第14回
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
サイエンスシンポジウム
高校生ポスター発表趣旨
1
2023年の硫黄島沖の噴火に由来する暗褐色軽石の色の違いについて
静岡県立磐田南高等学校
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1
2023年の硫黄島沖の噴火に由来する暗褐色軽石の色の違いについて
静岡県立磐田南高等学校
小笠原諸島の硫黄島沖で2023年10月30日に海底火山が噴火し、火山噴出物を噴出した。特に軽石は暗褐色~やや明るい褐色をしており、2024年5月中旬に静岡県の三保半島や御前崎などの遠州灘から駿河湾の海岸で、硫黄島の軽石に似た暗褐色の軽石が漂着した。本校の過年度研究では、漂着した暗褐色軽石の鉱物組成・全岩化学分析・火山ガラスの屈折率に着目し、これらが硫黄島軽石であることを明らかにした(2024、藤島ら)。しかし、暗褐色軽石の中でも色が異なっており、大きく3種類(コクトウ・ブラック・コゲコクトウ)に分類できる。我々は硫黄島軽石の色の違いに着目することで、軽石の形成過程や噴火のメカニズムの一端でも明らかにできれば、今後の火山活動の予測につながると考え研究を行った。結果、全岩化学組成分析や鉱物組成分析、火山ガラスの化学組成分析から色による大きな違いは確認されず、同一のマグマ由来の軽石であることがわかった。また、みかけ密度に着目すると、より色の濃い軽石ほど密度が大きいことがわかった。これは軽石の発泡度や構造の違いが原因で、これが色の違いに影響していると考えている。
2
水耕栽培におけるAMF共生Ⅴ
静岡県立磐田南高等学校
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水耕栽培におけるAMF共生Ⅴ
静岡県立磐田南高等学校
世界に広く分布するアーバスキュラー菌根菌arbuscular mycorrhizal fungi(以下AMF)は80%もの植物と「土壌」において、AMFからは無機肥料を、植物からは糖類を供給して共生している。我々は「水耕栽培」でAMFを共生させ、肥料を減らした農業に活かせないかを研究している。先行研究において混入物を除去した「土壌」に粉炭を混入すると、炭内部でAMFが増殖しAMF接種源として使用することができた(斎藤雅典 1989)。我々は「水耕栽培」においても炭資材を混入することでAMFの共生が盛んになり、植物の成長が促進されるのではないかと考え研究を行った。結果、活性炭粉末を混入したAMF入りの水耕液で栽培したネギが、活性炭粉末のないAMF入りネギと、 蒸留水で栽培したネギよりも有意に成長した。また、AMF入りの水耕栽培ネギの根からAMFらしい構造が確認された。我々は、AMF胞子は水中では沈殿するが、水中の炭の持つ微細小孔を拠点として菌糸を伸ばし、植物の根に共生しやすくなるではないかと考えている。
3
高層ビルにおける風穴の有用性の検証
お茶の水女子大学附属高等学校
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3
高層ビルにおける風穴の有用性の検証
お茶の水女子大学附属高等学校
⾼層ビルの周辺で発⽣するビル⾵は、都市の⾵害の原因となっている。ビル⾵を抑制する⼀つの⽅法として、⾵⽳がある。しかし、⾵⽳がビルに取り⼊れられているケースは少なく、有⽤性に関しての先⾏研究も少数である。本研究では、模型を用いて⾵の可視化及び⾵洞実験により、ビル⾵抑制効果と集⾵効果という2つの観点で、風穴の設置位置に注⽬して有⽤性を検証した。可視化実験では、ビル正⾯に発⽣する下降流の流れが観測され、ビル風を再現できた。⾵洞実験では、⾵⽳に集⾵効果はないが、風穴を設置することにより地上に影響を与えるビル⾵を最⼤20%程度軽減することができることがわかった。さらに、ビル正⾯の測定では地上に近い位置、ビルの脇の測定では地上より少し上の位置がビル⾵抑制において最適な⾵⽳の設置位置となり、軽減したいビル⾵の状況によって最適な⾵⽳の位置は異なることが⽰された。
4
月の表面のスペクトル解析
國學院大學栃木高等学校
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4
月の表面のスペクトル解析
國學院大學栃木高等学校
月の陸は明るく見え、海は暗く見える。この原因を2つ考えた。1つ目は、月の陸と海では太陽の反射光のスペクトルの波形は異なることである。2つ目は、反射光の輝度に差があることである。現時点での研究の結果、両者のスペクトルの波形には差がなく、輝度のみに差が見られた。これらの原因を追究するため陸と海を構成する岩石の違いに注目した。東京大学宮本研究室より、月の陸と海それぞれの岩石を模したサンプルであるシミュラントをいただき、それらを用いての反射光のスペクトルを調べた。計測には、分光器VEGA、スリットビューア、CMOSモノクロカメラを用いた。その結果、岩石の種類の違いによるスペクトルの波形の差がなく、輝度のみに差が表れた。さらに陸と海の見え方の原因を追究するために地形による違いについても研究中である。
