ポスター発表の概要

基研研究会
場の量子論の基礎的諸問題と応用
[ポスター発表一覧]

(A1) 安部 保海 (KEK 「非可換電磁気学における双対性と平面波解について 」
非可換空間上でのゲージ理論では、理論に現れる物理量は一般に非可換な量で記述されるが、理論を定式化する一つの方法として、Seiberg-Wittenマップと呼ばれるマップを用いて、全てを可換な量で記述する方法が知られている。このセッションでは、この方法で非可換電磁気学を記述した際に明らかになる双対対称性について述べる。また、この双対対称性は既知の解から、新しい解を生成する目的に応用できるが、これを実際に平面波解に適用し、未知の平面波解が得られることについても触れる。


(A2) 家田 淳一 (東大理) 「Matter-Wave Solitons in a Multi-Component Bose-Einstein Condensate」
Motivated by recent experiments of observing matter-wave solitons in an atomic Bose-Einstein condensate, we study a coupled nonlinear Schro"dinger equation that describes the dynamics of a multi-component Bose-Einstein condensate. We consider specifically an atomic condensate in the F=1 hyperfine state with three internal degrees of freedom. By applying the inverse scattering method to this coupled system, we prove that it possesses a completely integrable point. The exact soliton solutions and the characteristic 2-soliton collision like a spin switching on/off are also discussed. (collaborator: T. Miyakawa in University of Arizona)


(A3) 石黒 克也 (金沢大 「Energy-entropy study of monopole cluster in quenched SU(2)QCD」
QCDにおけるカラーの閉じ込め現象の起源がmonopole凝縮にあるとの立場から、格子ゲージ理論を用いて数値的にその検証を試みる。特に、赤外領域において重要であると考えられる4次元空間全体に広がったmonopole loop(cluster)の性質を、ゼロ温度系から有限温度相転移近傍の領域まで考察する。


(A4) 岩崎愛一 (二松学舎大 「クォーク物質におけるグルーオンの量子ホール状態とカラー強磁性」
バリオンの密度が増すと、ハドロン相からカラー強磁性相へ転移する。そのカラー強磁性相では、自発的にカラー磁場の発生があるだけでなく、グルーオンがボーズ凝縮して量子ホール状態を作っている。かつて、非可換ゲージ理論でサビディー真空と呼ばれた不安定な自発磁化状態が、その不安定モードとしてのグルーオンが量子ホール状態を作ることで、安定化するのである。以上のことを説明し、その状態を観測する上で特徴的なことを述べる。


(A5) 岩崎 正春 (高知大 「カイラル相転移における潜熱と密度ギャップ」
有限温度有限密度のクォーク物質のカイラル相転移がNJLモデルを用いて調べられる.特に,1次相転移領域における潜熱と密度(体積)変化が計算され,その3重臨界点近傍の振舞いが議論される.


(A6) 大塚 晶久 (東工大 「Supersymmetric Gauge Theories on Noncommutative Superspace」
Ooguri-Vafaにより提唱されたsuper spaceのGrassmann odd coordinateの非反可換性の下で、
物質場を含む超対称ゲージ理論を構成し、その性質を調べた。${¥cal N}=1$超対称ゲージ理論は、前述の非反可換性により${¥cal N}=¥frac{1}{2}$に破れ、残る超対称性の成分場の変換性は、非反可換性による変更を受ける。また、成分場のゲージ変換性が、canonicalなものであることを要求すると、superfieldの成分も非反可換性による変更を受ける。さらに、これを${¥cal N}=2$に拡張した。この場合にも、超対称性は、${¥cal N}=¥frac{1}{2}$に破れてしまうことが分かる。


(A7) 加藤 潤哉 (金沢大) 「 Exact Renormalization Group Analysis of Gluon and Ghost Propagators in
Landau Gauge Yang-Mills Theory」
Landau gaugeでのYang-Mills理論のgluonとghost propagatorについて非摂動繰り込み群を用いた解析を行った。ゲージ理論において propagator の赤外での振る舞いは、閉じ込めや Gribov問題などに対して重要な意味を持つ。Landau gauge でのこれらのpropagator は Schwinger-Dyson方程式を用いた解析によって赤外の極限では一つのexponent で決まる power solution が存在することが知られているが、紫外での摂動的な解との整合性など自明でない所があることから、異なった立場からの議論が必要である。今回このような解について非摂動繰り込み群の立場から眺めたのでSchwinger-Dyson方程式との比較を中心に議論したい。


