Murakami lab. 4-circle memo

村上研 4軸回折計 周りのメモ


  • どうも、最近ご機嫌斜めのようです。 もっと、愛情を注ぎましょう。
  • Hour meter Date 電圧(kV)/電流値(mA) Error type
    1600602.12.1255/200LC, TV
    17057.303.04.16 55/200 フィラメント交換
    ~17500~02.06.1355/200TV
    ~17700~02.06.1354/200TV
    17915.003.06.2620/10FC

    最後のFCエラーは、陰極の表面が熱で剥離し、 陰極とフィラメントが接触したためでした。 そこで、奥山さんに分解掃除してもらいました。

  • ターゲットにかける電流、電圧値と X線強度の関係
  • 村上研の4軸回折計用に使われているX線発生装置(XG)は、 カタログスペックでは18kWまで使えるということで 最大 60kV/300mA (電圧値/電流値)まで使えることになっている。 しかしながら、調子があまり良くないために、 高電圧、高電流をかけると 電場をかけている電極間に放電が起きてしまい 止まってしまう。
    ちなみに、これまでの放電歴は
    Hour meter Date 電圧(kV)/電流値(mA) Error type
    -------02.01.1650/260LC
    14362.702.03. 51/260LC
    14715.502.04.1047/220--

    そこで、どれだけXGに無理をさせて意味があるのかを理解するため、 どの電圧、電流値にすれば どの程度のX線強度を得ることが出来るかを観測した。 実験は、標準試料からのBragg散乱強度の電圧/電流変化として測定した。 今回の実験には、Mo targetを使用している。 (後述のK殻の電子を飛び出させるための励起電圧が ターゲットにより 異なるので、注意が必要である。)

    まず、図1に電流値と散乱強度の変化をプロットした。

    図1 電流値の変化に伴う、Bragg散乱強度の変化

    電流値は、まさにターゲットに衝突している電子の数に対応している。 したがって、出て来るX線強度が電流値に比例することは すぐに理解できる。 図1の実験結果は、まさに予想通りになっている。

    次に、図2に電圧値と散乱強度の変化をプロットした。

    図2 電圧値の変化に伴う、Bragg散乱強度の変化

    X線(特性X線)の発生は、与えられた電圧で加速された電子が 原子に衝突し、核に近い内核の電子がたたき出されて空孔ができる。 ここに、外側の殻の電子が遷移することにより 特性X線が放射される。 ここでは、K殻(1s)の電子をたたき出したもので LやM殻から電子が遷移し、Kα、Kβ線と呼ばれる特性X線が放射される。 さらに、L3(n=2,l=1,j=3/2) → K (n=1,l=0,j=1/2) の遷移に伴うX線を Kα1線と呼び、 L2(n=2,l=1,j=1/2) → K の遷移に伴うX線を Kα2線と呼ぶ。
    つまり、ある一定以上の電圧を印加しないとX線は発生されない。 図2を見て頂ければ分かるように、ある一定の電圧(Vc=約20kV)が X線発生に必要なことが分かる。 さらに、X線の強度は(V-Vc)^2に比例し、青線の様に実験結果を フィットすることが出来る。 ここで、低電圧側のフィットが悪いが、実はある程度以上に 電圧を上げて行くと X線の強度は(V-Vc)^2ではなく (V-Vc)に比例するということが経験上知られている。 そこで、低電圧側のみを(V-Vc)^2でフィットしたのが ピンク線である。 高電圧側がリニアに近付いていることが良く分かる。 結果として 40kV以上の電圧をかけた場合の発生するX線強度の変化は、 電圧V(kV)・電流I(mA)とすると I×(V-20.86)^2 で記述できる。

    結果として、電圧を上げることがX線の強度を得るのにどれだけ 有効かということが分かるかと思う。 XGにとって 日々のトレーニング(日頃から 最高電圧/電流値を出すこと)が 重要であると 先人たちからは 聞いている。 もちろん、急激な電圧、電流の変更は XGに大きなダメージを与える。 真空度の状態や、発せられるXGの音に注意しながら、 心して、使って欲しいところである。