5
AIは人間の行動を予測できるか
國學院大學栃木高等学校
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5
AIは人間の行動を予測できるか
國學院大學栃木高等学校
AIは近年大きく進化し、人間の暮らしにも役立つようになってきています。そこで私は「AIは人間の行動を予測できるのか」という点に着目しました。最近の AIは、入力したデータから将来の結果をある程度推測することが可能ですが、それが人の行動にも当てはまるのかが疑問です。短時間であれば行動の予測が可能かもしれませんが、1日単位となると予測は難しくなるのではないでしょうか。この疑問を検証するため、以下の方法を計画しました。まず、生徒50人にアンケー トを取り、それぞれが実際に過ごした1日を書いてもらいます。 同時にAIに同じ生徒の1日を予測させ、その内容がどの程度一致するかを比較・実験します。AIには今回「ChatGPT」を使用し、出力形式を「1時間ごと」と「6時間ごと」の2パターンに分けます。これにより、AIの予測が時間の粒度によってどのようにずれるのかも検証します。
6
霞ヶ浦の湖水を利用した植物工場の研究
茨城県立玉造工業高等学校
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6
霞ヶ浦の湖水を利用した植物工場の研究
茨城県立玉造工業高等学校
玉造工業高校がある行方市は、茨城県内屈指の農業地帯であるが、農業従事者不足や異常気象、自然災害の増加によって、農作物の安定供給が課題となっている。また、霞ヶ浦に面した地域では、湖水の富栄養化による水質汚染も課題である。私たちは、課題研究で、霞ヶ浦の湖水を液肥として利用した植物工場モデルを製作し、植物工場の有効性と未来について探究している。植物工場は、生産量や品質が天候の影響を受けず、効率的で安定した供給が可能である。また、砂漠や極地といった農業に不向きな環境でも栽培が可能となり、SDGsの達成に期待が高まっている。現在、水耕栽培システムを参考にして、水中ポンプや換気扇、LED照明などをコンピュータで自動制御する植物工場モデルの製作中である。また、植物工場に利用する霞ヶ浦の湖水の水質やチッ素、リン等の成分分析、LED照明による光合成の光スペクトル反応などの生育環境実験を行っている。
7
誘電体多層膜における数値的・解析的手法を用いた電磁気的性質の分析
広尾学園高等学校
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7
誘電体多層膜における数値的・解析的手法を用いた電磁気的性質の分析
広尾学園高等学校
光には干渉や回折、屈折といった様々な性質が存在し、それらは蝶の羽やシャボン玉の表面に見られる構造色に例示されるように、我々に身近な形で現れる。私は光が特定の構造において見せる特殊な振る舞いに興味を惹かれ、本研究を始めた。今回着目したのは、微細加工技術の向上により近年研究が盛んに進められているフォトニック結晶という物質であり、これを用いた電磁波制御によるさまざまな応用法の考案のために、本研究では一次元のフォトニック結晶である光学多層膜の電磁気的性質について、解析的手法と数値的手法の両方を用いて解析を行なった。今回は31層のTiO₂/SiO₂多層膜を対象とし、周期構造により生じるバンドギャップの幅と位置の入射角依存性や、多層膜のサイズに依存する散乱波の様子の変化を求め出した。今後の展望としては、機械学習を用いて求めるバンドギャップを有する多層膜の設計を行いたい。
8
分子動力学から理解する化学反応ダイナミクス
広尾学園高等学校
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8
分子動力学から理解する化学反応ダイナミクス
広尾学園高等学校
反応拡散波とは複数の物質がある条件のもと、反応し合いながら広がるとき、そこに物質の濃淡が発生することでできる波のことである。この波は生物の形や模様を作り出すことで有名だが、周期的な化学反応であるベロウソフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)は、ろ紙や寒天などの反応速度が遅い条件下で反応拡散波が発生することが知られている。そこで私はBZ反応を用いて反応拡散波を解析したいと考えた。BZ反応の反応拡散波を解析するために、実験とともに、まず、BZ反応の基礎的な化学反応式から、BZ反応で用いられる試薬の濃度変化を数値計算によって確かめ、また、BZ反応で使用される試薬である臭化イオンとセリウムイオンの初期濃度を変化させ、振動反応が起こる限界値を求めた。今後の展望として、実験と数値計算を並行して行うとともに、化学反応における数理科学的な側面についての知見を深めていきたい。
