真空中の電磁気学ーEB対応・EH対応

まず真空中のMaxwell方程式についてまとめる。

電場 $\boldsymbol{E}$

クーロンの法則(電荷同士に働く力の法則)から出発する。 $$ F = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \frac{qq'}{R^2} $$ 力[N], 距離 [m]を使う。電荷[C]の定義は、R=1[m],q=q'=1[C]としたときに、 $$ F = \frac{c^2}{10^7} [N] $$ なるように決める。 電荷に働く力が、$F=qE$になるように電場[N/C]=[Nm/Cm]=[V/m]を定める。 [J]=[Nm]. これを微分形に書き直して $$ \mathrm{div} \boldsymbol{E} = \rho/\varepsilon_0 $$ である。これはガウスの法則で、電荷と電場の関係である。

磁場 $\boldsymbol{H}$ と、磁束密度 $\boldsymbol{B}$

磁荷同士に働く力は、磁場のクーロンの法則によって求められる。 真空中では磁荷は存在しないことになっているので結局0となるが、 ひとまず磁荷が存在するとしてすすめる。 $$ F = \frac{1}{4\pi\mu_0} \frac{q_mq_m'}{R^2} $$

--- EB対応 ---
トリッキーだが、$F=Q_m B$ として磁束密度$B$を 定義することにしてもよいが、 磁場のクーロンの法則から磁束密度$B$が決まると 思わないほうがよい。磁性体の中では、 Bはこの法則と違う振る舞いをする。 (後述のように 磁荷の単位が異なるのでわざと文字をかえた。) 磁荷が磁束密度から受ける力を計算する方法 として、この磁場のクーロンの法則は使用できる。
--- EH対応 ---
ここで、$F=q_m H$として磁場を定義する。


微分形の法則は以下のようになる。

--- EB対応 ---
磁束密度$B$は、ビオ・サバールの法則から出発して電流から決まる。 そこから、二つの微分形の法則がでてくる。 $$ \mathrm{div} B = 0, \\ \mathrm{rot} B = \mu_0 j $$ 二式めは、変動場では拡張される。
--- EH対応 ---
磁場$H$は、前述の磁荷から作られる分と、電流から作られる分がある。 電流から作られる分は、ビオ・サバールの法則によって計算される。 $$ \mathrm{div} H = \rho_m/\mu_0 (=0), \\ \mathrm{rot} H = j $$ 真空中に磁荷が存在しないので 0.

EB対応EH対応でも、$\boldsymbol{HB}\mu$の次元は同じになるようにする。 そうすると、 磁荷の単位にしわよせがきて、EH-EB対応で単位が異なる。

--- EB対応 ---
(まずEH対応から読んだ方がわかりよい。) $F=q_m H = (q_m/\mu_0) \mu_0 H = (q_m/\mu_0) B$ であるから、磁荷の単位が$(q_m/\mu_0)$である。 磁束密度B=[Wb/m2]であるから、磁荷の単位は[Nm2/Wb]=[Am]。
--- EH対応 ---
磁荷の単位はWbである。したがって$F=q_m H$となるように磁場を 定めると、H=[N/Wb]である。これはあとわかるように、 H=[A/m]ともかける。

--- EB対応 ---
磁束密度Bは、アンペールの法則を満たす。 $$ \mathrm{rot} B = \mu_0 j $$ 時間変動があるばあいは、マックスウェル・アンペールの法則を満たす。 $$ \mathrm{rot} B/\mu_0 = j + \varepsilon_0 \frac{\partial}{\partial t} \mathrm{div} \boldsymbol{E} $$
--- EH対応 ---
磁場には、磁荷がつくる磁場$H_m$と電流が作る磁場$H_c$が存在する。 アンペールの法則は、 $$ \mathrm{rot} H_c = j $$ $$ \mathrm{rot} H_m = 0 $$ である。実際にはこれを足し算して、 $$ \mathrm{rot} H = j $$ を使う。 変動する場の場合は、マックスウェル・アンペールの法則を使う。 $$ \mathrm{rot} H = j + \varepsilon_0 \frac{\partial}{\partial t} \mathrm{div} \boldsymbol{E} $$

また、ローレンツ力は電荷、電流が電場・磁束密度から受ける力を定める。 磁束密度の単位はローレンツ力から分かる。 $$ F=\int \boldsymbol{j}\times \boldsymbol{B} d^3x $$ F[N],j[A/m2],d3x[m3]を使ってBの単位は[N/Am]=[Wb/m2]とウェーバーを定義する。 1[T] = [Wb/m2]である。

--- EB対応 ---
$$ rot E = - \frac{\partial B}{\partial t} $$
--- EH対応 ---
$$ rot E = - \frac{\partial B}{\partial t} $$ とする。これもBで書いているところが変則的な感じがするが、 これでいく。 素直に考えると $$ rot E = - \mu_0 \frac{\partial H}{\partial t} $$ 物質中のを考えるときに変動する磁化を手で入れ なければならないが、そう書いている本は見たことがないので、 これを使うのはやめておく。

$$ \boldsymbol{D} = \varepsilon_0 \boldsymbol{E}, \\ \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{H} $$