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第14回
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
サイエンスシンポジウム
研究者ポスター発表趣旨
1
ひもの絡み合いを見る数学 ―『カタチ』の数理と新素材への挑戦―
東北大学:材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
阪田 直樹
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1
ひもの絡み合いを見る数学 ―『カタチ』の数理と新素材への挑戦―
東北大学:材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
阪田 直樹
カバンの中でイヤホンが絡まって、ほどくのに苦労した経験はありませんか。数学の一分野「位相幾何学(トポロジー)」では、"ひも"の絡み合いが持つ性質も研究対象です。そこでは特に、ひもの両端をつないだ「輪」を対象とすることで、絡み合いの本質を調べています。さて、この「輪の絡み合い」は、最先端の材料科学にも応用が期待されています。近年、「輪」の形をした多数の高分子が、互いに動けないほど複雑に貫入し合うことで固体(ガラス)のようになる「トポロジカル・ガラス」の概念が提唱されています。この現象の鍵を握ると予想されているのが、「タイト・スレッディング(tight threading)」という特殊な貫入状態です。本発表では、コンピュータ・シミュレーションにおける高分子の絡み合いがこの状態に相当するかどうかを、数学の理論を用いて判定する手法を紹介します。
2
宇宙を解き明かすミリ波の眼:宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための精密偏光計をつくる
東京大学:カブリ数物連携宇宙研究機構(WPI-Kavli IPMU)
秋澤 涼介
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2
宇宙を解き明かすミリ波の眼:宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための精密偏光計をつくる
東京大学:カブリ数物連携宇宙研究機構(WPI-Kavli IPMU)
秋澤 涼介
宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンによる宇宙の始まりから、約38万年後における観測可能な最古の光であり、電磁波として強度と偏光を持つ。この偏光を測って特定のパターンを見つけると、初期宇宙に空間がごく短時間で膨張したという仮説である「インフレーション」の実験的な証拠となるが未発見である。その課題として、期待する偏光成分は強度成分に対して約1億倍小さいことがある。この偏光の観測には高感度な検出器が必要だが、観測する信号には装置由来の誤差や天の川銀河の放射がノイズとして重畳する。これを解決するカギとして0.1Kで動作する「超伝導検出器」や、回転する光学素子を通して入射偏光を変調し信号とノイズを分離する「偏光変調器」を組み合わせた「偏光計」を開発している。ポスターではミリ波で観る初期宇宙の物理と、超伝導や低温実験、レーザー加工、ミリ波光学測定を総動員した偏光計開発の最前線を紹介する。
3
分子集合体で挑む人工光合成とカーボンニュートラル
京都大学:物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)
田部 博康
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3
分子集合体で挑む人工光合成とカーボンニュートラル
京都大学:物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)
田部 博康
身の回りの化学現象は、教科書で学ぶものよりもずっと複雑です。例えば光合成は二酸化炭素(CO2)と水から炭水化物と酸素を生み出す一見単純な反応ですが、巨大分子が集まった「分子集合体」がいくつも介在して進みます。私は分子集合体が有するナノ~メゾサイズの空間、反応を促進する成分(触媒)に興味を持ち、有機化学と無機化学の間にある錯体化学(高校化学で習う”錯イオン”)をもとに、未来の社会で求められる人工光合成やカーボンニュートラルに挑戦しています。また分子集合体、メゾサイズの空間は、私が所属する京都大学WPI-iCeMS(アイセムス)全体の研究対象でもあります。iCeMS全体の最新知見や将来に向けた目標もお話しする予定です。
4
樹状細胞の生存制御機構の解明に向けて
大阪大学:免疫学フロンティア研究センター(WPI-IFReC)
小森 里美
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4
樹状細胞の生存制御機構の解明に向けて
大阪大学:免疫学フロンティア研究センター(WPI-IFReC)
小森 里美