(A8) 加堂大輔 (名古屋大) 「 格子上のカイラルアノマリーのコホモロジー的な解析」
格子上のU(1)カイラルゲージ理論のGinsparg-Wilson関係式に基づくゲージ不変な定式化を考えたとき, カイラルアノマリーをコホモロジー的に解析することが必要となる. これは格子上でゲージ対称性を保証するために必要な局所相殺項が, カイラルアノマリーの中にコホモロジー的に自明な部分として現れるためである. これまで無限体積の格子上では局所相殺項を構成する方法が知られており, これに基づいて格子U(1)カイラルゲージ理論の存在証明がなされている. 本発表では, この理論の数値的な応用を目指して, 従来の無限体積の格子上におけるコホモロジー的な解析法を有限体積の格子上で直接行えることを示した. さらに実際局所相殺項を数値的に求め,局所性の性質等を数値的に確認した. また, アノマリーの解析法についてこれまでと異なる方法を導入し, この応用を議論する.


(A9) 菅 菜穂美 (山口大 「Graph theoretical bounds on masses」
余剰次元が不連続的にコンパクト化されている場合に励起状態の質量の上限・下限についてグラフ理論の立場から議論します。


(A10) 北沢 正清 (京大理) 「Pseudogap phenomenon of color superconductivity in dense quark matter」
中間密度領域におけるカラー超伝導は、この領域におけるQCDの強結合性を反映して大きなゆらぎを持つことが期待される。このため、その物性はBCS理論的な描像というより、むしろ高温超伝導に近いものである可能性がある。このような着眼点から、本研究では高温超伝導の特徴的な現象の一つである、擬ギャップ現象に着目したカラー超伝導の研究を行った。この結果、カラー超伝導の臨界点付近においては実際、対場のゆらぎが形成する集団モード(ソフトモード)を起源として状態密度に顕著な擬ギャップ構造が出現しうることが分かった。本講演ではこの結果について、高温超伝導との比較および他の物理量への効果等の議論を交えつつ報告を行う。


(A11) 久保 敏弘 (東京理大 「量子井戸中の磁場誘起1次元系における電子のトンネルに対する多体効果」
電子が最低ランダウ準位のみを占有するような強磁場下の3次元導体中では、電子は1次元的な運動をする。そのような系での電子の透過率の温度依存性は、電子間相互作用のパラメータが磁場に依存しているということを除いて、純粋な1次元系における理論の結果と定性的には一致することが知られている。こうした理論は半導体を用いて実験的に調べることができる。しかしながら、電子間相互作用の効果をはっきりと観測するためには、電子の平均自由行程がフェルミ波長よりも十分長くなければならない。ところが、バルクな半導体を用いたのではこの条件は満たされない。そこで、我々は上記の理論を量子井戸中に拡張する。ただし、井戸幅が磁気長に比べて十分広いとし、バルク状態とエッジ状態とが共存する場合を考察する。そのような場合に、バルク状態における多体効果に対するエッジ状態の寄与を調べる。その寄与は、最強発散項のみを考慮する近似の範囲では無視できることを示す。


(A12) 久保 博史 (九大) 「非摂動繰り込み群によるNucleon Effective Theoryの解析」
S-channnelでのNucleon-Nucleon散乱にはDeuteronのような束縛状態が存在し非摂動的な取り扱いを要する。そのためにQCDのLow energy effective field theoryとしてのNucleon effective theoryが用いられるが、そのEffective field theoryを定義する上で重要な要素であるPower Countingについて非摂動繰り込み群の立場から得られる情報について考えてみたい。


(A13) 越野 和樹 (阪大理 「Quantum Zeno effect in non-ideal measurement processes」
従来、量子ゼノ効果は、理想的測定の場合に対応する測定の射影仮設を用いて議論されてきた。本研究では、より一般的で現実的である非理想測定の場合について、量子ゼノ効果を議論する。例として、測定器が有限の検出エネルギー幅を持つような場合には、従来量子ゼノ効果が起こり得ないとされている生存確率が純粋に指数関数則に従うような場合であっても、ゼノ効果が起こりうること等を示す。


(A14) 国府俊一郎 (高知大 「マイスナー効果にとってボース凝縮は必要か?」
荷電 ボース気体を例にとり、 マイスナー効果にとってボース凝縮は必要条件であるかを論じる。マイスナー効果は外場の横成分に対する気体の応答が ボース統計の為に抑制される事により起きる。荷電 自由ボース気体の場合は、ボース凝縮体の存在は マイスナー効果にとって必要条件である。しかし短距離斥力の働く 荷電 ボース気体では、斥力が 気体の 横成分の励起と横 成分の励起のバランスを変化させ、問題は複雑になる。短距離斥力の働く 荷電 ボース気体の電磁感受率を 斥力についての摂動展開として求め、ボース凝縮体の存在はマイスナー効果にとって十分条件ではあるが、必要条件ではない事を示す。


