BL─4C 六軸X線回折計用実験ステーション
1.概 要
本ステーションは、精密X線回折・散乱実験を行う専用ステーションである。 HUBER社製5020型の4軸X線回折計が常時設置されている。 本回折計の仕様から、結晶の逆格子空間を広く走査する結晶構造解析的な実験よりは、 温度・圧力・磁場などの外場条件を変えながら、逆格子空間の一部を 高分解能・高精度で測定する構造物性的な実験に適している。
現在、本ステーションでの実験内容の概要を知っていただくために、 いくつかの実験課題を紹介する: 1.遷移金属酸化物の電荷・軌道の秩序状態の研究、 2.スピンパイエルス相転移の外場依存性の研究、 3.フーラレン、ナノチューブの構造と相転移機構の研究、 4.シリコン表面の酸化膜中の結晶相の研究、 5.人工格子又は薄膜の構造的研究、 6.X線磁気散乱によるスピン構造の研究 などである。 多くの研究が、微弱な超格子反射などを外場を変えながら 精密に測定するといったものである。
本ステーションの光学系は、分光を行うモノクロメーターと、集光を行うミラーから成っている。 分光は現在シリコン(111)のフラットな2枚の結晶を使い、 その下流で、Rhをコーティングしたシリコンのシリンドリカルミラーをベント させることによって、縦横同時集光を行っている。
2.性 能
光学系
光源(ベンディングマグネット) +光モニター+四象限スリット
+モノクロメーター+ミラー(各コンポーネントの間に蛍光板モニター)
エネルギー領域
4.66 keV ~ 18 keV
エネルギー分解能
ΔE/E = 3 × 10
-4
ビームサイズ
vertical 0.6 mm × horizontal 0.8 mm
アクセプタンス
vertical 0.2 mrad × horizontal 2 mrad
BL-4Cとしてのビームの取り込みは左右方向に6.5mradあるが、 マスクで左右方向に2mradに整形される。
フォトダイオードで測定したフォトンフラックス(縦軸はphotons/s, 横軸はエネルギー)。8keVにピークを持ち, 14keV以下で10
11
photons/s以上のフラックスが得られる。
3.実験装置
回折計(HUBER社製5020型):
本回折計は通常のものより一回り大きく、 角度設定精度が高い。通常の四軸に加え、散乱X線をアナライザー結晶によって 回折させるための二軸を2θアーム上に備えている。高分解能実験のために、 ω-2θ円は放射光の偏光面に対して垂直な面内に配置されている。χ円はω-2θの 中心軸より63mm離れた、off-centerの位置にあり、クライオスタットなど 試料位置周りに種々の装置を容易に装着できるようになっている。
偏光解析装置:
散乱X線を、入射X線と散乱X線の張る散乱面から 垂直方向に回折させることによって、散乱X線の偏光状態を知ることができる。 本装置はそのために必要なすべての機能を備えている。磁気秩序や軌道秩序からの 回折線の偏光特性を調べることに利用されている。ステーションで用意している 分光結晶は、Ge(111), Graphite(002), Cu(110),Mo(100),Pt(100) である。その他必要な結晶はユーザーが各自用意する。
検出器系:
通常は、入射X線のモニターにはイオンチェンバーを、 散乱X線の検出には主にシリコンドリフト型検出器を用いている。
制御系:
コンピューター:DELL Dimension、OS:Linux、 インターフェース:TCP/IP、制御ソフト:SPEC(CSS社製)によって、 モノクロメーター・ミラー・回折計・架台・検出器系・スリット・ アテニュエーター・温度コントローラーを制御している。 試料設置後は、簡単なマクロを書くことにより、エネルギーや温度などを変化させて、 すべて自動測定を行うことができる。遠隔操作も可能である。
データ解析・転送:
実験中に、制御ソフトSPECに組み込まれた C-PLOTにより簡単な解析は行える。 データはNextcloudを使うことで、どこからでも取り出すことが可能である。
附属装置類:
以下のような附属装置が用意されている: JT型クライオスタット、Heフロー型クライオスタット、電磁石、高温用電気炉。
4.その他
制御ソフトSPECと解析ソフトC-PLOTのマニュアルはステーションに備えてある。 ビームライン・各附属装置などのマニュアルは現在準備中である。
本ステーションの回折計は、
BL-3A
に ある回折計や附属装置と互換性があり、ほぼ同じ条件下で実験を行うことができる。 その違いは、本ステーションの光源はベンディングマグネットであるのに対し、 BL-3Aは挿入光源である点である。従って、 本ビームラインでどうしても光強度不足であるような実験は、そのまま、 BL-3Aで実験を継続することができる。
5.参考文献
H. Iwasaki, S. Sasaki, S. Kishimoto, J. Harada, M. Sakata, Y. Fujii, N. Hamaya, S. Hashimoto, K. Ohshima, and H. Oyanagi: Rev. Sci. Instrum.
60
(1989) 2406-2409.
高エネルギー加速器研究機構
放射光実験施設
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