最近の研究

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ゲージ場の量子論
現在の素粒子理論の基礎をなす標準模型は非可換ゲージ対称性をその指導原理として構成されている。 これは 幾何学(ファイバーバンドル理論)に数学的な基礎を持ち、その豊かな大域的構造によって、 可換なゲージ対称性を持つ電磁量子力学を含め、他の場の理論には見られない非可換ゲージ理論ならではの特徴が存在する。 その顕著な例は、ゲージ場が大域的に自明でないトポロジー(位相)をもつことができ、磁気モノポールやインスタントンなどの 位相的ソリトンの存在が許されることである。このようなトポロジカルな配位のゲージ場は、強い相互作用の理論であるQCDに おけるクオーク閉じ込めや、カイラル対称性の破れなどを惹き起こすと考えられているものの、 これらに対する量子論としての精確な取り扱い方法や、さらにその物理的効果の全容については現在でも明らかでなく、 量子論の適用法やその限界を探る上でも興味深い研究対象となっている。このゲージ理論の量子化の数理、さらに大域的性質から派生する新しい物理効果等についての研究を行っている。

量子力学基礎論
誕生以来一世紀が経過した量子力学は、相対性理論とともに現代物理学を支える最大の柱石であるが、実社会的な観点での重要性においては相対性理論を凌いでおり、今後も、量子情報科学やナノテクノロジーの発展とともに、その傾向はさらに顕著になると考えられている。しかしこれらの21世紀技術の本格的な発展のためには、従来敬遠されてきた量子力学の --- 数学的基礎と概念的基礎の両面にわたる --- 精確な理解が強く求められる。量子論の一見奇妙に見える性質、すなわち相関の非局所性、観測結果の状況依存性、物理量の非実在性などの意味をより明確に理解し、量子論と古典論との本質的差異や境界を明らかにすることが、現代の基礎物理学の重要な課題になっている。この要請に答えるため、これらの量子論特有の性質が顕著に現れる量子エンタングルメントの数理と物理を中心課題として、高エネルギー実験での非局所性検証の可能性や、量子戦略を含む量子ゲーム理論の構築、新たな物理量概念として注目される弱値やそのための弱測定など、様々な角度から研究を行っている。


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