樹状細胞は、生体が病原体などに反応して免疫応答を誘導する上で司令塔として重要な役割を担う免疫細胞である。中でも、T細胞やB細胞といった獲得免疫細胞の活性化に関与する樹状細胞は古典的樹状細胞と呼ばれており、その寿命はおよそ1週間と非常に短いことが知られている。樹状細胞の生存制御は体内の恒常性を正常に制御する上で重要であり、厳密に調節されていると考えられているものの、その分子機序は未だ十分に明らかになっていない。本研究では、網羅的な遺伝子発現解析などの手法を用いて樹状細胞の生存制御機構の一端を明らかにすることを目的としており、その手法や結果について紹介したい。
5
液体が全くくっつかない容器!?霧を粉のように操る!?表面ナノテクノロジー
物質・材料研究機構:国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)
天神林 瑞樹
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5
液体が全くくっつかない容器!?霧を粉のように操る!?表面ナノテクノロジー
物質・材料研究機構:国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)
天神林 瑞樹
ドレッシングの容器から中身を出すと、内側に液体がくっついて最後まで使い切れないことがあります。この問題を解決するため、容器の内壁にナノ材料をコーティングする技術が開発されました。これにより、液体がまったくくっつかない容器が実現し、食品ロスを減らせます。これまでは水をはじく表面はありましたが、油や溶剤、霧のような小さな液滴を防ぐ表面は難しい課題でした。さらに、多くの場合、環境負荷が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)が使われてきました。今回、私たちはフッ素化合物を使わずに、水・油・溶剤をはじく新しいコーティング剤を開発しました。また、霧のような小さな液滴を付着させず自由に動かす技術も紹介します。この技術で液体の不便さを解消し、食品ロス削減や幅広い用途への応用が期待されます。
6
AI技術を活用した最先端燃料電池材料の加速的開発
九州大学:カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(WPI-I²CNER)
兵頭 潤次
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6
AI技術を活用した最先端燃料電池材料の加速的開発
九州大学:カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(WPI-I²CNER)
兵頭 潤次
水素を燃料として電気エネルギーを取り出す燃料電池は、2050年のカーボンニュートラルを実現する鍵です。固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、エネファームType-Sに搭載され実用化されましたが、その価格は高く広く普及していません。その価格低下の鍵とされるのは、SOFCの動作温度です。現在の800℃の動作温度を300℃まで低減できれば、耐熱プラスチック利用により大幅なコストダウンが期待されます。しかし、今までの燃料電池開発のスピード感では、残り25年という短期間で300℃動作の燃料電池開発を達成できそうにありません。それは、開発のボトルネックとなっているのが、時間がかかるとされている材料開発にあるからです。本発表では、我々が取り組んでいる人工知能(AI)技術を燃料電池材料開発に利用し、新材料発見を加速させる取り組みを紹介します。人工知能(AI)技術の材料開発利用の実例を知り、どのように2050年のカーボンニュートラル実現を目指すかを議論します。
7
新しい心理療法のかたち:AIカウンセラーの開発と社会への広がり
筑波大学:国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
野間 紘久
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7
新しい心理療法のかたち:AIカウンセラーの開発と社会への広がり
筑波大学:国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
野間 紘久
日本では3人に1人が眠れない悩みを持つと言われていますが、その支援ができるセラピストは限られています。そこで私たちは、新しい心理療法の形として「AIセラピスト」の開発を進めています。本研究では、心理療法の知見や会話データを基に、解決策だけを提示しがちな従来の対話AIよりも適切に共感や興味を持って応答できる仕組みを構築し、AIセラピストを開発しました。また、こうしたAIセラピストが広がることは、利便性や支援を届けられる方の増加が期待される一方で、「人とAIの役割分担」や「安心して利用できる仕組みづくり」といった倫理的・法的・社会的な課題(ELSI)が生じることも考えられます。本発表では、AIカウンセラーの開発方法や仕組みを紹介しながら、参加者の皆さんに未来の心理支援の可能性を考えていただく機会としたいと思います。
8
第二のペプチド合成系: 非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)の進化
東京科学大学:地球生命研究所(WPI-ELSI)
阿部 レイ
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8
第二のペプチド合成系: 非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)の進化
