる系を考えると,その部分空間によって規定される超電荷のもとでの準可解性条件から自然にハミルトニアンが sl(M+1) の二次形式で 表されることが導出される.完全可解な Calogero や Sutherland typeの模型,および準可解な変形 Calogero 模型などはこのような形式で構成することができる.一自由度の場合の sl(2) を用いた Type A の N-fold SUSY の構成・分類は,原理的には M 体問題にも拡張し得るが一般的な解析は困難なため,M=2 の場合の二体問題を中心に結果の詳細について話す予定である. |
須賀 孝之 |
(千葉大 ) | 「場の理論の枠組におけるUnruh Effectの物理的意味」 |
慣性系(Minkowski座標系)の真空が,等加速度直線運動が静止して見える座標系(Rindler座標系)では熱浴に見えるという効果をUnruh effectという。この効果を物理的に調べるためにUnruh-DeWitt detectorと呼ばれるデバイスを導入するアプローチがある。我々の立場ではこのdetectorが励起することをUnruh effectが起きていることの定義とする。慣性系真空中を等加速度直線運動するdetectorが励起することは確実なのだが,以前はエネルギー的な観点からそのようなことが起こることは矛盾であるかのように考えられ,理論の中のどこに問題があるのかが多くの研究者たちによって議論されてきた。しかし,detectorのresponseの直接の原因がそれ自身の反跳であることがわかり,また,反跳が起きるためにはdetectorに対して何らかの外場がいつでも必要であることが,detectorを場の理論的に扱うImprovedUnruh-DeWitt detectorの導入によって示された。これによりUnruh effectにはエネルギー的に何の矛盾も無く,真空の揺らぎを拾っているのではないか等の議論を必要 としなくなったと思われる。 しかしながら,上では平坦時空の慣性系真空中を等加速度直線運動するdetectorという,極めて限られた特殊な状況のみについて議論しただけであって,一般に外場の影響の下でdetectorがいつでも励起し得るのかということについてはわからなかった。今回は平坦な時空中で外場が存在すれば2つの座標系の領域が異ならなくてもdetectorが励起するということの計算例を示す。これらの結果から考察すると最低エネルギー状態であるところの真空が,ある座標系で定義されるためにはその座標系がstationaryであることが必要条件である,言い換えれば,stationaryな座標系以外では真空は定義できないということがわかる。 |
赤間 啓一 | (埼玉医科大 ) | 「Brane World 上の場の理論」 |
高次元時空でdynamicalにloclizeしたBrane World 上にinduceされる場の理論の特徴について論じる |
一ノ瀬 祥一 | (静岡県立大 ) | 「Fermions in Kaluza-Klein and Randall-Sundrum Theories 」 |
高次元統一モデルの元祖Kaluza-Klein theoryと最近注目のRandall-Sundrum theoryにおける5D Dirac 方程式を対比して吟味する。Chiral property, localization, CP-violation, Weyl anomaly, Chiral anomaly, ...等々4D時空に現れる fermionにまつわる諸性質を明らかにする。 |
田中 貴弘 | (京大基研 ) | 「宇宙論屋から見たブレーンワールド」 (招待講演) |
未着 |
江尻 信司 | (ウェールズ大 ) | 「高温低密度状態におけるQCD相転移の研究」 |
初期宇宙、重イオン衝突実験など、高温低密度状態におけるQCDのカイラル・ 閉じ込め相転移の様相を調べるのに有効な新しい方法を提案する。有限密度系において格子QCDのシミュレーションを直接行うことは不可能なため、物理量を化学ポテンシャルについて0の周りで微分展開し、その展開係数の決定を試みる。本研究において2フレーバーのスタッガード・フェルミオンのシュミレーションを行い、相転移温度の2次の係数までを計算する。さらに、有限密度系の研究を困難なものにしている「符号問題」について言及し、有限密度QCD研究の今後の展望について述べる。(詳細につては「Lattice2001」での発表、hep-lat/0110080を参考にしてください。) |
宗 博人 | (新潟大 ) | 「 Towards the Super Yang-Mills Theory on Lattice」 |
格子上で超Yang-Mills理論の構成の試みをする。フェルミオニックで厳密な対称性を持つことが特徴である。 |