(A15) 小宮奈穂子 (日大) 「An effective potential in SU(2) Yang-Mills theory and stability of the Savvidy vacuum」
Savvidy真空と呼ばれるYang-Mills理論の真空は、そのエネルギーに虚数部分が現れるため、不安定になることが知られている。今回我々は、Yang-Mills場の4点相互作用の効果を考慮した有効ポテンシャルを導き、それを基にSavvidy真空が安定となる可能性を探る。また、これと関連して、質量次元2の真空凝縮の可能性についても考察する。


(A16) 御領 潤 (青山学院大 「Berry phase and spin quantum Hall effect in the vortex state of superfluid 3He in two dimensions」
最近、d-波超伝導体の渦糸状態で、スピンの流れに対する量子ホール効果(スピン量子ホール効果、略してSQHE)が起こり得ることが示された。ここで SQHE とは、ゼーマン磁場の勾配に対して垂直にスピン流が生じ、その伝導度(スピンホール伝導度)が量子化される現象である。今回の議論では、薄膜状の p-波超流動3He の渦糸状態でもスピン量子ホール効果が生じ得ることを示す。さらこの系の場合、量子化されたスピンホール伝導度はベリー位相によって書き表されることを示す。この証明の際、渦糸格子の周期性と同時に超流動性(超伝導と違ってマイスナー効果が起きないこと)が crucial に効いてくる。ブロッホ電子系の(電流に対する)量子ホール効果では、このような関係、すなわち量子ホール伝導度がベリー位相で表される、ということが知られている。よって今回の議論により、超流動3Heの渦糸状態のスピン量子ホール効果はブロッホ電子系量子ホール効果にきわめてよく類似していることが明らかにされる。さらに、断熱ポンピングとの間の類似も指摘する。


(A17) 斎藤 武 (関西学院大 ) 「非可換空間上の経路積分」
空間座標が非可換である場合の量子力学の構成を考える。この空間の上で厳密な経路積分公式を導くことができる。応用としてゲージ理論のAB効果への非可換dependenceについて再考する。


(A18) 坂元 啓紀 (日大) 「4次元近傍におけるランダム磁場O(N)スピン模型の相転移とdimensional reduction、レプリカ対称性の破れ」
系の次元$d$が$4<d<6$におけるランダム磁場O($N$)スピン模型の強磁性転移について、まだ確定した共通の理解が得られていない。これについて現在盛んに議論されているのは、強磁性転移温度より高い温度領域でのレプリカ対称性の破れ(RSB)によって特徴づけられる相の存在についてである。強磁性転移において、高温側(常磁性相)からRSB相を経由せず強磁性相へ転移する場合、dimensional reductionが観測される可能性があるが、RSB相を経由する場合にはdimensional reductionが観測されないと考えられている。ここでdimensional reductionとは、「$d$次元のランダム系と$(d-2)$次元のランダムさのない系が等価である」というParisiとSourlasによる理論での主張である。最近Feldmanはくりこみ群を用いて、$4+¥epsilon$次元ランダム磁場O($N$)非線形シグマ模型の臨界指数をレプリカ対称な固定点で計算し、その結果からdimensional reductionが成り立たないことを示唆した。しかし、固定点の安定性やRSB相の存在についての考察はなく、またレプリカ対称性を仮定した上での解析であるので、RSBとdimensional reductionの破れの関係は明らかではない。そこで我々は、ランダム磁場($+$2次のランダム異方性)O($N$)非線形シグマ模型を取り扱い、$1/N$展開法を用いて$4<d<6$次元における臨界現象を再考した。この講演ではその結果を発表する。


(A19) 迫田 誠治 (防衛大 「経路積分量子化と第一類拘束条件」
球面上に拘束される粒子の運動の場合など、いくつかの特別な例については、その経路積分の方法による量子論の記述が第一類の拘束条件のみを用いた構成法(具体的には物理的状態を取り出す条件を経路積分中で考慮する)によって可能である。ここで提案される方法はFaddeev-Senjanovicの処方とは異なるアプローチであるが、演算子形式との対応を損なうことなく、量子論における位相空間の縮減を経路積分法の中で実現するものである。

上記の特別な2、3の例以外の場合には、Batalinらの方法と同様に一旦位相空間を拡張した上で、元来は第二類の拘束条件が第一類となるようなLagrangianを導入することができる。この変形された系に対して上記の手続きを施すことにより、やはり第一類拘束条件のみを用いた経路積分の構成が可能となる。

