「佐藤先生からの補足コメント です。」

 

山田先生  cc 梶野君

 

 日光シンポジウムはお世話になりました。その質疑で「我が太陽系は何代目だろうか?」というご質問がありました。

この基本的な質問には、答えるのは難しいです。「ある元素は、i世代目で、ある元素はj世代目で、異なっていてもよい」という答えが最も無難です。銀河回転の公転周期が約2億年で、超新星になるような星(〜10太陽質量)だと、約1000万年で寿命が尽きますから、一旦、星が出来てしまうとすぐに終わりますし、太陽のような星だと百億年〜宇宙年令〜137億年、生き長らえます。銀河公転年のオーダーで星間物質が掻き混ぜられるとすると、いろんな超新星爆発(重たい星の場合)や、巨星(軽い星)の進化の最終段階で放出する元素が混合すると広く捉えるべきです。そうすると、何代目というのは言えないというべきでしょう。

しかし、太陽には重元素が2%もあるので、我が銀河にも活発な星形成の時期があったはずです。初代や数世代ではないことは確かです。

そして、星の質量関数fMt)問題(=IMF; Initial Mass Function)という、普遍的な問題に遭遇します。それは、光っている銀河を構成する星が、「いつの時期に」「どのような質量スペクトル構成で」できたか?という単純かつ基本的な問題です。かって、(いつの頃か?が不明ですが)重たい星々がたくさんできたことは確かです。現在、重元素が2%も存在するからです。他所の銀河を見ても、今、爆発的に重たい星を誕生しているものがあります。スターバースト銀河と称しています。

この原因として、銀河どうしの衝突が引き金になって星形成を惹き起こしたという考えが有力です。その素過程は衝突の結果、圧力=>密度上昇がジーンズの不安定性を助長したのだという考えです。遠方では、まだ宇宙は小さく(膨張が進んでいないため)衝突の頻度は高かったと考えられます。

さて、我が銀河に戻って、太陽系を作った46億年前のさらに以前に、幾世代の星形成が繰り替えされたのかを知る術があるか? 元素によって世代(すなわちその元素が星という天体に取り込まれた回数)は異なっていてもよい。というのが、素っ気ない答えです。

昔の遠方の銀河を見れば、我が銀河の来し方が分かる というのが 赤方偏移の大きなすなわち昔の銀河を探してみるという研究です。小さな銀河“like”が合体しあって出来たというシナリオのようです。そうすると、我が太陽系の世代を問うのと同じく、我が銀河系は何代目であろうか という問いが自然に出てきます。これが銀河の質量関数fMt)問題ということになるでしょう。私が答えられる立場にはいません。

ちっとも答えにならないと分かっているのですが、どの分野でも単純な質問がもっとも難しい問題です。