新野 康彦 | (佐賀大 ) | 「θ項を含む格子場の理論」 |
θ項を含むCP^{N-1}模型の解析を行う。系の分配関数を解析する際に生じる複素重率の問題を避けるために、トポロジカル電荷分布関数をフーリエ変換する立場をとる。トポロジカル電荷分布関数を詳細に解析することによってインスタントンの力学に関する理解が進んだ。更に相構造 に言及するために、分布関数から自由エネルギーを得るための新たな方法についても試みる。 |
石橋 真人 | (東大理 ) | 「Lattice Chiral Symmetry and the Wess-Zumino model」 |
格子上の超対称 Wess-Zumino model の Ginsparg-Wilson関係式を満たすDirac演算子を用いた定式化について議論する。1ループレベルでスーパーポテンシャルは繰り込みをうけないことが、格子上でも正確に成立することについて、また、定式化にあたっての様々な問題点について議論する。 |
五十嵐 尤二 | (新潟大 ) | 「Wilson くりこみ群における対称性の実現 」 |
Wilson くりこみ群は、場の理論における非摂動論的アプローチとして有望だが、その定式化において運動量切断を陽に含むため、ゲージ対称性などの対称性の取り扱いが困難であった。我々は、Batalin-Vilkowisky formalismにおけるマスター方程式に立脚して、運動量切断に依存した厳密な有効対称性が、くりこみ群の flow 上で実現できることを示す。(伊藤克美氏、宗博人氏との共同研究) |
山田 敏 |
(名大 ) | 「Perturbative DLCQ Dynamics」 |
We study various issues of perturbative expansion
in discrete light-cone quantization (DLCQ). In particular, we address the
following three problems: (i) Can vacuum diagrams exist on the trivial vacuum of DLCQ? (ii) Does DLCQ S-matrix have a covariant continuum limit? (iii) What is the precise relationship between Feynman rules in conventional DLCQ and those in DLCQ as a light-like limit (L$^3$)? In order to make these problems clear, we develop a systematic DLCQ perturbation in the operator formalism and establish the Feynman rules in scalar field theory. Using the Feynman rules, we show that the non-zero vacuum amplitudes can generally exist, which does not contradict with the trivial vacuum of DLCQ. We also show that even in the continuum limit, the scattering amplitudes do not agree with the covariant ones for processes with $p^+=0$ exchange. This result implies that the role of the zero mode is more subtle than ever considered in DLCQ and hence it must be treated with great care also in non-perturbative approach. Furthermore, we explore the precise relationship between both scattering and vacuum amplitudes in DLCQ and those in L$^3$. We find that the L$^3$ amplitudes completely agree with the DLCQ ones except those having zero-mode loop(s), which are absent in DLCQ. Finally, DLCQ in string theory are discussed. |
坂本 眞人 | (神戸大 ) | 「回転対称性とCPの自発的破れとその回復」 |