9
万有引力下での惑星の運動について ~解析的および数値的見地より
広尾学園高等学校
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9
万有引力下での惑星の運動について ~解析的および数値的見地より
広尾学園高等学校
三体問題とは解を求めることができない問題として有名である。解が求められないとは、任意時刻における天体の位置が初期条件の揺らぎに対する軌道の不安定性に起因して正確に決定することができない、という意味である。三体問題の中でも特に円制限三体問題とは三体のうちの一体の質量が限りなく小さく無視できると仮定し、その他の二体の軌道を円軌道であると仮定したものである。円制限三体問題において特殊解として存在するラグランジュ点は数少ない安定した周期解である。私の最終的な目標はこのラグランジュ点における安定性を実際に数値的および解析的に解くことである。そのためにまず私は万有引力を受ける天体の軌道解析を行いその結果として楕円軌道を描くことを解析的に確認した上で、二体以上の場合における天体の軌跡の数値解析を行った。今後実際にラグランジュ点の安定性について数値解析を行っていきたい。
10
葉緑体全ゲノム解析によるミヤマスミレ節内種間関係の解明
兵庫県立小野高等学校
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10
葉緑体全ゲノム解析によるミヤマスミレ節内種間関係の解明
兵庫県立小野高等学校
日本にはスミレ科スミレ属が約50種分布している。スミレ属は大変形態的によく似ており、分類が難しい。本校スミレ班は代々このスミレ属ついて10年余りにわたって研究してきた。特にこの数年間、スミレ属の中でもより形態的に似ており分類が難しいミヤマスミレ節を対象として、その種間関係と系統進化の解明を目的として研究を行っている。以前は葉緑体DNA、核DNAの一部の領域をPCR法で増幅し、分子系統解析を中心に研究してきたが、現在、日本産スミレ属ではほとんど取り組まれていない葉緑体全ゲノムの解析を中心として核ITS、ETS領域の結果と、生態ニッチモデリングによる生育適地の変遷を推定しこれらの結果も参考として研究している。昨年度はミヤマスミレ節の種のうち、葉が切れ込む種と単葉で葉が切れ込まないヒカゲスミレについて報告した。今年度はその後の研究で新たに明らかになったミヤマスミレ属の種間関係について報告する。
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香りあるクロモジ5分類群の類縁関係の解明
兵庫県立小野高等学校
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11
香りあるクロモジ5分類群の類縁関係の解明
兵庫県立小野高等学校
クロモジ類は、クロモジとその変種オオバクロモジ、ケクロモジとその変種ウスゲクロモジ、それからヒメクロモジの3種2変種の5分類群が知られている。本校のある兵庫県は、これらの5分類群がすべて分布している唯一の県である。この5分類群の種はよく似た形態を持つために識別が難しく、分類学的な取り扱いにしばしば混乱がみられ、進化の過程も明らかにされていない。昨年度は芳香成分で差があること、クロモジ・オオバクロモジは葉緑体DNAのtrnL-F領域、核DNAのITS領域で全国にわたって大変良く似た塩基配列を持つことなどを報告した。今年度は新たに芳香成分、生態ニッチモデリングの再検討と、MIG-seq法を用いた分子系統解析およびストラクチャー解析、葉緑体全ゲノム分析について報告する。これらの結果、クロモジ5分類群は、クロモジ類(クロモジ・オオバ)とケクロモジの仲間(ケ・ウスゲ・ヒメ)に分けられる可能性が高いことが明らかになった。
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分子系統解析と生態ニッチモデリングによるヒメタイコウチの保全
兵庫県立小野高等学校
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12
分子系統解析と生態ニッチモデリングによるヒメタイコウチの保全
兵庫県立小野高等学校
