ＢＬ‐４Ｂ２　多連装粉末Ｘ線回折装置 (ユーザーグループ運営ステーション)

担当：　植草　秀裕（東京工業大学）
　所内担当：　中尾裕則
6025 (PHS4868)
hironori.nakao@kek.jp


１．概　　要

ＢＬ－４Ｂ２ステーションはベンディングマグネットからの集光単色化されたシンクロトロン放射光を利用して高精度Ｘ線粉末回折実験を行うための実験ステーションである。光学系は垂直分散平板二結晶モノクロメータ及び疑似トロイダル集光ミラーからなっており、 集光単色Ｘ線が使用可能である。ベンディングマグネットから放射される開口角２．４mradの放射光は、二結晶間の面間隔を計算機制御することで出射高さを一定に保つ、垂直分散Ｓｉ（１１１）平板二結晶モノクロメータにより単色化される。次に２点曲げベントシリンダー方式による疑似トロイダルミラーによって水平―垂直方向に集光され、粉末回折計試料位置では１３ｍｍ（Ｈ）×２ｍｍ（Ｖ）となる。４Ｂ２ハッチ後端にはモニター用イオンチャンバーが設置されＸ線強度の測定が可能になっている。これらのモノクロメーター－ミラー－イオンチャンバーの光学系は、ＰＦの標準ソフトであるSTARSにより制御されている。

２．光学系性能

光学系 
Monochromator： 
　垂直分散Ｓｉ（１１１）平板二結晶モノクロメータ 
Focusing mirror：
　Rh蒸着Si単結晶（1000mm(l)×100(w)×60(h)）
　２点曲げベントシリンダー方式による疑似トロイダルミラー
　円筒面の曲率半径62.5mm
　臨界エネルギー、21keVに固定
エネルギー領域 ６ｋｅＶ～２０ｋｅＶ（１．８Ａ～０．７Ａ）
エネルギー分解能 ～２×１０－４
ビームサイズ １３ｍｍ（Ｈ）×２ｍｍ（Ｖ）

　


Fig.1 BL-4B optics



３．多連装検出器Ｘ線粉末回折装置

ＢＬ－４Ｂ２ステーションは名工大・虎谷研究室との共同で立ち上げられたビームラインであり、本ステーションに主に設置されている多連装検出器Ｘ線粉末回折装置３）、４）、５）は虎谷らによって科研費により開発作成された。 本回折装置は、放射光が平行ビーム系であるため、試料への入射角固定非対称反射光学系を採用していること、６本の２θ計測アームを２５°おきに設置する多連装系を装備していること、が特徴であり、これにより2θ、０～１５５°ステップ０．００２～０．００４°程度の高精度粉末回折データを短時間（４～７時間）に収集することが可能となっている。試料は回転試料台にのせる平板試料ホルダー、およびキャピラリー試料ホルダーが利用可能である。回折計の制御はＵＮＩＸワークステーション上のプログラムで行い、回折計光軸の調整、粉末回折データ収集のための各軸、多連装アーム、シンチレーションカウンタによる計測系、アナライザー結晶等、回折計各部の調整、粉末回折データの収集が行える。収集したデータはＭＳ－ＤＯＳ形式のフロッピーディスク（１．４４ＭＢ，１．２ＭＢ，７２０ＫＢいずれも可）に記録して持ち帰ることができる。

架台調整部 
スリットベース：－１５～＋５ｍｍ、０．００１ｍｍステップ
ゴニオベース　：－１５～＋５ｍｍ、０．００１ｍｍステップ
多連装検出器Ｘ線粉末回折装置 
アームの種類
 ・多目的アーム：カウンターとスリットボックスの付いた長いアームを持つ２θ軸、多連装Ｎｏ．６と兼用。
 ・多連装アーム：１～６の番号の付いた２θ軸でアナライザーモノクロとカウンタが装着されている。
 測定モード　　　　　使用可能アーム
 　２θスキャン　　　多目的アーム、Ｎｏ．５アーム、多連装アーム
 　θスキャン　　　　多目的アーム、Ｎｏ．５アーム、多連装アーム
 　θ―２θスキャン　多目的アーム、Ｎｏ．５アーム
 角度範囲（°）
 　多目的アーム　Ｎｏ．５アーム　多連装アーム
 　　-2 - 154.8  -27 - 129.8     -27 - 29.8(-27 - 154.8全アーム)
 角度設定精度（°）
 　２θ、θ　　：　０．０００１（°）
 アナライザーモノクロ
 　Ｇｅ（１１１）またはＳｉ（１１１）
 角度分解能（°）
 　ＦＷＨＭ：低角で０．０１６から０．０２５
 　　　　　高角で０．１　　から０．１５
試料ホルダー 
平板試料ホルダー　３０ｍｍφ×０．２～０．８ｍｍ(d)　あるいは
　　　　　　　　　市販ガラスホルダー
キャピラリー

　付属装置

　　・回転試料台

５．参考文献

  1. Photon Factory Activity Report #12(1994)
  2. 放射光粉末回折実験ステーション（ＢＬ－４Ｂ）デザインレポート,(1995),KEK Report 94-11.
  3. Photon Factory Activity Report #13(1995)
  4. H.Toraya, H.Hibino and K.Ohsumi, (1996), J. Synchrotron Radiation, 3, pp75-83.
  5. Symposium on Powder Diffraction: Frontiers of Synchrotron Radiation Powder Diffraction,(1997), KEK Proceedings 97-22.

Last modified: 2012-09-12