球面上の、あるいは球面を余次元として持つ時空上の、場の理論の模型において、回転対称性が自発的に破れる模型を構築し、解析した。球面に背景ゲージ場としてモノポールがあって、これとヒッグス・スカラー場が結合しているとき、球の半径が臨界半径より大きくなると、スカラー場がゼロでない真空期待値をとる。ところがモノポールのトポロジーのために、真空期待値は球面上で定数にならず、球面のところどころにゼロ点を持ってしまう。超伝導のアナロジーで言えば、球の半径が大きくなると、磁束密度が小さくなって、常伝導から超伝導への相転移を起こすが、アブリコソフ渦糸が生ずることに相当する。このゼロ点あるいは渦糸のために、球面の回転対称性がピン止めされるのが、回転対称性の自発的破れのメカニズムである。さらにスカラー場が複数あって、multiplet
を形成している模型では、回転対称性とフレーバー対称性が同時に破れるが、ある種の回転対称性が残るような相が存在することもわかった。こうした模型のアイディア、解析方法、拡張についてお話ししたい。本報告は、神戸大学の松本氏、京都大学の谷村氏との共同研究にもとずく。 (論文へのリンク:http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/hep-th/0105196 http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/hep-th/0108208 ) |
南部 陽一郎 | (シカゴ大 ) | 「Symmetry Breaking by a Chemical Potential」 (招待講演) |
未着 |
高野 健一 | (豊田工大 ) | 「混合量子スピン系と非線形シグマ模型」 |
1種類のスピンからなる1次元量子スピン系が,低エネルギーでは位相項を含む非線形シグマ模型に写像されることは,20年ほど前にハルデインによって示されている.その結果,半整数スピンのときはスピン励起にギャップがなく,整数スピンのときにはスピン・ギャップがあるという結論が導き出されている.では,半整数スピンと整数スピンが混合したときはどうなるのだろうか.ここでは,任意周期を持ち,ほとんど任意の組み合わせの複数種類のスピンが混合している1次元量子スピン系を,一般的に非線形シグマ模型に変換する方法を示す.得られた非線形シグマ模型の位相項からスピン励起がギャップを持つかどうかを判定することができ,これよりパラメータ空間に相図を描くことができる.典型的な相図では,ギャップを持つ相の間に境界としてギャップのない状態が生き残っているという構造になっている.奇数周期の場合と偶数周期の場合の一般的な違いについても述べる. |
細谷 暁夫 |
(東工大 ) | 「Quantum Entropy Bound by Information in Black Hole Spacetime and Information Loss Problem」 |
We show that the increase of the generalized entropy by quantum process outside the horizon of a black hole is more than the Holevo bound of mutual information between a message prepared by an agent located outside the horizon and that received by an observer at infinity. In the optimal case, the prepared information can be completely retrieved by the observer. |
斎藤 弘樹 |
(東工大 ) | 「ボース・アインシュタイン凝縮の最近の進展と今後の展望」(招待講演) |
原子気体をトラップし極低温に冷却することでボース・アインシュタイン凝縮を起こさせる実験が1995年に初めて成功し、現在でも実験及び理論の両面から大変盛んに研究が行われている。本講演ではこの分野の最近の進展と今後の展望をわかりやすく解説する。 |
竹田 晃人 |
(東大宇宙線研 ) | 「ランダムネスの長距離相関とアンダーソン局在」 |
アンダーソン局在の理論によれば、1次元ランダム系では固有状態はモデルの詳細によらず基本的に局在状態となることが知られている。但しこれは無相関ランダムネス(white-noise
disorder)の場合に確かめられている事実であり、また特定の1次元ランダム系においては、系のランダムネスにpower-law型の相関がある場合に は局在しない固有状態が存在する可能性があることが最近の研究から示唆されている。これらを踏まえ、当研究では特に1次元ランダムマスフェルミオンモデルを取り上げ、ランダムネスにpower-law型等の長距離相関がある場合のアンダーソン局在の性質を新たな数値的手法を用いて議論する。 |