このような考察に基づいて、Faddeev-Senjanovicの処方に代わる、拘束系の新たな経路積分の公式を導出する。


(A20) 佐々井祐二 (大島商船高専 「Fermion Determinant at Finite Density QCD in Lattice Simulations」
近年,有限密度系の研究が活発におこなわれており,格子QCDは非摂動領域の情報を与えることが期待されている.しかし,化学ポテンシャルを導入すると,経路積分の測度に現われるフェルミオン行列式が複素数になるため,数値積分が困難になる.我々は$SU(3)$格子QCDの位相効果を調べるため,$8^{3}{¥times}4$格子上で${¥mu}=0.1,0.2, 0.25$の場合についてフェルミオン行列式を計算した.そして,カイラル凝縮とポリヤコフ線を位相なしの場合と重み再定義の場合について計算したが,2つの場合についての差異は見られなかった.また,より大きな化学ポテンシャルの場合に計算を行い, ${¥mu}=0.3〜1.0$の領域では計算が困難であるが,更に大きな密度領域では計算が可能であることを見出した.


(A21) 佐藤喜一郎 (東京理科大 「有限質量のスピン2の場の理論の新しい定式化」
有限質量のスピン2の場の理論としてFierz-Pauliの質量項に1つパラメータを持たせた拡張モデルがある。このモデルは,パラメータaが1のときラグランジアンレベルではFierz-Pauli理論に帰着するが,それ以外の一般的の値では,スカラーモードが自動的には消えないため物理的な自由度が合わず,また,そのスカラーモードはゴーストであるためユニタリなモデルにはならないとされてきた。今回,このモデルに関して,中性ベクトル場で行われたNakanishi形式をBRS不変性に基づく形式に拡張した方法で新ためて定式化を試みた。その結果,ゲージ条件,並びに,ゲージパラメータを特別なものに選ぶと,質量が有限のままのときのみ存在するゲージ対称性が見つかった。(以前の口頭発表段階では,ゲージの選び方が悪かったので,本当のゲージ対称性に見えなかったが,今回は完全に任意関数を含む形のゲージ対称性がある定式化となっている。)そして,このゲージ対称性のおかげで,有限質量では質量スカラーモードが物理的ではなくなり,4次元では5自由度という正しい自由度になり,零質量極限では,この対称性は消えるので,逆にスカラーモードは物理的のまま残り,横偏極状態の2自由度にできる。さらに,このモデルではFierz-Pauli極限の様子も解析できるので,vDVZ不連続問題に新たな理解を与えことになる。また,このモデルではパラメータを特別な値に選ぶと,スカラーモードが零質量になり,AdSやdSが背景の重力理論において,Deserらが議論しているpartially-masslessと呼ばれた状態に相当するモードがミンコフスキー時空でも存在することが分かった。


(A22) 佐藤 徳弥 (日大) 「非可換時空にカイラル対称性の破れの問題」
D-brane描像に基づく超弦理論によれば、内部時空の磁場と関連して4次元時空の座標に非可換性が現われることが知られている。この様な時空に存在する粒子にはランダウ準位に対応するエネルギースペクトルが生じ、ある種の模型ではこれがカイラル対称性の破れの核となることが期待される。この仕事ではこの様な可能性を示す模型について考察する。


(A23) 佐藤 正寛 (東工大 「磁場中の擬1次元高スピン系への場の理論の応用」
1次元量子スピン格子模型を場の理論の観点から眺めると、それは(1+1)次元場の理論、特に共形場理論の応用分野である、という見方ができる。スピン1/2の系においては、アーベル型ボソン化を代表とする強力な場の理論的方法によって膨大な研究成果が生み出され続けている。一方スピン1以上の高スピン系では、非線型シグマ模型(Haldane mapping)の方法は確立しているもののフラストレーションや磁場のある系に対して場の理論的戦略は開発途上にあると言える。今回我々は一様磁場中のスピン1の2本鎖模型と一様磁場中の整数スピンN本鎖チューブ(トーラス型の1次元系)模型に対して、それぞれ非アーベル型(非可換)ボソン化と非線型シグマ模型を応用して場の理論が得意とする系の普遍的な性質を導出できることを議論する。前者の模型においては、高磁場下のスピン1の系において非可換ボソン化が
有効に機能することを示す。後者においては、鎖間が反強磁性相互作用の場合に十分大きな磁場を印加すると、一般に鎖が偶数本ではセントラルチャージc=1の臨界相が生じ、一方奇数本ではc=2が生じる、ということを予言する。


(A24) 澤渡 信之 (東京理科大 「Degeneracy of the quarks, shell structures in the chiral soliton」
We obtain multi-soliton solutions with discrete symmetries in the chiral quark soliton model using the rational map ansatz. The solutions exhibit degenerate bound spectra of the quark orbits depending on the background pion field configurations. It is shown that resultant baryon densities inherit the same discrete symmetries as the chiral fields. Evaluating the radial component of the baryon density, shell-like structure of the valence quark spectra is also observed.


