YAP検出器セットアップマニュアル

検出器の特性

10^6cps程度までの計数が可能(通常使用しているNaIシンチレーション検出器では,リニアリティがあるのは3x10^4cps程度まで)。
X線によって出てくる電気信号がNaI検出器より小さいため,電気ノイズが完全には排除できない。12keVでは10cps程度の電気ノイズが出る。
電気ノイズと信号が分離できなくなるため,10keV未満での使用は実質的に不可能。
広いダイナミックレンジの非共鳴散乱測定を行うには適している。徹底的にバックグラウンドを落としたい場合,あるいは低エネルギーX線を使用する必要がある場合にはお勧めできない。

セットアップ

使用する電気系は,これ。
electronics
水色の楕円で囲ったボードはカウンターボードで,制御PCと直接繋がっている。
赤丸で囲ったところにはYAP用HV,SCA,信号変換機,レートメーターがある。

検出器本体と電気系は,3本の線で繋がっている。
connection
信号線が入った先はSCA(シングルチャンネルアナライザ,パルスハイトアナライザとも言う)である。ここである高さより高いパルスのみを信号として切り分け,カウンターに信号を送る。
このSCAは負のパルス信号を出力するが,これまで使ってきたカウンターボード(水色で囲ったボード)では正のパルスしか扱えないので,信号変換機を用いる。
紫の,コネクターが刺さる穴だらけのユニットが信号変換機である。この上半分の左端にSCAの出力信号を入れ,そのすぐ右隣からカウンターやレートメーターに繋ぐ。ケーブルは足りるはずである。SCAの出力はLLD-out, ULD-outの2つあるが,その意味と使い方は下に述べる。

SCAにはいくつか調整するつまみがある。Manual/CPUのスイッチと,LLD, ULDのつまみである。スイッチは,二つのつまみで調整を行うManualモードと,RS-232C接続を通して調整を行うCPUモードのどちらを用いるかの切り替えに使う。パルスの高さがLLDで指定した高さ以上であればLLD-outから1パルス信号が出力される。パルスの高さがULDで指定した以上であれば,ULD-outから1パルス信号が出力される。この両方をカウンタで取り込み,差を取ればULDとLLDの間の高さの信号を数えることができる。
高調波を気にしないのであれば,ULDの信号は気にしなくても良い。実際,3Aで10keV以上のエネルギーを利用するのであれば,あまり気にする必要は無いであろう。


セットアップパラメタ:
12keVの場合,HV=-800V, LLD=30mV (ダイヤル0.3),ULD=100mV (ダイヤル1.0)から90mV(ダイヤル0.9)程度
高エネルギー加速器研究機構
放射光実験施設
当ステーションのPFスタッフ
yusuke.wakabayashi(at)kek.jp