前田 展希 |
(北大 ) | 「異方的ホール状態の低エネルギー理論」 |
量子ホール系におけるストライプ状態(異方的ホール状態)の性質をvon Neumann lattice を用いて解析する。ストライプ状態は非可換空間における並進と回転がダイナミカルに破れた状態であり、ゴールドストーン定理からその低エネルギー有効理論を調べることができると思われる。今回の発表ではストライプ状態に対してゴールドストーン定理を適用する際の問題点について議論する予定である。 |
静谷 謙一 |
(京大基研 ) | 「汎関数ボゾン化とその分数量子ホール効果への応用」 |
ゲージ理論の観点から3次元のボゾン化を紹介し、それを用いて分数量子ホール効果の有効理論を導き、分数量子ホール効果の長波長における普遍的な特性などを考察したいと思います。 |
木村 哲士 |
(阪大理 ) | 「Gauge Theoretical Construction of Non-compact Calabi-Yau Manifolds」 |
world-sheetの理論としてストリング理論を考察するとき、その理論は非線形模型として捉えられる。そのとき、そのスカラー場が存在するtarget空間は、world-sheetの共形不変性などから、非自明な多様体として記述される。例えば、world-sheetの共形不変性は、多様体がRicci-flatであることと同義であると様々に認識されているが、高次ループ補正ではこれが当てはまらない可能性も指摘されている。これを追求するため、我々はまずRicci-flatな多様体を構成する。これをtarget空間として持つ理論を研究し、実際に共形不変であることを確かめようというのが狙いである。 この発表では、non-compactなCalabi-Yau多様体(Ricci-flat Kahler多様体)を、ゲージ理論を用いた非線形模型の観点から構成する。ここで構成された多様体には、特異点とそれを解消する機構が自然に導入されている。 |
浜中 真志 | (東大理 ) | 「非可換ソリトンのADHM/Nahm構成法 」 |
非可換ソリトンとは非可換空間上のソリトンのことであり、近年非常に活発に研究されている。非可換空間上の場の理論では特異点の解消が一般に起こり、その結果例えば U(1) インスタントンといった新しい物理的対象が現れる。非可換空間上の場の理論は一様磁場中の物理理論と等価であり、ここで扱っているものは一様磁場中の物理系と解釈できる。 非可換ソリトンの厳密解の2大構成法としてADHM/Nahm構成法と ``Solution Generating Technique''がある。(レヴューとして例えば A、 B がある。) ADHM/Nahm構成法は非常に強力な任意のインスタントン/モノポールの構成法であり、非可換空間でも適用可能である。私は論文 hep-th/0109070において両者の構成法の関係を明らかにした。 ``Solution Generating Technique''では、シフト・オペレーターやモジュライ・パラメータを含む項などが重要な役割を果たす。 (レヴューとして例えば C、 D、 E、 F がある。) 私はこれらがADHM構成法から全て自然に導出されることを示した。また副産物として新しいソリトン:1重周期インスタントン解、2重周期インスタントン解を構成した。さらにその1重周期インスタントン解を周期ゼロの下でFourier変換をし、Yang-Mills-Higgs理論のBPSソリトンを得た。このソリトンはYang-Mills-Higgs理論のBPSソリトンでありながら渦に似た性質を持つ、非可換空間特有のソリトン(フラクソン)であった。モジュライ空間の特異点解消との関わりについても議論を行った。 この講演では、非可換空間上の場の理論とADHM/Nahm構成法の基礎を簡単にレヴューし、私の仕事(の一部)を紹介する。Dブレーンによる解釈も興味深いが、そこには触れずに場の理論の立場で議論を進める。 |
坂井 典佑 | (東工大 ) | 「BPS Walls and Junctions in SUSY Nonlinear Sigma Models 」 |
BPS walls and junctions are studied in