(B1) 石 長光 (富山大 「Skyrme-Faddeev模型の厳密2変数解」
Skyrme-Faddeev模型(Skyrme項をもつSO(3)非線形σ模型)はグルーボールを記述するとされる模型である。この模型の4次元ミンコフスギー時空での2変数厳密解を求める。解はひとつの任意実関数とひとつの任意複素解析関数を含む。Vortex型の特解を詳しく調べる。


(B2) 白石 清 (山口大 「Graph Laplacian and Graph Hosotani Mechanism? 」
Dimensional Deconstructionのアイデアを一般化し,余次元が(グラフ理論の)グラフで表される場合の場の理論を考察する。one-loop有限なポテンシャルが細谷機構と同様に得られることがわかった。対称性の破れについて議論する。induced gravityモデルについても応用する。


(B3) 杉原崇憲 (理研BNL 「 Vector and chiral gauge theories on the lattice」
We combine a pair of independent Weyl fermions to compose a Dirac fermion on the four-dimensional Euclidean lattice. The obtained Dirac operator is antihermitian and does not reproduce anomaly under the usual chiral transformation. To simulate the correct chiral anomaly, we modify the chiral transformation. We also show that chiral gauge theories can be constructed nonperturbatively with exact gauge invariance. The formulation is based on a doubler-free lattice derivative, which is defined as a discrete Fourier transform of momentum with antiperiodic boundary conditions. Long-range fermion hopping interactions can be effectively truncated using the Lanczos factor. (hep-lat/0310061)


(B4) 高野 健一 (豊田工大 「フラストレートした2次元ハイゼンベルグ模型の場の理論による解析」
正方格子上のハイゼンベルグ模型で次近接まで反強磁性的な交換相互作用がある場合は,基本的な模型であるが,その基底状態についてはいままで諸説があり,確定していなかった.本研究では,この量子スピン系を場の理論にマップすることによって,その基底状態を明らかにした.この系はフラストレーションの効果で励起にスピン・ギャップを持つ無秩序状態になる可能性が高い.無秩序状態の有力な候補として,プラケット状態,ダイマー状態,一様なRVB状態などが考えられてきた.これに対して数値計算や各種の展開などいろいろな解析が試みられてきたが決定的なものではなかった.我々は,新しい方法でこの系を場の理論にマップし,最終的には非線形シグマ模型を導出した.この方法では,元のスピン系の自由度を保存するような変数変換を行い,すべての低エネルギー励起がmasslessかどうかをみることができ,パラメータを動かしたときの無秩序相の連続性が判定できる.これより,この系の無秩序状態は並進対称性の破れたプラケット状態であるという結論が導かれた.詳細は,次のプレプリントを参照:K. Takano, Y. Kito, Y. Ono & K. Sano: to be published in Phys. Rev. Lett.(cond-mat/0306632)


(B5) 高柳博充 (東大理) 「Boundary states for supertubes」
円筒状のD2ブレインは張力のため通常は不安定であるが、適切なゲージ場をブレイン上に加えることで安定化する事が知られていてる。この安定化したD2ブレインはsupertubeと呼ばれているが、これはD0ブレインが膨らんだものとも解釈する事ができる。その膨らむダイナミクスを追うことは非常に興味深いので、それを弦理論的に扱った。具体的にはsupertubeがT双対性の下でらせん状の動いているD1ブレインと等価であることを利用して、そのD1ブレインをboundary stateで記述した。また、そのboundary stateを用いて開弦1ループ振幅を計算し、開弦のスペクトルを調べた。その結果、スペクトルが低エネルギー理論から予想されたものに対して弦理論的な補正があることがわかった。


(B6) 高山 靖敏 (KEK 「Stability of fuzzy S^2xS^2 geometry in IIB matrix model」
我々はfuzzy S^2xS^2上のIIB行列模型の解析,特に二つのS^2のサイズが異なる場合についてのこの模型の有効作用を評価した.Power counting及びSUSY cancelationの議論から ラージNでのこの模型の振る舞い,'t Hooft coupling を決定した.その結果,二つのS^2のサイズが等しくなる配位が有効作用を極小化する事が明らかになった.