本校のある兵庫県内を中心にヒメタイコウチの生息可能性のある多数の低湿地で分布調査を行った結果、ヒメタイコウチは大変希少で生息地が少なく、かつ、個体数も少なく今まで以上に保護が必要な昆虫であることが分かった。またミトコンドリアDNAの16srRNA領域の分子系統解析結果、播磨のヒメタイコウチはNCBIに登録されている兵庫県、和歌山県のヒメタイコウチと似たタイプの遺伝子を持ち、愛知県,岐阜県のタイプと異なることが判明した。ミトコンドリア全ゲノム分析の結果からは、播磨地方内でも生息地が離れると遺伝子に違いがあることが判明し,生息地ごとに保護する必要性があることがわかった。生態ニッチモデリングの分析によると温暖化が進むと生息地が北上するが、現実的には北上した場合の生息予想適地は標高が高い山脈を越えて移動する必要があり、移動能力に乏しいヒメタイコウチは絶滅する可能性が高くより厳重な保護が必要である。
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微小重力によるがん細胞への影響について
茨城県立つくばサイエンス高等学校
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13
微小重力によるがん細胞への影響について
茨城県立つくばサイエンス高等学校
本研究は、微小重力環境ががん細胞に与える影響を解明することを目的として、昨年度に実施したクリノスタットを用いた微小重力模擬実験を再検証している。この研究は、がん細胞を微小重力環境と静置環境で培養し、細胞数や細胞の形に注目して観察した。前回の実験では培養や測定方法に改善点が見られたため、再現性を見直してやり直しを進めている。今年度は新たなストレス要因として、“振とう”および“周波数刺激”を加えることを計画しており、さらに低周波および高周波を細胞に与える実験も検討している。低周波用には簡易的な自作装置を使用する。これらの複合的なストレス環境におけるがん細胞の応答を解析することで、細胞数や細胞の形態変化を中心に新たな知見を得ることを目指す。最終的には、微小重力や振とう環境ががん細胞に及ぼす影響を細胞の中から明らかにしたい。
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学校施設を拠点とした自給自足型栽培システムの構築に関する研究
茨城県立つくばサイエンス高等学校
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14
学校施設を拠点とした自給自足型栽培システムの構築に関する研究
茨城県立つくばサイエンス高等学校
本研究は、防災拠点としての学校施設に着目し、災害時に食料や水源を確保できる自給自足型栽培システムの導入可能性を検討する。水産養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型農業「アクアポニックス」を基盤とし、再生可能エネルギーおよび空き教室の活用を組み合わせた実証実験を行う。校舎は温度・湿度制御が容易で、害虫や天候の影響を受けにくい特性を有するため、画像処理やLoRa通信を含むIoT技術を導入し、環境データの可視化・管理・自動制御を試みる。また、太陽光発電と小型風力発電をシステムに直結し、LED照明や循環ポンプへの供給を通じて自立型エネルギー利用を検証する。本研究は、学校施設を教育の場にとどめず、地域の防災拠点として再定義する新たな可能性を示唆するものである。
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特定外来生物から茨城の農業を守れ! ~樹木調査ロボット“駆除 徐太郎”の開発~
茨城県立つくばサイエンス高等学校
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15
特定外来生物から茨城の農業を守れ! ~樹木調査ロボット“駆除 徐太郎”の開発~
茨城県立つくばサイエンス高等学校
本研究の目的は、里山や農地に住む特定外来生物の発見や駆除を行うロボットの開発である。対象とする特定外来生物は、「いばらきカミキリみっけ隊」などの企画により、茨城県が駆除に力を入れている「クビアカツヤカミキリ」である。クビアカツヤカミキリは、主にサクラやモモなどに寄生する。よって、公園や里山、果樹園などを点検し、幼虫の痕跡であるフラスや樹上にいる成虫を早期発見することが重要である。これらの場所は、多くが舗装されていないため、雑草や土の凹凸などがあると予想される。また、調査対象が樹木であることから、高所へのアクセスも必要となる。これらを解決するための手段として、「ドローン」が挙げられる。しかし、ドローンはバッテリーの制限から、長時間の運用には向かない。このため、私たちは、大容量のバッテリーを搭載しやすい地上用ロボットとドローンを組み合わせた特定外来生物対策ロボット「駆除 徐太郎」の開発を目指す。
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亜鉛錯体を用いた新しい再生繊維の開発
東京都立日比谷高等学校