${\cal N}=1$ SUSY nonlinear sigma models in four spacetime dimensions. New BPS junction solutions connecting $N$ discrete vacua are found for nonlinear sigma models with several chiral scalar superfields. A nonlinear sigma model with a single chiral scalar superfield is also found which has a moduli space of the topology of $S^1$ and admits BPS walls and junctions connecting arbitrary points in moduli space. SUSY condition in nonlinear sigma models are classified either as stationary points of superpotential or singularities of the K\"ahler metric in field space. These two types of SUSY vacua are transmuted by the holomorphic field redefinitions. The total number of SUSY vacua is invariantunder holomorphic field redefinitions if we count ``runaway vacua'' also. (hep-th/0108179, to appear in Phys.Rev. ) |
浜田 賢二 | (KEK ) | 「Resummation and Higher-Order Renormalization of 4D Quantum Gravityl 」 |
二次元量子重力の成功は、それ以前の4次元量子重力の定式化に変更を迫るものであった。それは、測度の中のconformal mode依存性、すなわちconformal anomalyが存在することを前提とした理論形式を作らなければ理論が一般座標不変にならない事を意味した。数年前、私はDavid-Distler-Kawai(DDK)のアイデアを4次元に適用して、新しい4次元量子重力理論を提案した。 新しい定式化ではconformal modeは厳密に取り扱いtraceless modeは摂動論で近似した。最近の研究で、次元正則化を使えばD次元と4次元の間に測度の情報が完全に含まれ ていて、conformal mode依存性を”注意深く”扱えば、DDK的仮説を立てなくても明白に一般座標不変で、高次の係数が自動的に決まるよう定式化できることが分かってきた。具体的には、QEDと重力が結合した系を考えた。D次元では、e^2*phi*(F_mn)^2 のような新しい相互作用が誘導される。ここで、phiはconformal mode。測度からの寄与と解釈できるこの相互作用を考慮して、e^6までうまく行っている事を確かめた。講演ではこの話題を話したい。この理論からの予言は最近の力学的単体分割による数値シミュレーションの結果とよく一致している。時間があればこの事にも言及したい。 |
須藤 靖 |
(東大理 ) | 「冷たい暗黒物質モデルの危機? 暗黒物質ハローの密度プロファイル 」(招待講演) |
1996年、CDMモデルで予言される暗黒物質ハローの密度分布が、初期条件や 質量にほとんど無関係に、ある普遍的な関数形に従うという数値シミュ レーションの結果が発表された。この結果と観測との比較を通じて、CDM モデルの欠点を示すのではないかという指摘が大きな話題となっている。 今回は、この話題について最近の数値シミュレーションと観測の現状を 紹介し、その宇宙論的意義を考えてみたい。 |
吉田 健太郎 |
(京大人環 ) | 「Confining Phases of a Compact U(1) Gauge Theory from the Sine-Gordon/Massive Thirring Duality」 |
4次元有限温度コンパクトU(1)ゲージ理論の相構造をトポロジカル模型の摂動変形の方法を用いて解析する.ゲージ理論における相はトポロジカル模型の相構造から決まる.このトポロジカル模型における熱圧力を計算することにより,その相構造を決定した.この計算において,sine-Gordon/massive Thirring双対性が大きな役割を果たす.特に,このシナリオの最大の利点として,臨界線方程式を陽的に評価することができる.また,4次元コンパクトU(1)ゲージ理論の高温領域と3次元ゼロ温度の閉じ込め相との関連についても議論したい. |
板倉 数記 |
(理研 BNL ) | 「Gluon Saturation from Nonlinear Evolution Equation at Small x」 |