東京科学大学:地球生命研究所(WPI-ELSI)
阿部 レイ
ポリペプチドは通常リボソームを用いて合成されるが、自然界にはリボソームを用いずにペプチドを合成できるNRPS(非リボソームペプチド合成酵素, non-ribosomal peptide synthetase)という酵素がある。NRPSは、複数のモジュールが組み合わさって構成されており、各モジュールが1つずつアミノ酸を認識して、ペプチド合成に取り込む。この地球生命の"第二のペプチド合成系"とも言えるNRPSによるペプチド合成がどのように生まれ、どのように進化してきたかはまだ謎のままである。本発表では、NRPSの進化におけるこれまでの知見を振り返るとともに、発表者が行ったアーキアのNRPSの網羅的探索とNRPSの進化的道筋を推測した系統解析の結果を紹介する。
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昆虫の生物機能を用いた機能性ナノカーボンの創製
名古屋大学:トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)
宇佐見 享嗣
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9
昆虫の生物機能を用いた機能性ナノカーボンの創製
名古屋大学:トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)
宇佐見 享嗣
従来の有機合成やin vitro酵素アプローチでは合成が困難な機能性分子や材料は未だ多く、生物が持つ複雑な生体反応の活用が解決の糸口である可能性を秘めている。特に、昆虫が発達させた合理的な異物代謝システムは、新たな機能性有機材料の創出への応用が期待できる。しかし、これら生物機能は有機合成化学とは一線を画す分野として生合成や異物代謝分野で独自に発展・進化してきた。そのため、生物機能を用いた非天然由来分子の合成や変換は極めて野心的かつクレイジーなテーマであることから、積極的な利用が立ち遅れていた。本研究では、ハスモンヨトウ幼虫の生体触媒としての潜在能力に着目し、昆虫個体の異物代謝能力を直接利用した“昆虫内合成 (in-insect synthesis)”を開発することで、我が国が世界トップレベルの研究領域であるナノカーボンを用いた機能性分子を創製したので報告する。
10
ロボットの多様な動作を学ぶAI ― 多目的モデルベース強化学習
東京大学:ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
久保 顕大
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10
ロボットの多様な動作を学ぶAI ― 多目的モデルベース強化学習
東京大学:ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
久保 顕大
AIが環境との相互作用を通して最適な行動を学習する仕組みを「強化学習」と呼ぶ。例えばロボットが物を運ぶ際、速さと省エネの両方を同時に満たしたい場面がある。このように複数の評価基準を同時に考える課題は「多目的最適化問題」と呼ばれるが、望ましいバランスは事前に決められないことが多いため、多様な基準に応じて学習する必要がある。本研究では、環境の動きをニューラルネットワークでモデル化し、実際に試行する代わりにモデルによる予測を用いて効率的に学習する「モデルベース強化学習」を応用した。その結果、多様な動作を少ない試行で獲得できる手法を提案した。シミュレーション上の動物型ロボットなど複雑な力学系システムの制御ベンチマークで有効性を確認し、将来のロボット制御の高度化に貢献できる可能性を示した。
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生きた細胞表面の原子間力顕微鏡(AFM)観察
金沢大学:ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)
沢田 健太
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生きた細胞表面の原子間力顕微鏡(AFM)観察
金沢大学:ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)
沢田 健太
生物は細胞からできているため、生命現象を理解するには細胞を観る必要があります。特に細胞の表面には細胞膜タンパク質という、わずか10ナノメートルほどの大きさの分子が存在し、細胞の働きをコントロールしています。膜タンパク質は、がんを含む疾患にも関わっていることが知られており、創薬や医学分野において多くの研究が行われています。しかし、生きた細胞の膜タンパク質を分子レベルで観察することは、未だ達成されていません。これらを観る可能性を持つのが原子間力顕微鏡(AFM)です。AFM観察技術の開発が進むことで、がんなどによって生じる細胞表面の変化を詳細に知ることができ、それらのメカニズム解明や治療法の改善につながることが期待されます。本発表では、膜タンパク質による細胞表面の構造変化をAFMで観察した結果や、膜タンパク質を分子レベルで観察するために行っているAFM観察技術の開発について紹介します。
12
機械学習で加速する反応経路ネットワークの探索