(B7) 竹永 和典 (阪大理 「質量を持つ粒子が細谷機構に与える影響」
細谷機構は余剰次元のトポロジーを反映して生じるダイナミカルなゲージ対称性の破れの機構であり、余剰次元を考えた統一理論などを考える際に、重要な役割を果たすと考えられています。細谷機構のダイナミクスは、ウィルソン線積分(位相)というグローバルな量のダイナミクスであり、そのため、赤外領域の物理(具体的には軽いカルーザ・クライン モード)によって支配されてり、カットオフ(局所的な量)といった様な紫外領域の影響は受けません。このため、質量を持った粒子は、一見すると、その機構には効かない様に、つまり、ゲージ対称性の破れのパターンに影響を与えない様に思われます。この講演では、質量を持った、所謂、bare mass を持ったフェルミ粒子が細谷機構に与える影響を、最も簡単な非可換ゲージ理論、SU(2)ゲージ理論の場合について調べた結果を報告します。ただし、フェルミオンは随伴表現に属するとするとし、時空間はM^4otimes S^1を仮定しました。また、超対称性ゲージ理論では、通常、シャーク・シュワルツ(SS)機構によって超対称性を破ることにより、細谷機構を通じたゲージ対称性の破れを議論しますが、ゲージーノやスクォークが bare mass を持つことで超対称性を破った場合、ゲージ対称性の破れのパターンにどのように影響するのかを調べ、さらに、SS 機構による結果との違いも調べました。


(B8) 中川 弘一 (星薬科大 「場の量子論による多重ゼータ値の表現法について 」
場の量子論の摂動計算で用いられるFeynman図形による多重ゼータ値の表現方法がM¥"{u}llerとSchubertによって提案され、多重ゼータ値に関するいくつかの関係式が導かれた。この発表では、従来数学の分野で研究されている多重ゼータ値に関するいくつかの関係式とM¥"{u}llerとSchubertが提案した模型(ゼータ模型)を紹介し、それらの対応について議論したい。


(B9) 長澤智明 (神戸大 「Supersymmetry and discrete transformations on S^1 with point singularities」
S^1上に2^n個等間隔に特異点がある系では、N=2n超対称性のあるモデルを構築することができる。その際、重要な役割を果たすのは、S^1上での不連続変換である。n-セットの不連続変換で、それぞれのセット内ではスピン1/2のsu(2)代数を満たし異なるセット間ではすべて交換するという不連続変換を導入することができる。そして、これらの不連続変換を用いると N=2n超対称性代数を満たす超電荷を構成することが出来る。しかしながら、このことは理論にN=2n超対称性が存在することを保証しない。というのは、この理論は不連続変換に伴って必然的に特異点を含み、特異点上で波動関数の接続条件をうまく選ばないと超電荷がエルミートで物理的な演算子とならないからである。この接続条件を選ぶことは特異点の構造を指定することを意味する。今回の講演では、不連続変換を使って超電荷を構成してみせ、超電荷が物理的演算子となりうる特異点のクラスを明らかにする。また、特異点のクラスによっては、任意の超電荷だけ ill defined にすることができ、このときは任意のN=m超対称性(m:自然数, m<2n)に落とすことができる。さらに、超対称性の自発的破れの有無についても分かったので、これらについては時間があれば話すつもりである。なお、本研究は坂本眞人氏(神戸大・理)、竹永和典氏(阪大・理)との共同研究に基づくものである。Ref:T. Nagasawa, M.Sakamoto and K. Takenaga; hep-th/0311043, hep-th/0212192.


(B10) 西川 哲夫 (KEK) 「カラー強磁性とカラー超伝導の共存」
最近、IwazakiとMorimatsuによって、クオーク物質中でカラー強磁性相が実現する可能性があることが報告された。SU(3)カラー強磁性相におけるクオークのエネルギー密度は、カ
ラー磁場のカラー空間における方向に依存すが、その依存性は非常に小さい。しかしクォーク数密度がある密度以上になると、カラー磁場は¥lambda_3方向を向いて、クォーク対が凝縮する(カラー超伝導状
態)ことでエネルギーが下がる。凝縮したクオーク対は、?lambda_3方向を向いた磁場を感じないので、カラー超伝導とカラー強磁性は共存できる。


(B11) 西山 精哉 (高知大 「Group Theoretical Derivation of a Dyadic Tamm-Dancoff Equation by Using a Matrix-Valued Generator Coordinate」
タム-ダンコフ(Tamm-Dancoff )法は強い相関を持つフェルミオン多体系のシュレディンガー方程式(Schroedinger equation)を解く標準的な手続きである。しかしながら、ある対称性を付与された独立粒子近似(independent particle approximation (IPA))の基底状態に不安定性が生じ安定なIPA基底状態がその対称性を破るとき、その方法は重大な困難に直面する。安定ではあるが対称性の破れたIPA基底状態から出発すると、近似的なTD波動関数もまたその対称性を破ることになる。一方、対称性は付与されているが不安定な波動関数から出発すると、TD展開の収束は悪くなり展開を途中で切断すると定量的に不正確な結果に到る。従って、通常のTD展開では、対称性の要請と速い収束性は互いに両立しないという難問が立ちはだかる。この難問に答えるために行列値を持つ生成座標を用いて、高次効果を含む新たなDyadic TD方程式の群論的導出を試みる。今回の講演ではHartree-Fock理論を用いて本研究の本質的部分の概要を示す。