非常に小さいBjorken x(考えているハドロンや原子核の全縦運動量に対するpartonの持つ縦運動量の比)まで測れる深非弾性散乱や、重い原子核における高エネルギー散乱の記述は、通常のlinearな発展方程式(BFKL方程式やDLA方程式)では不十分であり、non-linearな発展方程式によって記述されるべきであるという事が最近になって認識されてきている。すなわち、グルーオン分布関数のエネルギーを変えたときの変化を記述する方程式が非線型になる。より物理的に言えば、BFKLやDLAでは高エネルギーに行くにつれソフトなグルーオンのsplittingが起こるため、グルーオン分布関数が小さいxに行くと急激に大きくなるが、グルーオンの数密度が高くなるとグルーオンどうしの融合がおこるようになる。発展方程式中の非線型な項はこの効果を担っている。これによってグルーオンの急激な増加が押さえられ(gluon saturation)、いわゆるunitarity boundの問題を解決すると期待される。このトークでは、この新しいsmall-xの物理の概略とそれをよく記述する有効模型について解説し、実際にグルーオンのsaturationが如何にして生ずるのかを議論する。 |
小出 知威 |
(京大基研 ) | 「カラー超伝導における前駆現象」 |
近年、カラー超伝導の計算が精力的になされているが、そのほとんどがカラー超伝導相内での系の性質についての研究である。しかしながらカラー超伝導相の臨界温度が低いため、カラー超伝導相そのものの地上での実験的検証は困難ある可能性が高い。そこで、我々は臨界温度より高い温度であっても揺らぎによるクーパー対の生成、消滅が起こりうることに注目した。もしこのような揺らぎの存在する温度領域が十分に大きければ、地上での実験によりカラー超伝導の前駆現象を観測することができ、延いてはカラー超伝導相そのものについての知見が得られる可能性がある。この報告でが、QCDの有効模型であるNambu-Jona-Lasinio模型を用いてWigner相でのpair fieldの線形応答を計算し、通常の超伝導と比較して非常に広い温度領域にわたり大きな揺らぎの効果が あること、それに対応してカラー超伝導の前駆的な集団モード(ソフトモード)が存在することを示す。さらに、このようなソフトモードの観測量に与える影響について議論する。また、高温超伝導の可能な前駆現象としての擬ギャップ現象との関連についても言及する。 |
松居 哲生 | (近畿大 ) | 「意識の量子論: マイクロチューブルの場の理論」 |
脳神経間をつなぐシナプスの主な構成要素であるマイクロチューブルに対してハメロフ・ペンローズは意識の量子論を提案した. 彼らによれば量子重力との結合等の効果により,マイクロチューブルの波動関数は一定の規則により客観的自己収縮を繰り返す.引き続く2回の自己収縮の間の平均時間間隔(デコヒーレンス時間と呼ぶ)が意識の一瞬に対応し,自己収縮の連続が意識の流れを作るという.本講演ではマイクロチューブルを記述する場の量子論を提案し,それを用いて行ったデコヒーレンス時 T の計算について報告する.妥当な値T \sim 10^{-3} sec を得るには自己収縮するユニットに含まれる細胞数を170 程度にとればよいと評価される.強相関電子系との類似や性自己収縮の仮定の妥当性についても言及する. |
清水 明 |
(東大総合文化 ) | 「Stability of Macroscopic Quantum States against Local Measurement」 |
昔、線形応答理論が定式化されつつあった頃、高橋秀俊先生は、この理論を量子系に適用することに懐疑的であったという。なぜなら、マクロ系の輸送係数は、系に対して連続測定を行って測るものなのに、線形応答理論では、測定されていない時の時間発展である、ユニタリー時間発展を仮定しているからである。この批判に対する返答は、『マクロ系では、測定の反作用はきっと無視できるのが常識だ』というものだろう。この例に限らず、多自由度量子系の理論では、いつも、暗に、この、『マクロ状態の測定に対する安定性』を仮定している。これは、量子論のどのような構造が、どのような条件下で保証しているのだろうか?この基本的な問いに答えるため、本講演では、まず、有限体積の量子系では、この仮定に反する純粋マクロ状態が存在することを例示する。次に、そのような状態はクラスター性を持たない(従って、測定に対して安定な純粋状態は必ずクラスター性を持つ)ということを、きわめて一般的に示す。そして、強磁性体、メゾスコピック伝導体の非平衡定常状態、ボーズアインシュタイン凝縮系、超伝導体を具体例に、安定・不安定な状態を例示し、相転移や散逸との関係も議論する。 |
岩崎 愛一 |
(二松学舎大 ) | 「2層量子ホール状態におけるジョセフソン効果とマイスナー効果」 |
最近明らかにされた、2層量子ホール系におけるジョセフソン効果を示唆する実験について、磁束のマイスナー効果という観点から考察する。 |