北海道大学:化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)
大城 海
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12
機械学習で加速する反応経路ネットワークの探索
北海道大学:化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)
大城 海
従来の反応開発は膨大な試行錯誤を要し、完成までに長い年月がかかることがあります。WPI-ICReDD はエネルギーや環境問題の解決を加速するため、計算・実験・情報科学を統合し、効率的に新たな反応を創出するための研究に取り組んでいます。鍵となるのは、分子が化学反応を通じてどのような分子へと変換されるのかを計算で予測することです。しかし、反応の順序や分子同士の配向などを網羅的に調べようとすると、従来の量子化学計算では莫大な計算資源が必要となります。その代わりとして、近年注目を集める機械学習の技術を取り入れることで、化学反応によって結びついた分子同士の繋がりを表す「反応経路ネットワーク」を従来よりも高速に探索することが可能になりました。これによって得られた広大な「反応経路ネットワーク」を調査し、どこで反応が進みやすいか/止まりやすいかを突き止めることで、新たな反応を設計することが可能になります。
13
脊髄損傷後の運動回復に関わる神経経路の多階層的可塑性
京都大学:ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)
上野 里子
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13
脊髄損傷後の運動回復に関わる神経経路の多階層的可塑性
京都大学:ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)
上野 里子
大脳の運動野とよばれる領域の神経細胞は、軸索を脊髄に投射して骨格筋を支配する運動ニューロンを制御する。一方で運動野は、大脳基底核とよばれる領域や小脳とループ回路を形成し、運動を調節する。こうした神経機構によって私たちは手足を滑らかに動かすことができるが、脊髄損傷などで神経が傷害されると運動障害が生じる。私たちは、片側の前肢に重篤な運動障害が生じる脊髄損傷サルモデルを用いて、運動回復に関わる神経機構を調べた。損傷後、運動野に電気刺激を与えて手の動きの回復が促進されたサルでは、損傷部の脊髄内以外にも運動調節に関わる大脳基底核ループや小脳ループに関連する脳領域、さらに軸索が左右に交叉する延髄の領域において、本来の投射先の反対側に投射される軸索が増えていた。このように、脳から脊髄まで中枢神経の多階層にわたって神経経路が再編成されており、反対側の運動野も含めた運動回復の基盤になっていると考えられる。
14
ダイヤモンドを用いた量子センシングと新粒子探索
高エネルギー加速器研究機構:量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)
梅本 篤宏
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14
ダイヤモンドを用いた量子センシングと新粒子探索
高エネルギー加速器研究機構:量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)
梅本 篤宏
ダイヤモンドは古来より「宝石の王様」として確固たる地位を築いてきたが、現在ではその活躍の場を宝飾の領域にとどめることなく、先端的な研究分野へと広げている。これは、ダイヤモンドが極めて希少な物性を有しているためであり、その特性を生かすことで唯一無二の応用が期待される。近年、ダイヤモンド中の不純物欠陥である窒素空孔中心が、量子的に離散した2つのエネルギー準位を持つ量子ビットとして機能することが明らかになり、この分野の研究は一層加速した。量子力学特有の状態は、外場に対して極めて脆弱であるが故、その特性を積極的に利用することで、従来技術では到達困難な高感度なセンサとしての実用化が可能である。我々は、このダイヤモンド量子センサを用いた新粒子探索を推進している。素粒子標準理論を超えた新しい物理を目指すわれわれの取り組みについて報告する。
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患者由来およびバーコード付きiPS細胞の樹立と活用
大阪大学:ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)
松本 さおり
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患者由来およびバーコード付きiPS細胞の樹立と活用
大阪大学:ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)
松本 さおり