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16
亜鉛錯体を用いた新しい再生繊維の開発
東京都立日比谷高等学校
再生繊維の一種である銅アンモニアレーヨンに銅(Ⅱ)錯体が用いられることに興味を持ち、類似する手法で、他の金属錯体に代替した新しい再生繊維を開発することを目指した。その生成手順は、銅イオンを含むシュヴァイツァー試薬に、一度セルロースを溶解してから硫酸を用いて再生するというものである。しかし、行った実験ではセルロースと代替候補の金属錯体溶液が直接的な反応を示さなかったため、塩化亜鉛水溶液を用いてセルロースを粘性のある状態に溶解させる前処理を行ってから使用した。その結果、テトラアンミン亜鉛錯体と反応させることに成功した。シュウ酸を用いて再生を行うと白色の固体が生成し、フェーリング反応を示さないといった性質からセルロースである可能性が示唆された。今度、同定を進めていく予定である。
17
実験とシミュレーションによるBR反応の考察
東京都立日比谷高等学校
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17
実験とシミュレーションによるBR反応の考察
東京都立日比谷高等学校
周期的な色の変化を示すBR反応を攪拌せずに行ったところ、攪拌しながら行ったときと異なり、色の変化が水面付近から起こることに気が付いた。そこで、色の変化が水面付近から起こる要因を探ることを目的として本研究を行った。ひとつずつ条件を変えて反応させ、反応の様子を観察した。混合する3種の溶液のうち最後に加える液を入れる位置、部分的な温度の偏り、使用する3種類の液の密度の差を変化させたときに反応の様子が変化したことから、色の変化が起こる位置は主に、これら3つに影響されると考えられる。また、これらの要因がどの程度影響を与えるのか考察するため、化学反応と物質の拡散による濃度変化のシミュレーションプログラムを作成している。化学反応による濃度変化のシミュレーション結果から、色の変化を示す原因であるヨウ素の濃度変化が確認できた。
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リュウキュウナミウズムシの有性個体と無性個体における行動の違い
東京都立日比谷高等学校
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リュウキュウナミウズムシの有性個体と無性個体における行動の違い
東京都立日比谷高等学校
リュウキュウナミウズムシの有性個体と無性個体の間には、前者は交尾をし、後者は分裂をするという生殖様式の違いがある。この生殖様式と、それに伴う、生殖に必要な個体数の違いにより、両者の間に行動の違いが生じていると仮説を立てた。実験より、有性個体は無性個体に比べ、有意に長い距離を移動することが分かった。また、その違いが、有性個体が体外に分泌する化学物質によるものであることが示唆された。今後は、サンプル数を増やして得られた結果の確実性を高めるとともに、両者の移動距離の違いを生み出す他の要因を考察していきたい。
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隣接した地点間のスズメの逃避行動の違い
東京都立日比谷高等学校
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19
隣接した地点間のスズメの逃避行動の違い
東京都立日比谷高等学校
高校付近の隣接した地点間において、スズメが近づいてくる人から飛翔して離れる行動(逃避行動)をとる距離が異なっていることに気づき、検証した。逃避行動を開始する際の人とスズメの距離を逃避距離として計測したところ、隣り合う地点間でも逃避距離は有意に異なることが分かった。さらに個体の移動のない別の地点でも、逃避距離の傾向が異なることが示された。このことから、各地点の人為的・自然的環境と、スズメの逃避行動との関係を考察した。その結果、類似した環境下では、スズメの逃避距離は似通った傾向を示すことが分かった。今後は、隣接した地点間で個体の移動が行われているのかどうか検証し、逃避行動の違いを生む原因を考察したい。
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散開星団の色等級図の作成 ~デジタルカメラを用いて行う天体の等級測定~
東京都立日比谷高等学校
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20
散開星団の色等級図の作成 ~デジタルカメラを用いて行う天体の等級測定~
東京都立日比谷高等学校