(B12) 野田周作 (阪大理) 「M^4×T^2/Z^2 上のSU(2)ゲージ理論と対称性の破れ」
細谷機構は余剰次元のトポロジーを反映して生じるダイナミカルなゲージ対称性の破れの機構であり、orbifold上の統一理論などを考える際に重要な役割を果たす。この研究は、orbifoldコンパクト化した M^4×T^2/Z^2 上でのSU(2)ゲージ理論と物質場を考察し、様々な条件の下でゲージ対称性がどのように破れるかを細谷機構を用いて調べた。


(B13) 橋本 道雄 (Pusan National Univ.) 「Gauged Nambu-Jona-Lasinio model with extra dimensions」
高次元のスカラー理論はトリビアルであることが知られている。ところが、余剰次元中ではゲージ相互作用が非常に大きな
異常次元をもち得ることを考慮すると、ゲージ相互作用を含むスカラー理論は非自明になる可能性がある。余剰次元中の Gauged Nambu-Jona-Lasinio model を使ってこの可能性を探求する。


(B14) 浜中 真志 (東大総合文化) 「Noncommutative Solitons and Conserved Quantities」
非可換空間上のゲージ理論は、背景磁場(B場)中のD-braneの有効理論として近年非常に精力的に調べられた。特に非可換4次元空間上の(反)自己双対なゲージ場の配位(非可換インスタントン)はADHM構成法によって具体的に厳密に構成され、対応するD-braneの性質についても理解が進んだ。これは(反)自己双対Yang-Mills方程式が非可換空間でも「解ける」すなわち「可積分である」ことを意味する。一方, より低次元のソリトン方程式, 可積分系として、KdV方程式、 KP方程式といったものが多数知られているが、実は4次元の(反)自己双対Yang-Mills方程式の次元還元によって(ほとんど全て)得られることが知られている(Ward予想)。これと非可換インスタントンの成功を合わせると、低次元のソリトン方程式の非可換化も非常に面白いものと期待される。

私は富山県立大の戸田晃一氏と共同で、ソリトン理論の体系的非可換化に取り組んできた。特に最近、 佐藤理論の非可換化により、 多くの非可換ソリトン方程式(とその階層方程式)を得た。佐藤理論は、可換空間上ではソリトン理論の最も包括的かつ壮大な理論として知られており、多重ソリトンの厳密解の構成や無限個の保存量の導出だけでなく、解空間の構造や、背後にある無限次元の対称性などが全て明らかにされる。

私は、 佐藤理論の枠組みから、これらの非可換ソリトン方程式が無限個の保存量を持つことを、 ついに一般に示した(hep-th/0311nnn)。空間-空間 非可換性の場合だけでなく、時間-空間 非可換性の場合にも、具体的保存密度の表式を与えた。これは非可換ソリトン方程式が、背後に無限次元の対称性を持つことを強く示唆している。

この発表では, この無限個の保存量の導出を中心にソリトン理論の非可換化の進展と展望を紹介する予定である。


(B15) 藤山 和彦 (名古屋大 ) 「Renormalizability of the Bulk QCD」
余次元を含む偶数次元のQCDにおいて、走るゲージ結合定数が紫外固定点をもつことを仮定すると、くりこみ可能性を表す紫外固定点が出現する。この固定点は6次元では存在するものの、8次元になると消失する。これにより、紫外カットオフ無限大でのパイオン崩壊定数が6次元では収束し、8次元では発散することが見込まれる。バルクQCDの非摂動論的くりこみ可能性を、非摂動くりこみ群による連続極限の構成と、パイオン崩壊定数の収束性の両面から議論したい。


(B16) Tamas Fulop (KEK 「Quantum force due to distinct boundary conditions」
We calculate the quantum statistical force acting on a partition wall that divides a one dimensional box into two halves. The two half boxes contain the same (fixed) number of noninteracting bosons, are kept at the same temperature, and admit the same boundary conditions at the outer walls; the only difference is the distinct boundary conditions imposed at the two sides of the partition wall. The net force acting on the partition wall is found to be nonzero and to tend to infinity for high temperatures with a square-root-of-temperature asympotics. This example demonstrates that distinct boundary conditions cause remarkable physical effects for quantum systems.


(B17) 細谷 裕 (阪大理) 「ゲージ相互作用とHiggs相互作用の統一」
Gauge interactions and Higgs interactions are unified in higher-dimensional gauge theory. Natural unification emerges on an orbifold which is a non-simply connected space divided by discrete symmetry. Boundary conditions on the orbifold can be dynamically selected in supersymmetric theory. Detailed analysis is given for SU(N) gauge theory on S^1/Z_2 and T^2/Z_2.


