電池で動く大電流電源

ふつうの家庭用電力は合計30Aに上限値が設定されています。加速器の超伝導磁石ではこれよりはるかに大きな電流が使われています。何千アンペアもの電流を供給するには大がかりな電源設備が要るとされてきました。これは開発研究を行うための難問です。しかし、電力と云うのは電流と電圧の積ですから、電圧さえ小さく取れば大電流でも必ずしも大電力にはならないのです。1ボルトなら2000アンペアでも電池で運転出来るはずです。
原理的には簡単なことで左の図のように1対100のトランスを作れば電流を 100倍にすることが出来ます。しかし、現実には2000Aを流す電線は極 めて太いものとなり、何回も巻くことは出来ずに一回巻のコイルにするしかありません。 1回巻きのコイルと云うのはただの配線と見分けがつかない様なものになります。 通常の感覚でトランスを作ったのでは1次側で作った磁束が逃げてしまい、 2次側は自分の作った磁束を拾ってしまいます。漏れ磁場と自己インダクタンス がこのような回路を全く非現実的なものにしてしまうのです。 第一、通常整流器が何ボルトかの 電圧損失を持っていますから、1ボルト出力の電源装置では整流損失が大きい 極めて効率の悪い電源になってしまいます。このため、低電圧の電源といえど も数ボルト以上で あることは常識であったわけです。

我々が考えたのは、出力の電流バスをコイルの一部として使い、 部品を立体的に 配置して漏れ磁場がなく、自己インダクタンスが小さくなるような配置です。 そのため、電流パスがお互いに貫通するトポロジーとなりましたが、これは 機械加工で可能です。 1次コイルと2次コイルの隙間をなくすためには丸みをおびない四角いコイルが必要ですが、四角い銅ブロックからコイルを切り出すことに成功しましたのでこの問題もクリア出来ました。要は回路を配線と考えず幾何学的な立体として考えることです。

整流器は近年ショットキーダイオードが大電流で使えるようになった事に着目 します。ショットキーダイオードは従来の整流器に 較べて電圧降下がとても小さいのです。このようなダイオードの電流容量は ほとんど発熱による熱破壊で決まります。 図に示すように、しっかりと水冷してやれば定格の二倍、500アンペアでも 壊れないで使うことが出来ることもわかりました。 1次側はIGBTを使って、20kHzでドライブします。水冷のバスバーに部品をはりつけて冷却しますからコンパクトな出来 上がりになります。バスバーを冷却板としても使うのです。

transcoil

低電圧大電流の回路をアピールする応用として、電池で動く2000A電源を まとめてみました。カーバッテリー10個を使って2000アンペアで1時間 以上の通電が出来ました。パンケーキ型の超伝導磁石を励磁して実用的な運転 も確認しています。2000Aの大電流が電池から取り出せると云うのは意外 性があってなかなか面白いと思います。 今後この方式で1万アンペア、さらに 10万アンペアの電源を開発していく予定です。従来の方式の電源装置に比べ てコストも大きさも十分の一になることができます。 開発予算さえあればすぐに実用化するのですがねえ。


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