本研究では、通常は高価な機材を用いて作成される、天体の色と明るさの関係を図示したグラフである色等級図を、一般のデジタルカメラなどのより簡単な手段で作成すること、およびその手段で作成した色等級図がどの程度正確なものであるかを調べることを目的としている。研究対象として使用した星団について、一般のデジタルカメラを用いて撮影した画像から作成した色等級図と、既知のデータをもとに作成した色等級図を比較した。これら2つのデータの差異を調べたところ、星団を構成するほとんどの恒星において、等級を測定する際に重要となる基準星との明るさの差と、2つの色等級図上のデータの差異に相関関係がみられた。この相関をもとに撮影画像から作成した色等級図を補正すると、正確な色等級図に近づいた。このことから、一般のデジタルカメラを用いて天体の色等級図の作成を行える可能性が示唆された。
21
炭素棒電気分解中の液性による発生物質の差異
大阪府立千里高等学校
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21
炭素棒電気分解中の液性による発生物質の差異
大阪府立千里高等学校
私たちは炭素棒を両極に用いて電気分解を行うと電解液に黄色物質が発生するという現象について研究を行っており、その黄色物質を酸化グラフェンと考えている。その過程で黄色物質の発生量が液性によって異なることが分かった。それが何故異なっているのか疑問に思ったため、今回は液性による黄色物質の発生量と性質に着目し、その原因を調べる実験を行った。目的を「電気分解時に生じる黄色物質の発生量の液性による影響を調べる」こととして以下の実験を行った。直流電流装置の両極に炭素棒を接続し、電気量を等しくしたうえで、液性を変化させて電気分解を行う。その後、溶液に含まれる黄色物質の量を分光光度計を用いて測定し、性質をアスコルビン酸の酸化還元反応を利用し調べる。現在得られた結果としては、塩基性条件下で電気分解を行った方が、目視での黄色物質の量は多い。今後は結果の数値化を進めていきたい。
22
英単語学習におけるAI生成画像提示の有効性比較研究
神奈川県立厚木高等学校
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22
英単語学習におけるAI生成画像提示の有効性比較研究
神奈川県立厚木高等学校
本研究は、将来的に英単語学習支援アプリへ画像提示機能を組み込む意義を検証することを目的とする。大学受験で扱う語彙数の増加と、画像による記憶定着効果(画像優位性)に着目し、生成AI活用の有効性を明らかにする。具体的には、学習者を二群に分け、一方には単語のみ、もう一方には単語とCopilotにより生成した象徴的な画像を提示し、一定期間後の記憶定着率を比較する。Copilotは難語も含め多様な単語を自動かつ短時間で視覚化でき、従来の市販単語帳の人手作成に比べ低コストで大量生成が可能である点に新規性がある。結果は、画像提示が学習効果に及ぼす影響を定量的に示し、教育現場や個人学習におけるAI活用の有効性検証に資することが期待される。
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重力波測定装置の原理を知る
東京都立科学技術高校
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23
重力波測定装置の原理を知る
東京都立科学技術高校
重力波の観測は、未知なる世界を垣間見ることを可能にするであろうと期待されています。現在、ブラックホールや中性子星などの高密度な天体同士の合体による重力波が検出されています。私は重力波に興味を持ち、ブラックホール同士の合体によって発生する重力波が宇宙に与える影響を明らかにすることを最終的な目標として研究しています。その研究の第一歩として、重力波とは何か、またどのように観測されるのかを理解することから始めようと考え、重力波検出に用いられるマイケルソン干渉計を自作することを試みています。重力波がきたとき人間の目で干渉縞の変化を見るのは難しいため、重力波の代わりに音波や振動などで干渉縞を変化せて、疑似的な重力波の観測を成功させたいと思います。その結果を報告します。
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太陽光照明システムを用いたダクトづくり
東京都立科学技術高校
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24
太陽光照明システムを用いたダクトづくり
東京都立科学技術高校