(B18) 堀越 篤史 (奈女大) 「Effective potential-based calculations of real time quantum correlation functions 」
有限温度量子力学系における実時間相関関数の計算法の一つに、セントロイド分子動力学法がある。これは有効ポテンシャル(Wilsonian effective potential)面上の古典運動から相関関数を計算する近似法であるが、半古典的な手法ゆえに、量子コヒーレンスが強い系においてはうまく機能しないことが知られている。それに対し我々は、有効作用形式と解析接続法を用いることで
有効ポテンシャル(standard effective potential)からダイレクトに相関関数を計算する手法を導入し、二重井戸型ポテンシャル系においてその有効性を議論する。


(B19) 丸山 智幸 (日大) 「Collective Motions in Bose-Fermi Mixed Condensed System 」
ボーズ・フェルミ混合系での集団運動を時間発展方程式を直接解くことによって研究を進めた。そこで、フェルミ振動の減衰、および二つの振動系の共鳴という現象を発見した。


(B20) 森田 克貞 (名古屋大 「A new regularization scheme based on Lorentz-invariant noncommutative field theory」
ローレンツ不変な非可換場の理論において,IR/UV 問題を取り上げ,新しい UV 極限を定義すると,通常の繰り込まれた振幅を与えることが one-loop の近似でわかる。一方,ローレンツ不変な非可換 QED の真空偏極が,自動的にゲージ不変であることをみた後,この正則化がPauli-Villars や次元正則化と同じ結果を与えることを示す。さらに,非可換 QED に現れる 3-vertex がローレンツ不変な理論では消えることを使い,tadpole diagram を消去する新しい条件を課すと,QED のゲージ不変な正則化と (one-loop の近似で)同じ結論を与える。なお,非可換 U(n) ゲージ理論について,ローレンツ不変性の意味するところもコメントする。


(B21) 山下 淳 (富山大 「Meron解を実現するアイソベクトル スカラー場 」
林-森田,Faddeev-Niemi はSU(2)ゲージ場をアイソベクトル スカラー場nとスカラー関数ρ,σ,U(1)ゲージ場C_μを用いて記述する. 我々はSU(2)Yang-Mills模型のMeron解を実現するようなn,ρ,σ,C_μの配位を求めた. 得られたnは, 特殊な場合はhedgehogとなるが,一般にはモノポールと反モノポールの対のような振舞をする.またρ,σは至る所で正則になる.


(B22) 山本 裕樹 (慶応大) 「Improvement of the FSTO Method for Constructing an Effective Hamiltonian in the Light-Front Yukawa Model」
光円錐量子化された湯川模型でメソン的な束縛状態をハミルトニアンを対角化することで求める。FSTOの方法とはユニタリ変換でハミルトニアンから粒子数を変える相互作用だけを消去し、有効ハミルトニアンを摂動的に得る方法である。有効ハミルトニアンの固有状態は有限個の粒子で表現でき数値的に対角化しやすくなるが、固有値が紫外発散するという問題がある。FSTOの方法を改良して非摂動的に有効ハミルトニアンを求めることでこの問題を解決する。


(B23) 湯浅 一哉 (早稲田大 「ゼノン型観測によるエンタングル状態の抽出」
量子情報・量子計算のアイデアでは,「エンタングル状態」がしばしば中心的な役割を果たす.したがって,エンタングル状態を準備する手法の確立は重要な課題であり,様々な方法が議論されている.最近我々は,量子ゼノン効果の場合と同様にして状態確認を繰り返すこと (ゼノン型観測) で,任意の混合状態から純粋状態を抽出する新しい機構を提案した.ここでは,その機構の「エンタングル状態抽出」への応用を紹介する.特に,量子通信に必要とされる,空間的に離れた系の間にエンタングル状態を準備する方法を議論する.


(B24) 渡辺 英徳 (東大理) 「閉弦の場の理論における境界状態」
弦理論は素粒子の統一理論として近年盛んに研究されている。従来の研究は弦理論の摂動的な領域の解析に限られていたが、弦理論のソリトン解である D-brane の発見により非摂動的な領域の研究ができるようになった。本研究では、弦理論の場の理論による定式化を行い、そのなかで D-brane がどのような役割を果たすのかを議論した。特に、D-brane から放出された閉弦の場(境界状態)が満たす方程式を構成し、境界状態の揺らぎのスペクトルを決定し、それが開弦の励起に相当することをみつけた。さらに共形場理論を用いることにより、さまざまな種類の閉弦の場の理論についても同様の関係式が成り立つことを示した。


Last updated: 11 December 2003