大阪大学WPI-PRIMeでは、「ヒューマン・メタバース疾患学」という新たな学術領域を創設し、個人ごとに異なる病態の発症プロセスを統合的に理解する研究を推進している。本拠点では、肝疾患、肥満、認知症、網膜・視神経変性、心不全、変形性関節症など、多様な疾患を対象とし、個別化予防法や根治療法の開発を目指す。本プロジェクトにおいてiPSC Core Facilityは、基盤技術の中核を担い、患者由来の血液からiPS細胞を樹立・培養し、再生医療や疾患モデルの研究リソースとして各研究室に提供している。さらに、近年注目されているバーコード技術を用いたiPS細胞の開発に取り組んでおり、これは1細胞ごとの系譜追跡や分化能の評価を可能にする革新的なアプローチである。バーコード情報の活用は、より効率的な分化誘導を可能とし、また、将来的な臨床応用における品質管理への貢献も期待されている。
16
持続可能性に寄与する平面分子の分子結晶中に現れる潜在的空孔を利用した選択的分子吸着
広島大学:持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点(WPI-SKCM2)
小野 雄大
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16
持続可能性に寄与する平面分子の分子結晶中に現れる潜在的空孔を利用した選択的分子吸着
広島大学:持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点(WPI-SKCM2)
小野 雄大
空隙を有する有機結晶は分子の選択的吸着や分離への応用が期待され、盛んに研究されてきた。発表者の所属研究室では、平面分子トリス(フェニルイソオキサゾリル)ベンゼン誘導体が分子間相互作用を駆動力に溶液中で自己集合し、超分子ポリマーを形成することを報告している。本研究では、側鎖にメトキシ基を導入して結晶性を高めた誘導体1を設計・合成し、その分子結晶中に選択的分子吸着に利用できる潜在的空孔が存在することを見出した。合成した1を真空下60 °Cで3時間加熱すると、溶媒を含まない二つの結晶相1αと1βが得られた。これらの粉末を用いた吸着実験の結果、シス/トランス-デカリン混合物からシス体を高い選択性で吸着することが確認され、繰り返し利用も可能であった。本成果は、平面分子の分子結晶中に現れる潜在的空孔を活用した持続可能な分子分離の新しい可能性を示す。
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C1qファミリー分子によるCNSおよびPNSにおけるシナプス形成機構の解明と応用展望
慶應義塾大学:ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)
松田 恵子
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17
C1qファミリー分子によるCNSおよびPNSにおけるシナプス形成機構の解明と応用展望
慶應義塾大学:ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)
松田 恵子
シナプスは、神経細胞同士あるいは神経細胞と標的器官を結び、情報伝達を担う「つなぎ目」として脳・神経系の基本単位を構成する。その信号伝達のあり方は、感覚や運動、記憶にとどまらず、思考や情動といった高次機能の基盤をなす。近年、シナプス形成機構を理解し調節することは、神経疾患の治療、損傷からの機能回復、さらには新たな感覚機能の付与といった応用の可能性を拓くものとして注目されている。中枢神経系(CNS)においては、シナプス形成に関与する分子機構が数多く明らかにされてきたが、末梢神経系(PNS)においては依然として不明な点が多く、特に経路特異性や感覚モダリティの決定機構は大きな謎として残されている。私はCNSで得られた知見、特にC1qファミリー分子のシナプス形成における役割に着目して研究を進めてきた。本発表では、CNSおよびPNSにおけるC1qメンバーの機能に関する最近の成果を紹介し、さらにその理解が神経疾患治療、損傷後の機能回復、学習能力の拡張など将来的応用につながる可能性について展望したい。
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Ocean Memoryの形成と経年変動:海洋観測技術の発展が示す新たな知見
東北大学・海洋研究開発機構:変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
上山 竜輝
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18
Ocean Memoryの形成と経年変動:海洋観測技術の発展が示す新たな知見
東北大学・海洋研究開発機構:変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
上山 竜輝
2000年以降Argoフロートの普及により海洋内部の物理特性を広範囲かつ詳細に把握することが可能となった。2000年以前は船舶観測やモデル研究から、混合層の発達に伴い形成される「モード水」が各地で存在することが示されている。混合層形成過程では大気や混合層の底部から熱や化学物質が混合層に取り込まれ、形成されたモード水はこれらの情報を保持したまま海洋内部へ輸送されるため「Ocean memory」と呼ばれる。モード水の形成には大気・海洋の変動に強く影響され、経年変動を有することが明らかになりつつある。本研究では、2000年以降から蓄積されたArgoデータから作成された格子化データを用いて、日本周辺に形成されるモード水の一つである「北太平洋中央モード水」の経年変動とその大気・海洋変動との関係を解析した。