近年、建物が多く建設される中で身近な都市問題として日照権があげられます。また、飼っている動物に日光浴をさせてあげたいという人がいます。これらを解決することができる太陽光照明システムというものを誰もが手に入れやすくするために、私達は改良する研究をしています。太陽光照明とは太陽光を室内に届け、照明として利用するシステムのことで、オーストラリアで使用されている照明システムを日本式に改良したものです。太陽光照明にはダクト式と光ファイバー式があり、どちらもメリットとデメリットがあります。安価で効率良く太陽光を部屋に届けるために、この2つの形式を組み合わせて作成することを目標としています。アルミを組み合わせた簡易的なダクトにレーザーポインターを当てて照度を測るなどの簡易実験を行い、2つを組み合わせる方法を模索していきます。今後は実験結果をもとに家型模型を作成し、実現に近づけたいです。
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脳波を用いた直感的ユーザーインターフェイスの提案
東京都立科学技術高校
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25
脳波を用いた直感的ユーザーインターフェイスの提案
東京都立科学技術高校
現在、脳波は医療などでの活用が主流であり、ゲームやスマートフォンなどのデバイス操作への応用はあまり多くない。しかし、近年、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、いわゆるBCIといった、脳とコンピューターなどの機器とのインターフェースを実現する技術や装置が開発されている。実際に、医療の現場で、手足が動かせない患者との意思伝達などの用途で利用されているが、一般的なデバイス操作への普及はされていない。原因としては、扱いが難しく、誰でも簡単に扱えるわけではないことなどが挙げられる。そこで、我々は脳波を用いた、簡易的で扱いやすい直感的ユーザーインターフェースを提案する。
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アントシアニン色素を用いたpH試験紙と絵の具の生成と実用化
東京都立科学技術高校
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26
アントシアニン色素を用いたpH試験紙と絵の具の生成と実用化
東京都立科学技術高校
アントシアニンは紫キャベツや紫陽花などに含まれる植物色素であり、酸性条件下では赤色、中性では紫色、塩基性では青色を呈するという特徴をもつ。本研究では、この性質を活かし、身近な材料からpH試験紙と絵の具を作成し、その実用化の可能性を検討することを目的とした。まず、紙漉きの段階でセルロースにアントシアニン溶液を染み込ませる方法を用い、色素を均一に含んだ試験紙の作成を試みた。これにより、酸から塩基に至る幅広いpH領域で色調の変化が明瞭に確認できるかを評価する。また、塩酸エタノール抽出や加熱処理によって得られるアントシアニン溶液を利用し、単一の色素で多様な色を表現できる絵の具の作成にも挑戦する。現在までにpH1~13の緩衝溶液を調製し、アントシアニンを用いた紙漉き実験を行った。今後は抽出条件の検討や着色材としての安定性評価を進め、環境にやさしい天然色素の応用方法を探究していきたい。
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市販のイカ腸内に薬剤耐性菌は存在するか
東京都立大泉高等学校
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27
市販のイカ腸内に薬剤耐性菌は存在するか
東京都立大泉高等学校
近年、抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が問題となっている。耐性菌の拡大は世界中の河川や海洋で発生している。浦野(2010)や林(1985)、森井(2007)らは日本各地で「魚類腸内容物から薬剤耐性菌が検出された」と報告している。魚類腸内から耐性菌が検出されたことから、耐性菌拡大は食品安全や健康に関わる問題である。先行研究では魚類腸内の耐性菌について研究が進んでいるが、甲殻類や軟体動物など魚類以外の海洋生物を対象とした耐性菌の調査はほとんど行われていない。これは、長崎大筒井特任研究員と東京海洋大石田教授から確認を得ている。よって本研究では輸入量が多く、生食としても広く流通しているイカに着目する。市販イカを対象に腸内耐性菌の存在を調べ、身近な食品に耐性菌が含まれているのか食品安全と薬剤汚染の観点から研究を実施。本研究から耐性菌の食品を介した拡散リスクの評価に貢献する知見が得られる可能性がある。
28
ティーバッグからのプラスチック粒子放出抑制に関する研究
東京都立大泉高等学校
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28
ティーバッグからのプラスチック粒子放出抑制に関する研究
東京都立大泉高等学校
