総研大における講義内容


2003年度

1月19日-(毎週月曜日) 総研大博士課程講義、於KEK研究本館

第一回:場の理論のユニバーサリティとくりこみ群
第二回:行列模型と2次元重力
第三回:行列模型を用いた弦理論の非摂動的定式化
第四回:Lie群(SU(N)群、ローレンツ群)の表現論に関する復習
第五回:グラスマン数積分とフェルミオン行列式に関する復習
第六回:IKKT模型におけるローレンツ対称性の自発的破れ
第七回:ラージNゲージ理論と江口川合等価性

3月15日を以って、七回に渡る講義を終了した。「構成的アプローチ」という視点から、 ゲージ理論、重力、弦理論全般を見渡し、相互の関連について解説したつもりである。 少人数(7,8人?)ならではのアットホームな雰囲気の中で突っ込んだ質問もたくさん出て、 よかったと思う。受講者の皆さんに素粒子論に対する広い視野と展望を与えることができたならば 幸いである。


2005年度

4月-12月(毎週水曜日) 総研大博士課程輪講、於KEK研究本館

弦理論に関するZwiebachの教科書"A First Course in String Theory" の輪講をD1の4人にやってもらった。易しく書かれているおかげで式をすべてフォロー しながら読む事ができ、弦理論の全体的イメージをつかむのに役立ったのではないか。 TAとして出席してくれた堀田健司氏と東武大氏には、随所で有益な コメントをしていただいた。総研大院生にとって、年の近いポスドクから学ぶ経験は とても良い刺激になったと思う。


2006年(5年一貫制博士課程に移行)

4月10日-(毎週月曜日) 総研大博士課程講義(新D1対象)、於KEK研究本館

第一回:素粒子理論の現状、非相対論的粒子の多体系を記述する場の理論
第二回:相対論的粒子の多体系を記述する場の理論(Klein-Gordon場とDirac場)
第三回:復習(生成消滅演算子を用いた調和振動子の量子化、汎関数微分、テンソル積)
第四回:スカラー場の理論における散乱振幅の摂動計算(treeレベル)、Wickの定理
第五回:散乱断面積の定義と具体的計算
第六回:散乱振幅に対するloop補正、プロパゲーターの導出
第七回:Feynman ruleの導出、2点グリーン関数と素粒子の質量の関係
第八回:2点グリーン関数に対する摂動論的表式、質量に対する輻射補正
第九回:エネルギーに対する摂動計算との関係、多点グリーン関数と散乱振幅(LSZ公式)
第十回:紫外発散とくりこみ、1-loopでのくりこみ、次元正則化
第十一回:くりこみ条件、くりこみ群、ベータ関数の計算、Green関数の経路積分表示
第十二回:Green関数の生成汎関数、有効作用
第十三回:有効作用の具体的な計算方法、湯川理論のFeynman rule
第十四回:フェルミオン場を含むGreen関数の経路積分表示、生成汎関数
第十五回:フェルミオン行列式、ゲージ対称性、ゲージ固定、Feynman rule
第十六回(補講):QEDにおける1-loopのくりこみ、ベータ関数の具体的計算

5年一貫制博士課程に移行して、学部を卒業したばかりの新D1(通常の大学院でのM1に相当) が入ってきた。そして彼らが初めて学ぶ場の理論の講義を担当することになった。 概念的な理解はもちろん、具体的な計算を自分でできるようにすることを目標にしている。 例えば講義中にいくつか宿題を出し、実際に手を動かして計算してもらっている。 また、受け身の授業になってしまう事を極力避けるため、積極的な質問を促したり、 こちらから指名して簡単な問いに答えてもらったりして、interactiveな授業を 心掛けている。
Peskin-Schroederの教科書"An Introduction to Quantum Field Theory" のPart I(とPart IIの一部)の内容を網羅する予定だが、講義は必ずしもこの教科書に 沿わずに自分で準備している。 新D1の3人に加えて上級生5人も聴講してくれており、講義を担当する者としては嬉しい限り である。準備のしがいがあるというものだ。一人の落ちこぼれも出さないように、ゆっくり 丁寧に進めているが、場の理論の基礎をしっかりカバーして、 後期担当の磯さんにバトン・タッチしたい。 (6月5日)



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西村 淳 (KEK)