近年、プラスチック製ティーバッグから放出されるプラスチック粒子が新たな環境汚染源として注目されている。高温で抽出した場合、1袋あたり数百億個規模の粒子が溶出することが報告されており、生態系への悪影響や人体へのリスクが懸念されている。特に内分泌かく乱作用や腸管細胞への侵入といった有害性が指摘されており、飲用習慣に直結する問題であるにもかかわらず、消費者への認知は十分ではない。本研究では、ティーバッグ使用時におけるプラスチック粒子放出を抑制する条件を検討し、安全性や環境負荷低減を追求した。これにより、日常生活における持続可能な選択肢を提案する。本研究は、身近なティーバッグ使用を通じて、プラスチック問題を考える契機を提供するものである。
29
洗濯による海へのマイクロプラスチック流出を削減するために ―洗濯時のネット重ね使用による繊維くず排出削減効果の検証―
東京都立大泉高等学校
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29
洗濯による海へのマイクロプラスチック流出を削減するために ―洗濯時のネット重ね使用による繊維くず排出削減効果の検証―
東京都立大泉高等学校
近年、海洋プラスチックごみが深刻化し、特に直径5㎜以下のマイクロプラスチックが生態系や人間の健康への影響から問題視されている。マイクロプラスチックの主因の一つが衣類の洗濯によって排出される繊維くずである。昨年度の研究では、一般的な洗濯ネットの使用により繊維くずの排出が抑制されるという結果にいたったが、ある調査によると「一般的な洗濯ネットでは1枚でも2枚重ねても繊維くずの排出を低減する効果は少ない」と報告されており、昨年度の研究結果には誤りが含まれていたことが分かった。しかし、洗濯ネットを2枚以上重ねた場合の効果については検証されておらず未解明の領域である。そこで本研究では、一般的な洗濯ネットを重ねる枚数によって、繊維くずの排出量がどの程度削減されるかを検証し、生活者レベルで実践可能なマイクロプラスチック排出削減方法を提案するものとして期待できる。
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与える飼料と美味しさについて 〜ウズラに含まれるアミノ酸から考える〜
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与える飼料と美味しさについて 〜ウズラに含まれるアミノ酸から考える〜
東京都立大泉高等学校
近年、食品に対して、おいしさや健康機能などの機能性がより求められている。これは食肉においても例外ではなく、国内外で活発に研究が進められている。従来から、食肉は優れたたんぱく質供給源であり、ヒトの寿命にも影響するとされてきた。食肉の際に示される感覚は、味、触感、香り等が複合し、複雑であり、そこにはたんぱく質、拡散関連物質、脂質などの仏雑な要因が影響するとある。Nishimuraらは、アミノ酸、核酸関連物質等の網羅的な検討から、遊離Glu及びイノシン酸(IMP)が主として食肉の味に影響することを報告した。飼料の種類により味がどう変化するのを確認するため、このような実験を行う。生後13カ月の二ホンウズラと生後2カ月の二ホンウズラに市販のウズラ用の飼料を同じ量を与える。また、もう一匹のニホンウズラには大豆を多く含んだタンパク質が多めの飼料を与える。もう一匹のニホンウズラにナッツ類を多く含んだ脂肪分が多めの飼料を与える。この4匹の筋肉に含まれるアミノ酸の量を比べることで、飼料によるアミノ酸の量、つまりおいしさを測ることを狙いとする。
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海水pHとマイコスポリン様アミノ酸の抽出効率に関係はあるか? ーサンゴの白化解決への応用
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海水pHとマイコスポリン様アミノ酸の抽出効率に関係はあるか? ーサンゴの白化解決への応用
東京都立大泉高等学校
近年、サンゴの白化現象が問題になっている。その原因の一つとして、多くの日焼け止め剤に含まれるオキシベンゾンという紫外線吸収剤が挙げられる。オキシベンゾンはサンゴの細胞やサンゴと共生する褐虫藻に悪影響を及ぼし、サンゴを白化させる。そのため紫外線吸収剤の代わりとなり、天然由来の紫外線防御物質であるマイコスポリン様アミノ酸(以下MAAs)が注目されている。MAAsは紅藻などに含まれるアミノ酸であり、自然由来であるため海への悪影響がない。だが水溶性が高いため抽出が難しく、現時点で大量生産はできていない。本研究では、海水のpHがMAAsの抽出量に影響を与えるかを調べる。紅藻を異なるpH条件で処理し、抽出量を測定することで、最も抽出効率の高いpH条件を明らかにする。そしてMAAsを利用した日焼け止め剤のコスト削減や、それによりMAAsを用いた日焼け止め剤が一般に普及することを目的とする。